劇団ダブルデック第11弾『2020ネンマツ?』の衣装を考えた話
はじめに
この記事は2023年8月上演の劇団ダブルデック第11弾『2020ネンマツ?』のネタバレを含みます。これから配信もありますのでまだ本編を見てない方はどうか見てからご覧ください。
配信開始は9/16~観劇三昧にて!チケット発売中!
こんにちは。ベリヨです。
今回は自分から申し出て、衣装のプランと準備をさせてもらいました。小屋入り中役者と両立は厳しいと見越して相方のナルミさんにもお手伝いいただきました。しれっと劇団美辞女でダブルデックに仲間入りです。
キャラクターの職業などがはっきり分かれていたため方向性を決めるのは簡単でした。強いて言うなら劇中で3年の時間が経過しそれぞれの仕事などに変化が出ていることを衣装にどう落とし込もうか…というところでしたが、最終的には程よいところへ落とし込めた気がします。
0.靴
ダブルデックでは靴をお揃いにするのが恒例です。
過去出演した2回はたびぐつでした。
これが正直なところかなりしんどい。普通の劇(?)ならまだしも有酸素運動の連続であるダブルデックで靴の運動性能は役者の生死に直結します。
実際に八百屋舞台(客席に向かって下り坂になっている舞台のこと)だった『地大さん家の150年+』ではケガ人も出ました。
自分も履くんだしぜったいに動きやすい靴にしたい!そこで選んだのがこちら。安心安全の靴のヒラキの体育館シューズ。サイズ展開も幅広く、軽くて安い!
序盤に購入しほとんどこれを履いて稽古をしてました。かなり好評でした。私は普段のサイズで買ったらおもったよりゆったりとしていたので中敷きとインソールを入れて履き心地を調整しつつ身長も盛りました。これからも履き続けたい。I♡ヒラキ。
1.ウマノ(馬術選手・製紙工場経営)
ウマノは馬術選手です。実際の馬術選手のユニフォームは燕尾服のような正装で、全身用意したらいくらになっちゃうんだろう…という感じでした。
実は今回男女比が3:6で男性が3名しかいません。他の二人もスーツ系にする予定でしたからフォーマル系はできれば避けたいところ……。
そこで現実の馬術競技のユニフォームというよりも、世間一般のイメージでいう競馬選手のような風貌にシフトすることに。イメージカラーは緑にしました。瑛紀は緑がよく似合うから。ハーフジップのトップスは北海道感・製紙工場感・競馬感がほどよく表現できていたのではないでしょうか。腕まくりは瑛紀さんの提案でしたがグローブがよく映えるし舞台は夏なので丁度良かったです。
初見では気づきにくいところですが、3年前の設定の場面だけ乗馬ヘルメットをかぶってもらってました。なんとこちらは本物の乗馬ヘルメット。演出助手のもっちょさんのご実家にあったそうです。豊かすぎ。短いけどツバがあって照明が顔に当たりづらくなるのと、汗を大量にかくこと、のちのちカツラの着脱があることを考慮し、途中からかぶってません。
ボトムスはセンターラインの入ったぴっちり白。本来の乗馬ズボンはむしろまたぐらがゆったりとしているのですがせっかくスリムな瑛紀さんの足を隠す必要はないと思ったし、選択肢も少ないのでこちらにしました。私服としては若干違和感のあるこのピタっとズボンが逆にユニフォーム感というかなにかの衣装なんだなという感じを出せた気がします。私服でダブルデックの舞台にあがってる方が滑っちゃいますから。
悩みの種は靴でした。恒例のおそろい衣装靴は白。乗馬感を出すなら本当は黒のブーツにズボンの裾をインしたかったな…とスニーカーの上からブーツに見える足かせみたいなものは売ってないか探しましたがアイドルの衣装みたいなものしかありません。困っていたところに天の声が!もっちょさんのご実家に実際に乗馬で使うブーツカバーがあったのです。革製のホンモノです。スニーカーの底にバンドを通して着脱可能。神過ぎる。もっちょさんの実家に助けていただいたところが多大に功を奏し、ウマノの衣装が出来上がったのでした。瑛紀さんにもよく似合ってるし、満足です。
