或る夜の出来事

人混みの中 泳ぐように たゆいでいく
誰も僕を知らない 妙に あたたかいね ホント
存在感のある空気の季節がすぎて 取り囲むものが無いと知ったとき
左腕がもてあまされて 笑う

本気なのに 君には誰かが
抱き締めたのに 君には誰か待つ人がいた

  気持ちをぶつけることしかできない なんてムリヤリ
  小さな水晶玉が見ていた 或る夜の出来事


毎日の時間が 遠くにかすんだ時計に見える
昨日と同じ今日 そして今日は明日のためにもう無い
ただ 重ねた唇だけが 今も意味のない日常語を吐き続ける
悪魔払いの呪文かもしれない

僕のために 伸ばした髪を
頬に感じた時 君をつかまえたと思った

  帰らなくてはいけない 君がクヤシイ
  指輪を中指に換えさせた 或る夜の出来事


僕は寂しい だからこうして一人でいるよ
僕は寂しい だからここにこうして一人でいるよ


  明日会えるね きっと会えるね
  どうして泣くの 悲しくないよ
  僕は平気さ 君はたぶん
  僕を哀しんで くれているの

  いつも好きだよ 君が好きだよ
  気が狂いそう 流れ出しそう
  もしもこの世が 崩れ出したら
  僕がホンモノと 気づくだろうに


年上ならば 僕よりもたくさん
辛い想い出抱えているだろうに いいんだよ

  都会の夜だけが 僕らの味方
  誰も関わらない他人 或る夜の出来事


僕は寂しい だからこうして一人でいるよ
僕は寂しい だからここにこうして一人でいるよ

いつまでもいるよ

1994,09,27 23:30

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