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interview❷ : Grind Ape ───ずっと音楽と共に居たいと思っていた
インタビュー企画第二弾アーティストは、筆者の友人でもあるビートメイカー、Grind Ape。
音楽への深い造詣、ハイレベルのベースプレイ、LAビートシーンから影響を受けた特徴的ビート。音楽だけではなく、精神疾患を抱え、苦悩してきた人生も語ってもらった。
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以下、インタビュー。
あなたの名前、年齢、活動拠点など、簡単な自己紹介をお願いします。
名前はGrind Ape。本名はMasahiro Matsushita。
37歳で西東京で活動しています。
普段よく聴くアーティストや、特に好きなアーティスト、何か音楽に関わるエピソードがあれば教えてください。
普段聴くアーティストは固定してないすね。
サンダーキャット、カマシワシントン、フライングロータス、ケンドリックラマーとかかな?
UKだとブリアル、code9。
Kota: Code9ってハイパーダブの主催のあの?
Ape: そうそう。ブリアルもそのアーティストすね。
あとはLittle Simz。ATCQ。これは外せないんだけどBig Yuki!ジェシーランザとかも。
あえてコアな音楽より、メインストリームからちょいしたのアンダーグラウンドまではいかないものを好む傾向にありますね。
サムさん(Kota)も好きなブレインフィーダーの「ブレインフィーダー4」ってイベントが特に印象に残ってますね。
それまでロック畑の人間だったからこれがクラブデビューでボディチェックされたりして怖い印象だったですね笑
でも普段聴くアーティストたちを間近に観れて天国のようでした。
ジャズアプローチのアーティストが多くて良かったですね。
サンダーキャット、テイラーマクファーリン。マーカスギルモアとか。
途中でテイラーがフェラクティのボーカルを流し始めて面白かった。色んな音楽を経験をしてたおかげで楽しめましたね。
あと印象に残ってるのがオープニングアクトがシミラボだったことですね。
Kota: 懐かしいすねシミラボ。
Ape: 懐かしいすね笑
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ベースをやってますよね?バンドってどんなかんじだったんですか?
元々は弾き語りでギターやってました。20前半の頃ですね。
25歳になるまでバンドメンバーが見つからずで......。
周りのからの評価はあまりよくなかったです。
バンドに、綺麗な女の子で誘いたかった子がいて、
沖縄から東京に越してくるということだったのでバンドに誘ったりしましたね笑 (彼女はマイクロコルグ2台でシンベと上ネタ弾いてました)
とにかく彼女が輝いていて、活動が幸せでしたね笑笑
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ドラムが、エイフェックスツインとかスクエアプッシャーとかのドラマーになりたいとかってパンクスあがりのケビン。サポートは女の子目当ての男性。笑笑
でもライブ2回やって解散しましたね。6ヶ月で仕上げてライブしました。バンド名はSupermeme。
解散後はメンボってサイトでインターネットでメンバーを募集してました。
その後ベースに転向しましたね。
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つまり、初めからベースをやっていたわけではないと?
そう。
そのバンド組む前にビートテープみたいなものを制作していましたけど、それはベースだったから、そこからベースを本格的にプレイするようになった感じです。
Captain sic mindeという名義で活動していました。
CSMって呼ばれてましたね。
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Kota: この紹介文、凄い文才ですね。誰が書いたんですか?
Ape:これはジャズザニューチャプターに寄稿してるひとですね。
Kota: 失礼しました笑笑
Ape:そのあと、ネットでメンバー募集をかけたら、ロック系ギタリストを発見しました。
ドラマー探しが大変で。ジャズポータルというサイト(ジャズ系のサイト)からハヤシさんが応募してきました。
彼は早稲田出身で有名な人たちとプレイしたりしててクソうまかったですね。それでバンドのクオリティーを上げざるを得ない状況になりました。
でもハヤシさんの問題等ありつつで。彼が抜けてからまたバンドを再活動させることにしました。
サックスのゴトウさんが加入してくれました。彼のお父さんがアメリカでサックスをプレイしてたひとで、ハービーハンコックのブッキングしてたらしいです。
セッションしてたりしたんですけど、彼に子供が生まれたりで家庭の事情で、解散しちゃいました。音楽はVulfpeckのコピーやってたりしてました。
Kota: Vulfのコピーってめっちゃ楽しそうですね笑
Ape: とりあえず、自分の音楽のポートフォリオがないのが心配になったんですよね。
それでGrind Apeという名義を作りました。フルアルバムを作ろうと思って。
当時の世間体だと一曲の尺が4-5分。これで12曲作ろうと思って、半年間家に篭って、フルアルバムを完成させました。
これがいまの名義のファーストでbloomという作品を作りました。
Bloomって花が開くみたいなワードだと思いますけど、どういう意味合いなんですか?