ちなみに髪をピッチり分けてもらうこと以外ヘアメイクはしていません。汗っかきだから。
2.オモロ(芸人・水のトラブルの人)
芸人感より水のトラブルの人であることを優先しました。自然とツナギは青だろ!と思いイメージカラーも青に。ただほかのキャラクターへの転換と暑さを考えるとツナギをしっかり着込むのは厳しいと判断し腰で結ぶような形に。
当初トップスも青黒のなんの変哲もないやつを用意していましたがたまたま私が稽古場に着ていったムキムキモナリザのTシャツがウケたので採用されることに。結果としてですがオモロの「ウィ~ン」のポーズと同じだし、お笑い要素でもあるのでこいつにしてよかったです。
上半身が真っ黒なのでタオルを肩掛け。踊るとすぐ取れるのでスナップボタンでTシャツに固定していました。腕がさみしいということで急遽リストバンドも追加。キャラクターデザインとしてまとまりが出た気がします。
髪形は完全に個人の希望なのですが髪をまとめるのが苦手なのでハーフアップに。ロープ編みをしてお団子を作り、カツラなどがそこに引っかかるようにしました。そうすれば取れないからね。
先述の通り女性が6人もいるのですが、服のジャンルや印象・髪形など極力バラけるようにしました。オモロは男勝りな感じだったので何の心配もいりませんでしたな。
3.ユメ(大手飲食チェーン店長・新規事業開発部マネージャー)
私は常日頃マタハルに似合う服のことを考えて生きているのですが、今回はかなり満足いきました。
ユメの働くウマイ軒は某定食屋がモデルなのですが、ユメは3年後の現在新業態の高級路線レストランを運営しています。というかなんなら現場ではなく本社勤務のOLです。その辺の説得力と、大手外食チェーンの制服感と、マタハルさんに似合う衣装を…というのでひねりだしたのがこちらの衣装。
トップスはゆるめのシルエットのストライプシャツ。ダブルデックはダンス然り、劇中でも肩から上に腕をあげることが多くシャツインがすぐ崩壊するのでゆとりのあるトップスにしておきます。
そこに赤いタイ。某定食屋が赤のイメージなこともあり赤でまとめることにしました。
タイトな黒のパンツは裾にスリットが入っていてO脚でお悩みのマタハルさんの下半身をすっきりと見せていたと思います。ただピチパツすぎるのも無駄に官能的になるので赤の腰エプロンでウエストもキュっと見せ、差し色のバランスも取れたかと思います。
髪形はトレードマークのショートカットに、ピンク系のパレッドでアイメイクをしてもらい、シルバーのフープピアスを付けてもらいました。
マタハルさんは希少なピアス穴を持ちし俳優なのでつけれる隙があれば必ずピアスをつけさせたい。こんなにもピアスが見える髪形なのだから。
スタイリッシュな衣装にシルバーのピアスがよく似合ってました。特に女性陣から好評で最近女性の色気がでてきたマタハル氏の魅力を存分に引き出せたのではないかと思います。
4.バチ(WEB系会社員・経営者)
加藤さんと言えばフォーマルが似合うで私の中ではおなじみです。稽古着の姿とスーツの姿でこんなにギャップのある人も少ない気がします。
当初バチはもっとナルシスティックで勝気なキャラクター作りをしていたのでどこまでもびしっと決めようと思ってました。イメージカラーは紫で怪しい感じにすることに。紫のYシャツに白のベストでもバチェラー感がでて良いかなと思ってましたがMC役のイヤさんと印象がかぶってしまうことを懸念しダークトーンでまとめることに。
長袖を腕まくりする方がシュっとスタイリッシュに見えると考えて探していたところでキャラクターがより親しみやすい感じに方向修正されました。なら、ダブルデックの世界観的にもバチをもっとかわいらしい感じにしようと考え、半袖のパリッとしたポロシャツに。メイクでチークもいれて愛されキャラに仕立てたのでした。
