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りんご飴の苗

「僕と付き合ってください。一生幸せにします」私がこの言葉を搾り出したのは5年前の東京都港区台場1-9-1。まだ酸味を抱き、青かった自分はこの16文字を出す事に6400字相当の物語を認める程の心持ちだった。

「一生幸せにしてください。」この言葉が出た刹那、私達を覆うように灯されたイルミネーション群は日の光を一身に浴び、はつらつと実るりんごの様に生き生きと輝き、二人はそれに伴う様にりんごの如く紅潮し、それから私はりんごの為に栄養と愛を注いだ。

それから私は幾許かの間甘さを噛みしめていた。しかしその甘さは林檎と共にどこかへ消え去った。彼女は林檎飴になったのだ。変色した私への塩水なんぞ自分の梗窪から溢れる物で事足りる上、色の変わった林檎には効果は無い。私はりんご飴の苗だったのだ。

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