リーマンショック直後、世界中の中央銀行は猛烈な金融緩和を実施した。金融緩和は、主に「金利を低下させる」ものと「貨幣流通量を増やすもの」とがある。どちらも、リーマンショック直後には、潰れそうな金融機関や、キャッシュがショートしそうな事業会社が資金調達する上でのアシストとなり、有効な手段であった。

ところが、金融緩和が長く続くと、副作用も発生する。皮肉なことだが、金融緩和をしないと経済危機を乗り越えられないが、金融緩和をやり過ぎると、今度は次のバブルを生んだり、ボラティリティやショックを巨大化させる効果があるのだ。

不動産・株式の高騰

基本的には、労働者が真面目に働いて、真面目に所得を得るのが健全な経済だと考える。しかし、金融緩和が長期継続すると、不動産価格や株価が高騰するようになる。すると、投機筋だけでなく労働者までもがマネーゲームに参加し始める。無理もないだろう。誰だって、裕福になりたいのだ。ところが、永遠に金融緩和を続けることはできない。どこかで、金融緩和を手じまいし、金利を引き上げる局面が出てくる。その時に、バブルが崩壊する危険性があるのだ。うまく売り逃げできないと、損失が膨らむ可能性がある。日本のバブル崩壊局面では、借金してまで不動産や株式を購入する人がいた。かなり痛い目にあったと思われる。バブル崩壊前にも、副作用はある。今、東京やニューヨーク、ソウル、ロンドンなどで、不動産価格が高騰し、劣悪な住居にしか住めない人が出てきている。韓国のソウルでは、「半地下」住居があることが、映画で話題になった。日本は賃貸住居者が保護されているが、海外では不動産価格高騰に合わせて家賃をすぐに引き上げても良い国もある。そうした国では、最悪、ホームレスになる人も出てくるのだ。

ボラティリティの拡大

金融緩和で貨幣供給量が増加すると、ボラティリティも拡大する。どういうことかというと、何らかのショックがあったときに、マネーが激しく動き、相場の変動幅が大きくなるということだ。マネーが多ければ多いほど、何かショックがあったときに多額のお金が動いて市場に悪影響を与えてしまう。例えば、FRBや日銀の高官が少し何か発言しただけで、株価や現物の価格に変動が発生する。特に現物の場合は、トウモロコシや小麦の価格変動により、庶民の生活にも悪影響が出てしまう。

アメリカの金融緩和に他国が影響を受けてしまう

アメリカは、世界最大のGDPを誇る。そのため、アメリカが金融緩和をすると、他国は通貨高にふれる可能性がある。対抗して金融緩和をしないと、独歩高になってしまう。それがエスカレートすると、各国で不必要なまでに貨幣供給量が増加するリスクがある。それが、より一層ショックを増大させてしまうのだ。逆に、アメリカが金融引き締めをすると、今度は他国は通貨安にふれる可能性がある。日本のような経済大国は自国通貨建ての債務が多いので問題ないが、ドル建て債務の多い国だと、通貨安はデフォルト(財政破綻)リスクを高める。むしろ、アメリカが金融引き締めする局面のほうが、途上国にとっては厳しいといえるだろう。資金流出に注意しないと、本当に経済破綻しかねないのだ。

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トーマス・レッド(高学歴発達障害・転職王・アマチュア経済アナリスト・ITコンサルタント)
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