資格試験の合格率(難易度)変動について

資格試験の合格率(難易度)は、実は一定ではない。社会や政治からの要請、景気変動などによって、大きく変動しているのが事実だ。例えば、高度資格専門職の人手不足傾向が続けば、合格者数を増やす場合がある。逆に、人材余剰や、不況により「手に職」志向が強まれば、資格試験の合格率は下がったり、難易度が上がったりするのだ。このことは、過去の合格率の推移を検証することで裏付けできる。

1. 司法試験の推移分析

1.1 合格率の推移(2000-2024年)

司法試験の合格率推移

1.2 トレンド分析

1.2.1 制度改革前(2000-2005年)

2000年から2005年までの期間、旧司法試験のもとでは超難関の名にふさわしい、驚異の「3%前後」であった。これは、試験の難しさに加えて、浪人した人も受験するため、受験者の母数も多かったためであると思われる。

1.2.2 新制度移行期(2006-2010年)

2006年に新司法試験制度が導入され、法科大学院修了者が受験資格を得ることになった。合格率は変動が大きいものの、30%以上の年度も見られるようになった。ちょうど、私は2002年に慶應に入学しているため、私の同級生も高い合格率の時に受験しており、「ラッキー世代」といえるだろう。

1.2.3 安定期(2011-2016年)

2011年から2016年にかけて、司法試験の合格率は20.7%から28.1%の範囲で推移している。

2. 公認会計士試験の推移分析

2.1 合格率の推移(2000-2024年)

公認会計士試験の合格率推移

2.2 トレンド分析

2.2.1 旧試験制度期(2000-2005年)

2000年から2005年までの公認会計士試験では、合格率は6.2%から7.1%の間で安定して推移していた。

2.2.2 新制度導入期(2006-2010年)

2006年に新試験制度が導入され、合格率は14.8%に急上昇した。私がもしストレート(留年なし)で卒業していたら、2006年であった。そのため、公認会計士試験のほうも、私の同級生は大量合格していた。
※なお、民間企業の就職も、就職氷河期が一時的に終わり、リーマンショックがくる直前であったため、私の学年は資格試験も民間企業就職も非常に恵まれていたといえる。

2.2.3 調整期(2011-2019年)

2011年から2019年にかけて、公認会計士試験の合格率は9.8%から11.6%の範囲で安定した。

・・・ちなみに、司法試験のほうは、「司法試験予備試験」経由の受験者のほうが合格率は高い。年度によっては50%近くになる。ただし、その予備試験の難易度が高いため、予備試験経由のほうが良いのかどうかは定かではない。まあ、法科大学院は多額の費用がかかる上に、試験対策以外のことも学ぶため、予備試験のほうがやはり良いと思われる。予備試験は年齢や学位とも関係ない。高校生でも受験できる。慶應義塾高校や筑波大付属駒場高校の生徒が予備試験経由で司法試験に合格している。

・・・なお、試験の範囲などが変更になると、浪人が減る現象が起きやすい。例えば、公認会計士試験はIFRSやUSGAAPとのコンバージェンスが2000年以降に進められたため、日本の会計制度は大きく変わってきた。新しい論点を学ぶのは、浪人にとっては酷である。これと似たようなことは、大学受験でもみられる。大学入試センター試験での英語リスニング導入、共通テストで数学Cが復活(とはいっても、昔の行列などは含まれないが)や、「情報」科目の新設など、浪人は嫌がるのは間違いない。ここのところ、浪人が嫌がるような施策ばかりなので、浪人は減少する一方だろう。
※最後のセクションは、資格試験とは違う大学受験の話題も入っており、少し脱線している。


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