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■番外編■PENTAX FA Limitedレンズの話《後編》

 現在、ペンタックスのFA Limitedレンズは、旧型からモデルチェンジされた4本がラインナップされ販売中である

 HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited
 HD PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited
 HD PENTAX-FA 31mmF1.8 AL
 HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WR

 しかし《前編》から話を続けているのは上記の4本の新型HD FA Limitedレンズについてではなく、すでに販売終了している以下の「旧型のsmc FA Limited3本」に限定した話である。

smc PENTAX-FA43mmF1.9 Limited

(写真・1)

レンズ構成:6 群7 枚、最短撮影距難:0.45m、フィルター径:49mm、最大径X長さ:約64mmX約27mm、重さ:約155g、絞り羽根:8枚、発売:1997年10月、84,000円(2019年価格)

smc PENTAX-FA77mmF1.8 Limited

(写真・2)

レンズ構成:6 群7 枚、最短撮影距離:0.7m、フィルター径:49mm、最大径X長さ:約64mX約48mm、重さ:約270g、絞り羽根:9枚、発売:1999年1月、117,000円(2019年価格)

smc PENTAX-FA31mmF1.8 AL Limited

(写真・3)

レンズ構成:7 群9 枚、最短撮影距難:0.3m、フィルター径:58mm、最大径X長さ:約65mX約68.5mm、重さ:約345g、絞り羽根:9枚、発売:2001年6月、153,000円(2019年価格)

 《前編》では、なぜ新型ではなく旧型のFA Limitedを取り上げるのか、なぜHD21mmF2.4を除外したのか、その理由をくどくどと述べた。なので、もうこれ以上新型のFA LimitedレンズやHD21mmF2.4レンズについて述べることはせず、今回の《後編》では、旧型のsmc FA Limitedレンズの3本についてもう少し突っこんだ話を続けていきたい。

FA Limitedレンズの開発と設計の思想、あれこれ

 3本のFA Limitedレンズは、私たちに馴染みのある焦点距離の数値ではない。つまり、50mmではなく「43mm」、85mmではなく「77mm」、28mmでも35mmでもなく「31mm」といった、異端的な焦点距離のレンズばかりなのである。
 そうなった理由は、リコーと一緒になる前のペンタックス時代の、〝いかにもペンタックスらしい〟レンズ設計手法で開発を始めたことによる。

 通常、レンズの企画や設計は、まずユーザーターゲットに適したスペックと、おおよその販売価格を決めることから始まる。おもな購買ユーザー、焦点距離、開放F値、機能、外観デザイン、大きさや重さ、そして価格などをあらかじめ決めてから、それに沿ってレンズ光学設計をスタートする。ところがペンタックスのFA Limitedレンズは、大まかな企画(テーマ)を決めるだけで、細かな仕様はレンズ開発を進めていく中でおいおい決めればいい、という〝大胆かつ変則的〟なカタチで進行したという。

 その頃、ペンタックスのフィルム一眼レフはMZ-3のような「小型軽量一眼レフ」が主流になっていて、そうしたカメラにベストフィットするようなコンパクトでかつ高品位な標準レンズを作ろう、というのがFA Limitedレンズのそもそもの始まりだったようだ。
 焦点距離や開放F値は始めから細かく決めなくてよい。コスト(販売価格)もあまり気にせずによい。ただし、解像力などの結像性能を最優先するのではなくペンタックスらしい独自性のある描写のレンズに仕上げること。当初の開発テーマから外れなければあとはレンズ設計者の裁量に任せる。つまり自由に思う存分やっていい、と。初代のFA Limitedレンズはそうした「好条件」のもとで〝独自描写最優先〟のレンズ、smc43mmF1.9の設計が始まった。

(写真・4)

smc FA Limitedの設計と開発は既存のスペックにとらわれない独自のスタイルで進められた


 そうした、ひと味違った自由な企画のもとで設計されたためだろう、レンズ設計を進めていく中で結果的に焦点距離が43mmとか開放F値がF1.9という他に類を見ないスペックのレンズになったというわけだ。その後に続く77mmF1.8も31mmF1.8も、似たような過程を経てできあがったレンズだ。