今回衣装はほとんどSHEINでそろえてますが、メンズのスーツの品ぞろえが異常です。そして安すぎる。バチのベストとネクタイ、使ってないけどカフスもセットで驚きの1946円。いいのか!?心ばかりのバチェラー要素で胸にバラのピンを刺してました。差し色でかわいいよね。
5.フツ(派遣社員・歌手)
衣装やメイクで大きく印象を変えることができる小山ごろーさん。決して個性がないわけではないのに、不思議な美人だ…。今までのごろーさんと印象も変えつつ「普通の人」「派遣社員」のステレオタイプをいってみようと、提案したのがTHE平成初期のOL制服。ショムニとかコップのフチ子さんみたいな。今日日見ないけど実はこの格好が大好きで、隙あらば友達に着せたいと思っています。だからカラーはピンク色。
他の公演の兼ね合いで前髪を赤く染めてたごろーさん。これは逆にアリでは!?と上から前髪ウィッグを付けて、サイドにメッシュを入れてるような形に。一つ結びのみつあみヘアーにしてもらいました。派手過ぎず、しかしキャラクター感もあり、前髪も似合うし良かった~。前髪ウィッグ初めて試してみたけどすっとなじむし、見た目の印象を操作したいときとかにこれから重宝しそう。前髪は汗で束感が出てきてしまったらハンドソープで優しく洗って柔軟剤を含ませ濯いで陰干しします。
ボトムは最初タイトスカートで探したけどいいのが見つからずグレーのプリーツスカートに。動きやすそうだったし、こっちにしてよかったあ。
ごろーさんの持つ大人っぽい印象からフツの少し気の弱そうな印象に衣装とメイクと表情でここまでもっていけるのはやっぱり女優として尊敬するところです。劇中写真もどれもかわいくてほんとお気に入り。
メイクも髪形も完璧に一人で完成させてくれる世界一手のかからない役者でもあります。スーパーウーメン。
6.キヅカ(テレビウーマン(上司))
テレビウーマンの服ってなんだろう…。と考え、OLともまた違ったアクティブな感じを出したいとさわやかな白とオレンジの衣装を準備しました。田口さんのもつ温かい印象とマッチして、一番気に入った衣装かもしれません。
途中オシヅの登場で相対的にお姉さん的役割にシフトしたのでパンツも考えたけどスカートに。シンプルすぎるトップスにはスカーフを合わせてOL感と衣装感を持たせました。
テレビウーマンが実際にそうかは知らないけれどアイコンとしてウエストポーチとヘッドマイクをつけていただき、オシヅとセット感も。
黒いアイテムが入ることでいい感じにメリハリもつきまとまりが出ました。田口さん発案で黒のソックスにしたのもよかったなと思います。
髪形はハーフアップながら、くるりんぱして綺麗目の印象に。劇場入りしてから協力に来てくださったわべさんがとてもかわいく仕上げてくれました。感謝。女性が6人もいましたが、みなさん個性的なお陰で印象がかぶらない。キヅカはもっと”女性感”を出すこともできましたが、この媚びてない感じのスタイルがある意味女性の多さをカモフラージュ出来てたかなとも思います。
7.オシヅ(テレビウーマン(新人))
キヅカを綺麗目に作ったのでアクティブでキュートな印象にしたい!ということと、さわやかな元気っ子的な役割を担ってほしく、思いっきりビタミンカラーの黄色に。東京5人と並んだ時にも戦隊ものみたいになっていい感じです。
意外と衣装だけ見ると一番シンプルなので、後から腕時計とネックレスを足しました。髪形はこだわりのあの頃の辻ちゃんヘアー。絶対にのや(星ノ谷)に似合うと思ってたので念願叶いました。ゲネで私がやってあげたときはしっくりこなかったのですが、ナルミさんにバトンタッチしみつあみを太くしてもらってからはずっとビジュアルが最高潮でした。友達が盛れてるのって嬉しいよね。出来上がりを見るとキヅカの後輩としてのオシヅ、勢いのある若手ADとしてのオシヅ、底抜けに明るくポジティブな印象と主人公感…いろいろ相まって本当にかわいいキャラデザインになりました。並んだ時ピカチュウとライチュウみたいで黄色とオレンジにしてよかったなとも思いました。
