経常収支は巨額黒字なのに、庶民は生活苦?貿易赤字?

今の日本は、巨額の経常収支黒字を稼いでいる。しかし、「経常収支」の定義を理解せずに、なんとなく「日本は儲かっているんだ」と思うのは早計だ。経常収支は、以下に分類される。

貿易収支
所得収支
サービス収支

貿易収支とは、輸出企業による輸出から、輸入を引き算して求められる。所得収支とは、海外への証券投資や直接投資、そしてそれらで稼いだ外貨を海外へ再投資して得られた所得を指す。サービス収支は、観光やITサービスなどの収支だ。

日本の現在の経常収支は、所得収支だけが黒字で、その他は全て赤字である。テレビ東京の経済番組がグラフを紹介してくれたので拝借する。

日本の経常収支(テレビ東京 NIKKEI NEWS NEXT)

これによると、日本は一貫して所得収支の黒字(ピンク)が経常収支黒字の大半を占めていることがわかる。2022年と2023年は貿易赤字になった。これは、資源やエネルギーの輸入額が大きいと思われる。また、海外はインフレなのに、日本国内はそれほど物価が高くないので、輸入品の価格上昇(輸入インフレ)もあるだろう。

つまり、海外へ証券投資したり、海外ビジネスで儲かる企業は豊かになったが、そうしたこととは無縁な庶民は、輸入物価上昇で生活は苦しいと思われる。

さらに、番組では、キャッシュが国内に還流しているかどうかの分析データも紹介してくれた。

みずほ銀行唐鎌氏の分析

みずほ銀行の唐鎌氏によると、キャッシュフローの動きでは、2011〜2014年、2022〜2023年は、統計データでは黒字でも、実質的には円から外貨へと移す動きのほうが多かったのではないか、とのことだ。黒字として所得を得ても、ドルなど外貨のまま持ち続けて、円にはせず、国内の設備投資や賃上げなどにも使われていないということだ(あくまで、これはマクロでみた話だ。個別では国内に使われたお金もあるだろう)。

つまり、ものすごく大雑把にいえば、日本のグローバル大企業は日本で稼ごうと思わないし、海外で稼いで、稼いだお金は海外に再投資している、ということだ。これで、日本国民が豊かになれないのは当然だ。

処方箋としては、以下を提案したい。
・設備投資減税(日本国内へ設備投資した企業への法人税減税)
・賃上げ減税(日本国内の従業員の賃金を大幅に上げた企業への法人税減税)
・最低賃金の大幅な引き上げ(8%以上)
・TSMCなど外資系企業の誘致をさらに強化
・消費税減税(輸入物価上昇に対応)
・原発再稼働(エネルギー輸入による貿易赤字に対応)

一部、不人気な政策も含まれるが、このくらいやらないと、グローバル大企業は日本国内へ資金を還流しないだろう。原発を再稼働するなり何なりして電気代が下がれば、工場も国内へ立地しやすくなるだろう。

賃上げすると、コスト競争力が無くなる?その考え方だから、内需が成長しないのだ。それに、海外のインフレにも対抗できない。賃金が上がらないと、海外のインフレに対抗できず、実質賃金が下がり、ますます「日本では儲からないから、海外で稼ごう」となるだけだろう。

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