I LOVE YOU
I LOVE YOU
詩は複雑で
あればあるほどいいものだから
I LOVE YOU
どの偉人にも属さない
誰のものでもない名言
I LOVE YOU
手垢のついた言葉と言うが
これほど広く大きな言葉に
そう簡単に手垢がつくとは思えない
手を大海原に浸すとき
潮で汚れるのは手であって
海はそのまま海である
I LOVE YOU
思い上がるな 詩人の手
I LOVE YOU
月が綺麗と翻訳するのも
そろそろ飽き飽きしてきたが
月は綺麗だ 狂おしいほど
破壊したい 消滅させたい
溶かしたい 狂おしいほど
I LOVE YOU
Iとは誰だ YOUとは誰だ
特権的な存在としての作者という概念は
死んでしまったはずではないか
I LOVE YOU
陳腐な言葉は使うなと
月並みに堕するのを恐れよと
詩人、歌人、俳人が一番初めに習うこと
禁じられている
I LOVE YOU
禁じられるべき言葉とは たとえば
め◯ら、つ◯ぼ、き◯がいみたいに
人を傷つける言葉がまず挙げられる
I LOVE YOU
その対極にあるはずなのに
そして他人が大事に心の中にしまっている
秘密を暴き立てたり 言いふらしたり
するのもいけないことである
HE LOVES YOU
SHE LOVES HER
などは下世話なゴシップである
だがI LOVE YOU
疑いなく
話者自らの気持ちである
自分の気持ちを踏み躙る人間がいるだろうか
I LOVE YOU
またこれは
時と場合によるだろうが
卑猥な言葉も
慎むべき場面は多い
しかしながらI LOVE YOU
プラトニックな純粋愛
のみを伝える
そこに肉欲の介在する
余地などあろうはずが
ないではないか
I LOVE YOU
つまるところI LOVE YOU
美しすぎて
花鳥風月が嫉妬したのだ
だから僕が閉じ込めたい汚してやりたい
I LOVE YOU
I LOVE YOUの
言葉によって
僕は君を罵倒して
嘲笑しよう
I LOVE YOUの
言葉によって
君が必死に隠そうとしている君の暗い欲望を
僕は世界に告げ口しよう
そして僕はあのぶよぶよの
一塊のリビドーと同化して
欲求不満の小麦畑へ
泥水のように囁くだろう
I LOVE YOU
しばしば誤解されているが
詩人の仕事は言葉を綺麗にすることでなく
言葉を濁らせることである
I LOVE YOU
詩人たちの怠慢の動かぬ証拠
I LOVE YOU
そのあからさまな美しさへと
僕はまた
震える汗ばんだ手を伸ばした
I LOVE YOU