このとき人間関係からのトラブルから(いじめの問題などから)全作業を自分でやる必要があったんです。
アートワークも自分で作ろうと思って、ジャケは彼岸花を描きました。花言葉は「死」とかそういうことだったかな?そういった意味合いを意識して彼岸花にしました。
ブレインフィーダーにこのアルバムを送りたいくらいの勢いで作りましたね。
ネイパームのブート音源や、KnowerのボーカルのInstagramの投稿された音源をサンプリングしたり、センメリ(戦場のメリークリスマス)のボイスサンプリングしたり。他にもマッシヴアタックや、映画サスペリアのゴブリンの音源をサンプリングしたり。あとはスティーブ・ジョブズがiPhoneの発表を行うスピーチを行う音声を載せたりとか、とにかく攻撃的なアプローチをしてみました。
とりあえずコンセプトアルバムとして、ひとつひとつに意味を持たせたくて頑張りました。
アルバムができたあとに自分で聴いて泣きましたね。
自分は今後も多分売れないし、自分をサルベージするために作ったような。
自分をBloomさせたかったということ?
そうですね。
スティーリーダンのディーコンブルースの歌詞みたい笑 ドナルドフェイゲンは三番の歌詞で自分の曲を聴いて泣いたって言ってたな。
AJAの曲っすか?
Kota:そうです。その後の活動は?
次にリリースしたのがSushi Ninja Hentaiです。
サンクラで活動してたんですけど、アナリクスを見ると日本以外のアーティストからのアクセスが圧倒的に多くて。そこでウケのいいタイトルとしてコレにしました。
その後、日本人からメッセージが来ました。
FBのサンクラ研究会というグループから一目置かれたみたいで、サンクラの運営について再度再生回数などの増やし方を学びましたね。結局そこは空中分解しましたけど。笑
ボーカルが欲しくなって。メンボから地下アイドルのフジワラ(仮名)から連絡がきました。コンポーザーになって欲しいという要求や、曲の構成についてなど様々言われたんですが、結局自分のやりたいことではなかったので飛んじゃいました。
その頃にサブスク出したり、ヒップホップやってる友達にトラック提供したりしてました。
唐突なんですけど、35歳あたりからトラックメイクがしんどくなってきたんですよね。自殺未遂したりとか。
休むことがわからなかったんですよね。徳島の友達が子供産まれるってことでその子の為に曲を作ったりしました。
タイトルはEnter。現実世界にEnterした、というような意味合いを持たせました。
この曲を聴くと、親友の家族を窓の外から寂しそうに覗いてる自分がいるというイメージを持つんです。
Kota: なるほど。ちょっとその気持ちわかるかも。
Ape: 友人の結婚式用に曲を作ったこともありますね。何でもやれることやってました。
そうしたら、気づいたら機材だらけの部屋になってましたよ笑
妹になんじゃこれって突っ込まれたくらい笑笑
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作曲事務所に所属しようとして事務所に所属している人に話を聞いたりしました。AKBグループに楽曲実績のある作曲家の方に相談しましたが作曲事務所にはJ-pop、アニソン、K-popの需要しかなくて。音楽でお金を稼ぐ為に事務所に登録しようとしたんですけど、やりたいこととかけ離れていたため断念しました。
UKやUSテイストの洋楽を作る日本人アーティストの大きい需要は日本ではないと察しましたね。
そもそも人間の音楽感覚はその人の話す母語に影響されると日々考えていて、日本語はもともと一音一音の響きを大切にするような、和太鼓が連想しやすいかも知れないですね。
対して英語や他の多くの言語は言語の発話に際してリズム、音価、音程のうねりなどが見受けられる───そんなことを考えていました。
35歳くらいの頃になにかあったんですか?
20代、30前半は気力でなんとかなってたんです。
どんだけ身体が厳しくても、できた。
そこから厳しくなっちゃって。
適当にトラック作れないから、すぐ納得いかないものは没にしちゃうし。
ある時に徳島旅行に行ったんですけど体力が限界で。
その後も、ずーっと疲れが取れなくて、頭おかしくなってきちゃって。曲のクオリティとかに満足いかなくなっちゃって、自分のアイデンティティとかそういう話になっちゃったんです。
首吊って、自殺しようとしたんだけど、色々あって未遂に終わりましたね。
昔から希死念慮とかあったんですか?
