日本の貿易収支の赤字(特にデジタル)!デジタル収支黒字国に学ぶ日本のこれから!
以下の日本銀行作成のレポートを読んでいただきたい。
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2023/data/rev23j09.pdf
日本銀行「国際収支統計からみたサービス取引のグローバル化」
以前から言われていることだが、日本はここ数年、財(モノ)の貿易でも、サービスの貿易でも、大赤字の状態である。つまり、せっせと働いても、外国にお金を垂れ流している状況である。この状態で、石破茂総理が米国のトランプ大統領に「対米投資残高を150兆円まで増やします(現状から30兆円の積み増し)」を宣言したことは、怒りしかない。日本国内に設備投資しないと、ますます日本の国際競争力は落ちていくばかりだ。
細かい数字は割愛するが、財とデジタルの貿易収支の赤字を、多少、観光収支で埋め合わせしているのが現状だ。ただし、観光産業はホテル・旅館・飲食店など、非常に「労働集約型」の産業だ。今の日本は人手不足なのだから、リソースの観点からこれはあまり相性が良くない。しかも、通常は「観光で稼ぐ」というのは、タイやトルコなどの新興国か、ギリシャやスペインのような「停滞ぎみの」先進国のパターンだ。日本も、ギリシャ・スペインのようになったかと思うと情けない。
なぜ、製造業が強いはずの日本が、財の貿易収支で赤字なのかを説明したい。
現地生産の増加
自動車などに顕著だが、1980年代と比較すると現地生産が増えている。日米貿易摩擦で、日本の自動車メーカーは大挙してアメリカに工場をつくった。また、もう一つの巨大市場である中国も、基本的には「中国現地メーカーとの合弁」が自動車では義務付けられたので、東風日産など、現地メーカーと共同で中国に工場をつくった。
中韓台に敗北した
家電や半導体などで、中国・韓国・台湾などに敗北した。ただし、化学・製薬・電子部品・半導体製造装置はまだ何とか競争力を維持している。
資源・エネルギーを外国に依存している
日本はほとんどの資源・エネルギーを外国に依存している。円安でそれらの輸入価格が高騰している。
上記から、円安であれば輸出数量が増える状況にはなく、財の輸出で稼ぐのが難しくなりつつあるのが日本の現状だ。人手不足も深刻で、工場の建設も困難、工場が完成しても人が集まらない、という地獄だ。
そこで、これからの日本は、「コンテンツ」「サービス」の輸出を増やしていく必要があるだろう。なお、経常収支は黒字だが、これは海外企業の持ち分からの配当金などで、日本国内の雇用とは関係性が薄いのは以前にも述べたとおりだ。
日本のデジタル貿易収支の現状
あとで定量的なデータを出すが、日本のデジタル収支は大幅な赤字である。GAFAMやSAP、Oracleなどへのクラウドサービスの支払いが巨額だからだ。IP(特許権)の収入やアニメなどの著作権料収入だけでは補いきれない。「GAFAMなんて、アメリカだけだ。アメリカ以外の国もどうせデジタル赤字だろう」と思うかもしれない。だが、残酷な事実を教えよう。韓国やフィンランドなどは、サービス収支は黒字だ。
日本・韓国・フィンランド・エストニアのサービス収支比較
以下の表をみていただきたい。AIを活用して作成した表である。
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サービス収支は、日本は大赤字で、他の三か国は黒字である。特に、経済規模を考えると、フィンランドとエストニアの黒字額は巨額であると言わざるを得ないだろう。フィンランドのGDPは3000億ドル弱、エストニアのGDPは約300億ドルだ。
各国の競争力
日本
局所的には、日立製作所がルマーダで、鉄道システムや電力システムで強かったりするが、マクロでは全く競争力が無いといえるだろう。NTTやNECも頑張ってはいるものの、欧米のGAFAMやアクセンチュア、IBMとの戦いに勝てるものではない。
韓国
韓国のデジタルプラットフォームは Weverse(K-POP)、Tving(ドラマ)、Kakao Webtoon(マンガ)などが意外と頑張っている。日本も集英社がデジタルで漫画を読めるサービスを提供しているが、まだまだ発展段階だろう。ただし、日本をディスるばかりではなんなので、韓国の課題に言及すると「格差が酷い」これにつきる。格差があるので国民が一様に豊かなわけではないので、「海外に売る」ことに集中するしかないのかもしれない。人口も日本の半分以下だ。
フィンランド
もとももと、ノキアなど通信・情報産業は強かった。その勢いは今も衰えていないようだ。
エストニア
エストニアは、政府規模が小さいからできたともいえるが、電子政府立国である。そのため、政府が非常に効率的である。まあ、日本ディスりばかりではかわいそうなので擁護すると、日本は明治時代から近代政府の歴史があり、規模も巨大であるため、レガシーから移行するのが難しい。また、非効率は「需要」を生む側面もある。ただし、今はインフレ局面なので、効率性重視に舵を切ったほうが良いのは間違いないだろう。なお、エストニアは外国資本によるITサービスが多く、輸出も「アウトソーシング」が多い。北欧・東欧諸国では人件費が低いからだろう。
これからの日本の戦略
以上をふまえて、これからの日本の戦略を書く。
資源・エネルギーの自国調達を増やす⇒財の貿易収支改善
資源は都市鉱山などリサイクルを徹底する。これから日本は人口が減少するため、過去の資源を上手く使えば、輸入量を減らせる可能性はあるだろう。エネルギーについては、EVやFCV(燃料電池車)を増やし、石油依存を減らす。また、ペロブスカイト太陽電池などで電力の地産地消を進める。送電線が長いほど、電力損耗は大きくなるからだ。
コンテンツ・デジタル輸出戦略
コンテンツもデジタルも、通貨高に強いことがわかっている。これは、熱狂的なドラマ・アニメのファンは、多少高くても消費するからだ。デジタルも、SAPやAWS、Microsoftが無いとビジネスは不可能になりつつあるので、多少高くても買う。そのため、通貨高でも安定して輸出できるのが強みだ。ただ、今からSAPやAWS、Microsoftに対抗するのは現実的ではない。日本の場合は、製造業が強かったので、「工場をまるごと改革する」「サプライチェーンの分析(ブルーヨンダーなど)」などのサービスを輸出することが考えられるだろう。SMCの空気圧アクチュエーターや、ダイフクのマテハンなど、工場や物流センターでの自動化機器も日本は強い(SMC、ダイフクともに世界シェアトップ)。これらをデジタルソリューションとパッケージで販売するのも有効な手だと考える。
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