民主主義・世論が司法に勝る(トランプ氏勝利)
アメリカ大統領選は、ドナルド・トランプ氏がスイングステートの7州の過半数を制して、圧勝ともいえる結果となった。選挙前は接戦と言われていただけに、この結果には驚いた。カマラ・ハリス氏は、予備選挙を戦っておらず、選挙戦の経験不足が目立った(有権者を納得させる弁舌能力)。例えば、プロンプターが故障すると、何も話せなくなった。最後は追い詰められて、共和党穏健派(浮動票)を取りに行ったが、本来は岩盤支持層として何としても守り抜かなくてはならないマイノリティ票(女性、黒人、ヒスパニック)の一定割合がトランプ氏に流出した。これは、完全な作戦ミスだ。
マスコミはあまり語らないが、アメリカの庶民生活はかなり苦しい。インフレ率や失業率は落ち着いているものの、衣食住のうちの住宅価格が高騰し、ホームレスが増えている。アメリカは解雇も多いので、多くの国民が不安を抱えていた。もし、中国をこらしめて、工場がアメリカに戻れば、景気が良くなるかもしれないと、有権者は考えたのかもしれない。ただし、巨大製造業がアメリカ現地生産に切り替えるには時間がかかる。2〜3年は経過しないと工場は完成しないし、サプライチェーンの再構築も不可能だ。もちろん、工場の建設じたいがGDPを押し上げるのだが、今はアメリカも人手不足だし、工場建設の進捗は悪いだろう。TSMCも日本の熊本はすんなり完成したのに、アメリカのほうは時間がかかっている。USスチールも、感情的に日鉄を排除するのではなく、むしろ日鉄からの資本で設備投資を増やせると考えるべきだ。
最後に、これだけは言いたい。ドナルド・トランプ氏は、刑事事件で裁判をしていた身だ。ビル・クリントン氏は、あくまでも民事訴訟だ。モニカ・ルインスキーさんとの不倫裁判は犯罪ではない。トランプ氏は、刑事被告人だった。つまり、もはや、アメリカの有権者は、司法などどうでもよく、ニヒリズムに走り、「とにかく今の体制を壊せ」もヤケっぱちになってしまったのだ。司法よりも世論、人気のほうが優先されるということだ。日本においても、へずまりゅう、ガーシーが選挙に出るなどあったが、アメリカほど酷くはないと思う。
※誤記訂正。ビル・クリントン氏は、法廷での偽証について、刑事裁判となり、罰金刑となっていた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?