もう一度だけ

もう一度 日を見たい
もう一度だけ 夕陽を見てみたい

もう一度だけ 夜明けを見たい
白々と明けていく 朝にとけこんでみたい

もう一度だけ 彼女の顔を見たい
わけもわからない嫉妬に悩まされてみたい

もう一度だけ あの娘を抱きしめたい
彼女に思いを伝えてみたい

もう一度だけ転びたい
笑われてもいい そして起き上がってみたい

もう一度だけ 階段をかけ上がりたい
そして あの娘とばったり会ってみたい

もう一度だけ 窓から外を眺めてみたい
雲がかかったような 遠くの山を見てみたい

もう一度だけ 自転車にのりたい
すべってころんで すりむいてみたい

もう一度だけ 電車にのりたい
窓の外の景色を ぼんやりながめていたい

もう一度だけ 本を読みたい
思いがけなく 感動してみたい

もう一度だけ 歌ってみたい
ギターと声を 重ねてみたい

ああ どんなにどんなに
この世を惜しんでも 悲しんでも
この胸の銃弾をとりのぞくことはできない

笑おうとする顔さえも 苦痛にゆがんで
とつぜんとぎれた学生生活を
思い出すひまもなく消えて…

'83,2,26,(土) 20:45

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