 さらに〝高品質なレンズ〟というテーマもあり、手の込んだレンズデザインを採用、アルミ材削り出しのボディ鏡筒やレンズキャップなどを採用することにした・・・。ところが「そんな高価なレンズが売れるわけないじゃないか」と、おもに販売部門からクレームがでたりして、すったもんだしたのち、ようやく約7万5千円という当時としては高価格の小型標準レンズを発売されることになった。ざっと27年前、1997年10月のことだった。

 「smc PENTAX FA 43mmF1.9 Limited」の発売が始まると、当初の心配に反して評判も良く予想外の売れゆきとなった。そこで ━━ ここが旧ペンタックスらしいところなのだが ━━ 「こりゃあイイじゃないか、シリーズ化しよう」ということになり、43mmF1.9の発売から2年後の、1999年11月に「smc PENTAX FA 77mmF1.8 Limited」、さらに2年後の2001年5月に「smc PENTAX FA 31mmF1.8 AL Limited」が発売され、少し欲張ってシルバーモデルとブラックモデルの2スタイルのFA Limitedシリーズとなった。

FA Limitedレンズのこだわり、あれこれ

 3本のFA Limitedレンズには外観デザインや操作部に、あれやこれやの〝こだわり〟が盛り込まれた。
 レンズ鏡枠もレンズキャップも、すべてアルミ材の削り出し加工仕上げにして、いままでにない高級感のあるデザインに仕上げている。絞り数値や距離目盛り、被写界深度目盛りなどは、ひとつひとつ彫り込み加工し丁寧に色差ししている。手にしてみればわかるが、独特の手触りの良い高い質感がある。
 そして〝こだわり〟の真骨頂というべきものがレンズマウント近くにあるフィンガーポイントである。緑色の小さな半球。

(写真・5)

無垢のシルバー素材の上に七宝焼きで仕上げられた緑のフィンガーポイント、smc FA Limitedシリーズ第一号のsmc 43mmF1.9レンズだけにはフィンガーポイントはなかった


 このフィンガーポイントが、いったいナンのためにあるのか。その第一の目的は、カメラボディにレンズを取り付けるときに、ちょうどボディ側のレンズ着脱ボタンの位置と合致。それによってマウント部の赤点を見てレンズ装着しなくても、暗闇でもフィンガーポイントとレンズ着脱ボタンを指先で確かめるだけでカメラボディに容易にレンズセットできるというものだ。

 ところが好事魔多し、というか、ペンタックスらしい、というか、フィンガーポイントの存在意味そのものが完全無視されてしまった。というのもフィルムカメラからデジタルカメラになるときに、カメラ側の着脱ボタンの「位置」が変更になり、着脱ボタンとフィンガーポイントの位置が完全にずれてしまいナンの役にも立たなくなった。ただの「飾りボタン」となってしまった。

(写真・6)

左がフィルムカメラのZ-1で、ボディ側のレンズ着脱ボタンとフィンガーポイントの位置が正しく合致している、右はデジタルカメラのK-1 IIで、そのレンズ着脱ボタンの位置とフィンガーポイントの位置がズレまくっている、フィンガーポイントの「役目」はまったくなくなってしまった


 モデルチェンジされたHD FA Limitedのときに「どうしてフィンガーポイントの位置を修正しなかったの?」とペンタックスの企画担当者に聞いたところ、「いつまた着脱ボタンの位置を変更したカメラが出てくるかわかりませんから、フィンガーポイントの位置は現状維持です」という、これまた、いかにもペンタックスらしい回答だった(こうした非合理的なスタイルが多くの人たちに、私も含めて、愛される理由のひとつなのだろう)。

 ところで、旧型FA Limitedの77mmF1.8と31mmF1.8にはフィンガーポイントが設けられているが、初代43mmF1.9はなかった。43mmの開発時は売れてくれるかどうかハラハラどきどきの発売だったわけで、そんな撮影機能的にほとんど意味のないような贅沢なフィンガーポイント採用のアイディアは即却下だったようだ。
 ところが43mmが予想外の人気で売れてくれたので、次の77mmでは「それイケいけっ」と銀に七宝焼きのフィンガーポイントを付けることになった。その77mmもまたユーザーから褒めてもらえたので、31mmにも、となったわけだ。後日、新型HD FA LimitedにモデルチェンジされたときにHD 43mmF1.9にもフィンガーポイントが設けられるようになった。

