「男性日本人マツダ」 Der Mazda (デア マツダ)
男性日本人とは、ドイツ語でder Japaner (デア ヤパーナー)という。それでは、ここに出てくる「デア」とは何か。品詞で言うと定冠詞で、英語のtheに当たるが、ドイツ語にはこの定冠詞には三種類あり、名詞の性により、男性名詞にはder、女性名詞にはdie (ディー)、中性名詞にはdasが付く。なので、ドイツ語の名詞を覚える時には、必ず定冠詞といっしょに口と耳で覚えることをお勧めする。「木」はBaumとだけで覚えてはいけない。der Baumと耳に入れ、口から出した方がいい。ドイツ人でさえも、あまりはっきりしない「性別」の単語は、口で出して言ってみて、耳ざわりや「口触り」がいいかで、「ああ、そう言えばこう言った。」と判断する。では、Mazdaはなぜ男性名詞なのか。
それは、これが車だからである。「自動車」という言葉に当たるのが、das Autoであるが、「車」ということでは、昔の馬車から来ているのだろう、der Wagen(ヴァーゲン、あの「フォルクスヴァーゲン」の「ヴァーゲン」)である。ゆえに、車は男性名詞なのである。という訳で、der BMW (ベー・エム・ヴェーという)となる訳であるが、ところが、die BMWもある。女性名詞になると、それは、船名から来ているのか、なんと、オートバイなのである。
さて、少々考えてみると、三菱は、カタカナ書きで「Mitsubishi」で、マツダがどうして「Matsuda」にならないか。Wikipediaによると、それは、社運の発展を願い、「松田」の名前にゾロアスター教の最高神アフラ・マズダー(Ahura Mazdā)と掛けたからだと言う。この綴り方により、ドイツでは「Mazda」はしっくりと「マツダ」と発音できる。なぜなら、z音はドイツ語では「ツ」で発音するからである。しかもここにはある発音上の現象が発生する。
Matsudaを早めに発音すると、実は、う音を日本人はしっかりと発音していない。ドイツ人に「です」を聞き取りでローマ字書きさせると、ほぼ「des」となる。我々は、う音を飲み込んでいるのである。この現象を「母音消失」といい、う音によく起きる。この意味で、Mazdaにおいて、日本語の本来の音節構造から外して、uを除いて表記することは、逆に正解と言えるのである。
という訳で、皆さんは、die Suzukiとは何を意味するかは今はお分りだろう。ところが、ドイツ人がこれを発音すると、s音はドイツ語では有声音、つまり濁音になる。日本語でのローマ字表記では、ドイツ語のs音とz音は逆の関係になるのである。だから、「Suzuki」は、「ズツキ」となる。これでは「頭突き」と聞こえてしまうので、筆者は 密かに苦笑するばかりなのであるが...
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