度々あった。その都度頑張って我慢してたんだけど。
俺も鬱病で首吊って自殺未遂したことがあります。苦しいよね。それだけ音楽に対して何かあったんですか?
やっぱり、音楽を作ることによって自分を癒してる部分もあったし、自分を過信してる部分もあった。それができなくなっちゃった自分が怖くなっちゃったんです。
Kota: わかります。
Ape: 気力と体力が衰えて音楽ができなくなってる自分が嫌だった。ずっと音楽と共にいたいと思っていた。
日本のドキュメンタリー番組にあなたの家族が特集された回がありますよね。あなたにデータを貰って拝見しました。そのことについて何かあれば。
(ドキュメンタリーの内容:父親が癌にかかり、亡くなるまでのドキュメンタリー。Grind Apeの持っていた精神疾患もフィーチャーされていた。)
公開当初はYouTubeに無断アップロードされて、大変だったんです。冷やかすひとや、励ましてくれる人、色んな人がいたんですけど、ネットの反応に特に傷つきました。
とにかく、2ちゃんねるやその他掲示板に憤りを覚えました。音楽やめろとか、他にも酷いことをたくさん言われて、心無い言葉に傷ついちゃって。
家族がそれを理解してくれないのも辛かったです。親なんかはネットを知らないし。とにかく大変だった。
病気についてはどんなかんじですか。現状とか。
統合失調症と診断されましたね。減薬中で頑張ってます。
仕事とかはどうしてるんですか?
色々試行錯誤しながら頑張ってたんですけど、体力面の問題や勤めてた会社が潰れたり、色々ありました。鳴かず飛ばずな状況で困ってますね。B型就労支援にも通ったり、色々頑張ってみましたが難しい状況にあります。
外見だとわからない病気なので、オーバーワークを任されてしまったりすることがあって、大変ですね。
これからの目標は?
消失してますね。目標を持つと逆に良くないことが多くて。
音楽に対しては?
辛くなって離れていたんですけど、最近またモチベーションが戻ってきました。サブスクでアルバムを出そうかなと思っています。
音楽がなかったらどういう人生でしたか?
自分の言語化できない気持ちをアウトプットすることができなかったと思う。
唯一コミュニケーションがうまく行ったものが音楽かなと。
俺もそうですけど、音楽に救われたと。
逆に出会ってしまった───そんな感覚です。
音楽自体数値化できないもので、どこまでいっても、作曲家として音楽に向き合っちゃって厄介ですよ笑
音楽への出会いってどういうエピソードだったか覚えてます?
原体験は幼い頃に父親がクイーンやイエスが好きで、車の中でよくかけてたのがそうかな。
ボヘミアンをよく聴いてた笑
Kota: あるあるですね。僕の親は洋楽とか聴いてなかったんですけど、何故かジャミロクワイの3rdを持ってたので子供の頃に盗みましたね笑
今作りたい音楽ってありますか?
特にないです。アイデアが湧いたら作る。そんな感じです。例えばテクノを作りたくて曲を作るとかあるじゃないですか?そういうのがなくて。型にハマるという感じではないかもしれません。
でもLAビートの影響はすごく感じます。例えばラパラックスとか。
シーンが落ち着いたあとに、聴き返してみたんです。アンビエントと激しさの両立、アンディストットとかもその部類にできると思うんですけど、
若い頃はフライローのコズモグランマとか攻撃的な音楽を好んでたんです。歳を重ねると、アンビエントの中に攻撃性を持つアンディストットみたいなアーティストに目覚めてきました。静かさのなかにある過激さ。アンディやラパラックスは建前的にはアンビエントだけど、手にはナイフを隠し持ってる、そんな印象でとても面白い。
Kota: アンディストットは最高っすね。
Ape: あと、映画音楽にも影響を受けてて、ハンスジマーとか、ルドウィグゴーランソンとか。ローエンドの鳴りに影響を受けました。
最後の質問にしますか。これを読んでくれた人に何か伝えたいことはありますか?
なんだろう......
思いつかないですね笑
とりあえず読んでくれてありがとうですね笑
今は生きるのに必死だから。
自分のペースで曲をアップロードしていくから、興味があったら聴いて欲しい!
Kota: ありがとうございました。
Ape: インタビューありがとうございました。
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