(12)最大撮影倍率・後編 ━━ レンズ仕様表の読み方
というわけで、前回「最大撮影倍率」の話、その後編。
最大撮影倍率の倍率数値がいまいちわかりにく。デジタルカメラ時代に見合った最大撮影倍率の良い表記方法があるのに・・・という話のつづき。
最大撮影倍率・後編
話が少しヤヤこしくなるが ━━ デジタルカメラの時代になると、撮影倍率はフィルム時代のように撮影したフィルムそのものを見て確認も実感もできなくなった。
撮影倍率が何倍だと言っても、デジタルカメラではフィルムカメラとは違って、イメージセンサーにどれくらいのサイズで写っているかリアルに見て確認することは金輪際できない。
倍率1倍だ、倍率1/2倍だ、と言ったところでファインダーや液晶モニター画面の「虚像」を見て、ああ画面にこれくらいのサイズで写っているのか、と見て納得するだけだ。
デジタルカメラの最大撮影倍率は概念的数値か?
さらにいえば、イメージセンサーの画素数の多寡によって表示される画像のサイズが異なる。それをいきなりピクセル等倍でディスプレイなどに映せば実質的な撮影倍率はますます曖昧になる。
フルサイズ判カメラの「等倍」、APS-C判カメラの「等倍」、マイクロフォーサーズカメラの「等倍」、2/3型センサーカメラの「等倍」などなど、じつにややこしい。
デジタルカメラでは撮影倍率の数値はあくまで概念的数値、目安の倍率として認識しておくしかない。
たとえば、フルサイズ判やAPS-Cサイズ判などセンサーサイズの異なるカメラを使って、同じ焦点距離のレンズを同じ撮影距離から撮影すれば、当然だけど撮影倍率は違う。
フルサイズ判用レンズをAPS-Cサイズ判のカメラに使用したときは、じつは、撮影倍率を1.5倍とか1.6倍してやる必要がある。
最大撮影倍率値ではなく最短時の撮影範囲の示してほしい
デジタルカメラでの最大撮影倍率は、現在の倍率数値に加えてもう1つ、撮影可能な最大範囲(縦横の長さ)を表記しておくのがユーザーにとっていちばんわかりやすいのではないか思うのだ。
要するに私たちが知りたいのは、このレンズを使って最短距離で、どの範囲(=どれくらいの大きさ)までを画面内に写せるか、ということではなかろうか。その範囲を示すのがもっともわかりやすいと思うのだが。
じつは、その最短距離で写せる最大の範囲を仕様表に記載しているメーカーも、たった数社だがあるのだ。
OMシステムが「最近接撮影範囲」、ツアイスが「最小被写体距離」として最大撮影倍率のときの縦と横の長さを明記している。
こうした撮影範囲の数値を見れば、たとえばこのレンズなら、画面いっぱいに文庫本サイズが写せるのか、週刊誌サイズが写せるのかが即わかる。最大撮影倍率数値よりもずっと具体的だし直感的、実用的。
これなら画素数やセンサーサイズの異なるカメラを使っていても実質的な「最大撮影倍率=撮影可能範囲」が実感できるはずだ。
同時に最短撮影距離とレンズ全長を事前チェックしておけば、最大撮影倍率のときレンズ先端部と被写体との距離(ワーキングディスタンス)を充分に確保して撮影できるかどうかもわかる。
じつは、キヤノンも最大撮影倍率時の撮影可能範囲を(こっそり)明記しているのだ。
ただ残念なことに、その撮影可能範囲はホームページのレンズ仕様表にもカタログにも記載はなく、使用説明書の中の仕様表にだけ記載されているのだ。
「画界」というのがそれ。
画界なんてまったく馴染みのない用語だ。読み方は「かくかい」または「がかい」で「区切り」の意味があるようだ。
だいぶ以前のフィルムカメラ時代から、キヤノンのレンズの使用説明書(レンズの付属品)の仕様表だけに記載されていて、いまのRFレンズの使用説明書にも記載され続けている。しかしカタログにもキヤノンのホームページのどこにも見たことがない。
私はこの画界という用語に以前からずっと気になっていて、図書館で手当たり次第に辞書を調べたことがあった。ただ一つ、ある大辞書で「区切り」の意味を見つけただけ。キヤノンだけの「写真専門用語」なのだろうか。
それはともかく、せっかく最短撮影範囲を使用説明書にキヤノンは何十年も継続して記載しているのだから、その「画界」の数値をホームページやカタログなどに広く記載しておいてくれれば、ユーザーまたはレンズ購入予定者にとって大変に役立つと思うのだが。
いやそうじゃないぞ、最短撮影倍率は倍率なんだから0.23倍とか0.12倍と表示すればいいのだ、最短撮影範囲のようなものはイラナイ、とおっしゃる方もいるだろう。いやでも、私は倍率表記は不用だとは言っておらず最短撮影範囲も「併記」してほしいと、ま、そう考えているわけだ。
さて、まだ少し「仕様表の読み方編」シリーズが続き、次回はレンズの「最大径x長さ/重さ」の話を。