(写真・7)

左が新型HD 43mmF1.9でフィンガーポイント付き、右が旧型smc 43mmF1.9でなし


緑の七宝焼きフィンガーポイント

 あまり知られていないようだが、フィンガーポイントは無垢の銀材の上に七宝焼きを施している。銀のカタマリの上に七宝焼き。無垢の銀を使ったのはシルバーの地の上に「緑」の七宝焼きを施したほうが、いっそう鮮やかさと緑色に深みが出てくるからというのが理由だった。ただの指標に ━━ いまとなってはナンの役にも立ってないが ━━ そんな贅沢をしていた。しゃれた遊び心というべきか。

 その緑色のフィンガーポイントだが、31mmレンズが発売になってから数年後に、とつぜん緑色が淡く浅い色になってしまい、それが現在も続いている。
 原因は有害物質の使用を制限する「RoHS(ローズ)指令」だった。
 初期の緑色フィンガーポイントの七宝焼きの釉薬には「鉛」が入っていた。深みと鮮やかさのある美しい緑色はシルバー地金と鉛入り釉薬のおかげだったのだが、それが環境問題により使えなくなった。そのせいで、それ以降は淡く浅い(やや安っぽい)緑色になってしまったというわけだ(現在のHD FA Limitedがこれにあたる)。このへんのこともあって私が旧型のsmc FA Limitedレンズのほうに魅力を感じている理由でもある(まったく、どーでもイイ話だけど)。

 今となっては役立たず飾りモノにすぎないフィンガーポイントと同じように、なーんの役にも立たない〝見栄え〟だけの処理が施された別な部分もFA Limitedレンズにはある。
 レンズキャップの ━━ これは3本のレンズキャップともにアルミ材の削り出し加工で仕上げたものだが ━━ その内側にはフィンガーポイントと同色の緑のフェルト布が貼り付けてある(43mmのレンズキャップは初期タイプだけが黒のフェルト布、後に緑フェルト布になった)。

(写真・8)

3本のレンズはすべてアルミ材からの削り出し加工されたかぶせ式レンズキャップを採用、そのレンズキャップの内側には柔らかなフェルト布が丁寧に貼り付けてある

 (写真・8)を見ればおわかりになるだろうけどレンズ面に接触するわけではない。フェルト布があってもなくてもレンズ面になんの効果も役目もない。丁寧に美しく〝内張り〟されたレンズキャップを見るたびに「なぁんて無駄なことをやってるんだろう」と呆れると同時に、私は「これこそがFA Limitedレンズの魅力なのだ」としきりに感心しているのだけど。

 さらに、絞り数値や距離目盛り、被写界深度目盛り(これらは最近のミラーレス用AFレンズではほとんど見かけなくなった)などには、シンプルなプリント印字などではなく細密な彫り込み加工がされていて、そこに丁寧に色差しされている。独特の高級な質感が伝わってくる。

写真・9)

やや見づらいが被写界深度目盛りに、赤外撮影用の小さな赤色目盛りが彫り込まれているのがわかるだろうか、そう、左側のF5.6あたりにある、今となっては〝無駄の骨頂〟と言えなくもない

 被写界深度目盛りや彫り込み加工のような、近頃のレンズ、とくにミラーレスカメラ用の交換レンズには決して見られないような「遊び心」がFA Limitedレンズにはふんだんに盛り込まれている。

 さて、ここまで読んでいただいている方々の中には「些細な話は、もういい加減にしろよ」と思っておられる人もいるだろう。申し訳なかった。急いで個々のレンズ3本について解説をしていきたい。

