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物語の組み立て方の話

なんだか壮大なタイトルにしてしまったが、特に何か学べるようなすごい記事ではない。

先日の文学フリマ東京で、無料の番外編をお配りしました。
拙作、『のっぺらぼうと天宿りの牙卵』の番外編です。

本編はこちら↓

無料の番外編というのは、B5の紙の両面に印刷して、半分に切って、折っただけの4ページしかないものなのですが、本編既読の読者の方にはわりと楽しんでいただけることが多いので、新刊がないイベントを中心に、しょっちゅう新作を書いては持参しています。
そんな番外編が積もり積もって、更に書き足して、先日番外編集も出しました。

……というのは単なる前置きです。
あわよくば宣伝になればいいかなと思いました。

物語の組み立て方の話。

物語を書くときに、私がもっっっっっっとも気を使うこと。
それが、物語の組み立て方。
更に細かく言うと、「情報を開示する順序」。
物語って、作者はある意味すべての背景を知っている(自分で決めている)わけなのだけれど、自分が読者になった際、どういう順序で情報を開示してほしいか、どういう順序で開示されていれば、最も良い読後感を得られるか、という部分に毎回最も悩みます。

長編を書く際は、そこに含まれる情報や伏線の量も多いので、本当にもう禿げそうなくらい悩み抜くわけなのですが、今回書いた短編はその辺りの思考の流れがシンプルだったので、ちょっとメモのつもりでこの記事を書くことにしました。

先ほど引用したのと同じ番外編です。

この話を書く前に、私が書いたプロットは以下のようなものでした。

シーンの主構成:
食レポを求められてがんばる刻雨

流れ:
(本編で受けたダメージから大分回復し、)元気になったからという理由で、荒魂が気になっていた店をハシゴさせられる刻雨

無い語彙をフル活用して頑張って食レポする刻雨

荒魂は大体何を言っても満足そうにしている(=食レポの内容自体にそれほど興味がない?)

刻雨に美味しいものを食べさせたいだけなのでは?

というわけで、元々の予定では、「荒魂に振り回される刻雨(いつものパターン)→実は荒魂の善意100%なのでは?」という、相棒仲良し番外編になるはずだったのです。

でも書き始めたらなんか…
なんかつまんねえな…と……

いやそんな…そんな仲良しなばっかりじゃないじゃん君ら……。まあそれなりに仲は良いけど…、そうじゃないじゃん、なんか……なんかさあ……。

そういうわけで諸々いじり、こういう情報開示順序にしてみました。

シーンの主構成:
いつも通り自由に振る舞う荒魂と、いつも通り自己肯定感の低い刻雨

流れ:
荒魂の無茶振り(≒甘え)&無茶ぶりには流石に慣れた刻雨

無い語彙をフル活用して頑張って食レポする刻雨

刻雨に美味しいものを食べさせたいだけなのでは?

刻雨が満腹だろうと関係ない、食べたいものを食べたい荒魂(=ハシゴさせられそうな雰囲気)

あっ俺のためじゃないんだ…と、ふわっと勘違いする刻雨

この順序のほうがオチもつくし、奴らの性格を活かしやすいな!!
というわけで、こういうストーリーに収まったのでした。
似たような情報の羅列でも、それを出す順序によって受け取る印象も変わるし、読後感も変わるなあ、と改めて思うのです。

ちなみにこの番外編、公開後すぐに、ご感想…というより勘違い刻雨に対する励ましのコメントを複数いただきまして、なんだか嬉しくてによによしてしまいました。ありがとうございます!

その直前に出した番外編集より反応いいな!なんて思ってないよそんなことないそれはそれこれはこれ。
番外編集はみんなこれから読んでくれるの。そう、そのはず。

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