 なお、《前編》でも少し触れた話だが、FA Limitedは「HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WR」以外は、新型/旧型ともに、AFはカメラボディ内のモーターでマウント部にあるカプラーを介して駆動する方式で、AFとMFの切り替えはワンタッチ式ではない(クイックシフトフォーカスシステム非対応)、絞り駆動も古くからの方式でメカニズム満載のレンズでもある。それらを知った上で以下を読んでいただきたい。

smc PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited


(写真・10)
smc 43mmF1.9+PENTAX K-1 II、絞り優先オート(F1.9)、露出補正なし、ISO400

画面中央部はシャープなのだが周辺にいくに従って球面収差の影響でピントは甘くなるし、逆光ではフレアも目立ったくるが、ぼけ味は柔らかく好感がもてる

 パンケーキタイプの薄型レンズである。全長は27mm(レンズフードなし)。レンズ構成は6群7枚構成で、使用している光学レンズはすべて通常一般の屈折型レンズで特殊レンズは1枚もない。フォーカス時の駆動はレンズ群がひとかたまりで前後する全群移動方式。

(写真・11)

レンズ構成は高屈折系ガラスを使った6群7枚、ピントは全群繰り出し式

 開放F値での描写は(良く言えば)甘くて柔らかな描写だが、(悪くいうと)フレアっぽくて解像力不足な描写。周辺部は大いにぼける。良くも悪くも、強い球面収差のせいである。いくらナンでも、いまどきこのようなクセのある描写のレンズは珍しい。そこが(私には)他に替えがたい大きなチャームポイントなのだけど。
 Limitedレンズの企画意図と光学設計者の考えにより、意図的に狙った描写なのだろうか。開放絞り値付近での遠景描写はとくに甘くなる。ただし2段ほど絞ると、劇的にクリアになりシャープになり、描写は豹変したかのように良くなる。撮影距離と絞り値での〝クセ〟を知ってそれを生かして撮ればおもしろい表現ができる。逆光/半逆光に弱くてフレアがすぐに出るのにも注意。

(写真・12)
smc 43mmF1.9+PENTAX K-1 II、絞り優先オート(F8)、マイナス1EV露出補正、ISO200

焦点距離43mmは使ってみれば意外と使いやすい画角で、35mmとも50mmとも違った感覚で撮影ができる、そんな魅力もある

 絞り羽根は円形ではなく多角形で(開放F値以外は)ぼけ味にクセがある。しかし、ソコ、その〝欠点〟こそがsmc 43mmレンズの味であって、現在の目から鼻に抜けるような秀才レンズとは異なった味わいのあるレンズだともいえる。結像性能一辺倒主義者でなければ、こんな我が儘な描写のレンズはいまどき珍しく充分に愉しめるだろう。
 レンズフードはねじ込み着脱式で、薄型パンケーキレンズとして使うにはレンズフードを外したほうがすっきりと見栄えも良くなる(私はいつもそのスタイルで使っている)。

smc PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited


写真・13)
smc 77mmF1.8+PENTAX K-1 II、絞り優先オート(F2.8)、マイナス0.7EV露出補正、ISO200

外観デザインも上品、その描写も上品なレンズ、AFはお世辞にも速いとは言い難い、手動でピントを合わせるよりも高速だ、と言える程度、決して期待は禁物

 絞り値にかかわらず柔らかな描写なのだが、しっかりとした解像力はある。クリアで「線の細い」描写の代表的レンズといってもいいかも。
 43mmF1.9レンズと同じく一般的な屈折型の光学ガラスレンズだけで6群7枚の構成に仕上げている。フォーカシング時は後群の1枚レンズを固定したままで、前群部の5群6枚が固定したまま繰り出す〝後群分離型前群移動方式〟だが、フローティング方式の一種と捉えたほうがいいかも。この方式により像面湾曲収差を最適に補正している。

(写真・14)

高屈折系のガラスレンズを使った6群7枚のレンズ構成、ピント合わせは最後尾のレンズ1枚を固定にして前群全体を繰出す方式

 もっともLimitedらしいレンズで、43mmF1.9のようなクセの強いレンズではなく、誰が使っても安定した描写が得られる満足度の高いレンズだ。FA Limitedシリーズの中ではイチオシしたいレンズ。ぼけ味が柔らかく上品な描写。ポートレート撮影などには最適なレンズだけど、ほど良い中望遠なのでスナップ撮影にも活躍するだろう。

(写真・15)
smc 77mmF1.8+PENTAX K-1、絞り優先オート(F2.8)、マイナス1.3EV露出補正、ISO1600

最短撮影距離は約70cmで、もう少し寄れればなあと思うこともある、ウマく使えばぼけ味を生かしながら線の細い解像感のある描写ができる

 レンズ外観のスタイルも良い。誰かが「写りも姿かたちも、貴婦人のような品のあるレンズだなあ」と褒めていたけど私もその通りだと思う。レンズフードは内蔵引き出し式。

smc PENTAX-FA 31mmF1.8 AL Limited


(写真・16)
smc 31mmF1.8+PENTAX K-1 II、絞り優先オート(F5.6)、マイナス0.7EV露出補正、ISO1600

広角レンズだが撮影時のF値にかかわらずピント合わせは狙った部分に正確に合わせて写すようにしたい、ピントが曖昧だとせっかくのレンズの味を引き出すことは難しくなる

 FA Limited3本の中ではもっとも現代風の描写特性を持ったレンズだろうか。7群9枚構成で、フォーカシング時には前群の4群4枚と後群の2群5枚の2グループが前後するフローティング方式を採用している。高屈折ガラスや異常低分散ガラス、非球面レンズなどの特殊光学ガラスレンズを使っている点が他の2本のFA Limitedレンズとの大きな相違点。そのためだろうか〝Limitedらしい〟独特の写りがやや希薄な印象を受ける。そのぶん、撮影距離や絞り値による描写変化は少なく安心して使えるレンズとなっている。

(写真・17)

高屈折超低分散ガラスや非球面レンズなど特殊レンズを使った7群9枚のレンズ構成

 ほど良いコントラストがあって解像感は高くシャープな写りをする。開放F値付近ではコマ収差が少し目立つがちょっと絞り込んでやればすっきりとしてなくなる。同じsmc FA Limitedレンズであるが、この31mmF1.8レンズとは43mmF1.9や77mmF1.8とだいぶ描写の雰囲気が違う。もっとも〝デジタルカメラ向き〟のレンズと言ってもいいかも。

(写真・18)

smc 31mmF1.8+PENTAX K-1 II、絞り優先オート(F5.6)、マイナス0.7EV露出補正、ISO200 

フローティング方式の測距方式のおかげか、撮影距離による描写変化が少ない、カメラ側の周辺光量不足補正の機能をOFFにして撮影するとおもしろい効果も出せる、なおこの写真は補正ON

 順光ライティングではクリアーでヌケの良いのだが、逆光/半逆光で少しフレアっぽくなることもある。とはいえ優等生的で破綻の少ない描写で、それはそれでいいのだろうけど、面白味に欠けるところもなくはない。私にはいちばん使用頻度の少ないレンズ。レンズフードは脱着不可の固定式である。

最後に

 はっきり言ってsmc FA Limitedレンズの3本は古いタイプのレンズで、現代の特殊光学レンズを多用して優れた光学設計や組み立て技術で作られたレンズ(とくにミラーレスカメラ用レンズ)と比べると、解像力やシャープネス、コントラストなどのレンズ結像性能については大きく〝見劣り〟する。

 しかし「レンズの味」といった個性的な描写力、すなわち官能性能はとても良いものを持っている(と思う)。マイナーチェンジされた新型のHD FA Limitedレンズにも充分にそうしたテイストを残している。最近の結像性能超優秀なモダンレンズでは、ゼッタイに見られない、得られない独特の描写が隠されている。とにかく、撮って楽しい、手にして楽しい、眺めて楽しいレンズなのだ。そんな「味」のあるレンズを再度、見直して機会があれば使ってみるのもイイのではないか。

(写真・19)

FA Limitedレンズにはブラックモデルとシルバーモデルの2ラインが販売されている、私は文句なしにシルバーモデルが好み、PENTAX K-1 のシルバーにもブラックにも取り付けて違和感はまったくない、因みに売れているのはブラックモデルのほうで「2:1」の割合だそうだ


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