8.イヤ(大物司会者)
大物司会者イヤエムシ。モデルのイメージは某ファイナルアンサーの人です。ゴロ六郎氏に「顔をテカテカにして」と言われ頭を抱えます。サミゾさんは趣味の釣りのおかげで色黒。じゃあ顔に油塗ってみる…?と試すも、肌にすぐなじんでしまうし、絶対に肌荒れするような気がして悩みます。最終的にはギャルが涙袋とかにチョコンと塗る用のラメをイラスト風に塗りたくることで顔のテカリを表現しましたが、舞台からだと見えていたのか…。これは課題となりました。
衣装についてゴールドかシルバーでそろえようと思い両方準備しましたが、キラキラシルバーが採用され、ならばと赤い蝶ネクタイになりました。新婚だったおかげか蝶ネクタイ用のワイシャツを私服から提供いただきました。ありがとう&おめでとう。
一応、結構年配の設定だったので白髪になれるワックスを塗布していただいてましたが、やはりこれも舞台映えは微妙…。要研究です。サミゾさんが貫録あって助かったぜ。シルバージャケットは舞台映え照明映えするし、サイズも丁度良く値段も手ごろ(2614円)で良かったのですがラメの落ち方が尋常でなく、私服提供のスラックスまでキラキラに。結果セットアップみたいになってしまいました。草。
9.デジ夫人
台本を読んだ段階でまったくビジュアルが浮かびませんでした。デジタル要素と貴婦人要素の中庸とはいったい何……?
ただなにかのタイミングでふと「ずっと座ってたら面白くないか?」と思いついてしまい、ゴロ六郎氏に頼まれたわけでもないのにその路線でいくことを心に決めてしまいました。だってああいう貴婦人って私の記憶の中ではずっと座ってるんだもん。(徹子とかハウルのサリマン先生とか)
きしさんはたたずまいやお顔立ち、声の雰囲気からお上品な感じは簡単に引き出せる自信があったので問題はデジタル要素。
胸にタブレットを埋め込むとか腕に小さいパソコンをつけるとかいろいろ考えましたがただでさえ椅子に座りっぱなし(かのような形)に拘束された状態でそれは動きづらいなあとSHEINをさまよっていたら見つけました。
光るゴーグルだ!!!!あとスターバックスみたいなカチューシャ!!!!これだ!!!となり即購入。ボタン電池二つでちゃんと光る。しかも光ってるのが舞台上でちゃんと見える。思ったよりも効果的に作用してくれました。ゴーグルのつるがガバガバだったので接着剤でゴムバンドをつけ、カチューシャはヘアピンで髪に固定しました。
夫人のおみ足はこのような構造になっていて熟練の衣装スタッフの手助けがあって初めて身につけられます。機構の設計と材料の選定、背もたれの製造はベリヨが。ドレス、座面の加工とおみ足の作成はナルミさんがやってくれました。足は最初、ストッキングに綿を詰めればできるだろうと甘い考えだったのですが全くうまくいかず、シアーなうんこのぬいぐるみみたいになってしまったので、フェルトで1から作ってもらいました。ゲネで足が長すぎて階段に登りづらいことに気づき、本番では足を15センチ、ドレスの裾を20センチ詰めました。結果体の大きさもいいバランスになってよかった。
家で試着を重ね、座って見えるようになってからは常に爆笑しながら作業してました。稽古場でもおみ足は大人気。
見慣れてきたころに本番に突入。オープニングで夫人が立ち上がった瞬間に笑いが起きて大満足でした。
お客様のお見送り中ミッキーマウスさながらにグリーティングが発生してたのもウケました。きしさんのお子さんが衣装を着てる状態のママに慣れてきて最後の方は「これママ」といいながらおみ足を小突いていたのは感動的でした。
きしさんからネイルチップを用意したとお申し出いただき、試してみるもやはり強度が不安ということでピールオフでジェルネイルを施すことに。「劇場入り中空いてる時間でやりましょうね♡」とか言ってたら全然空き時間がなく、本番直前まで片手をお借りしてネイルしてました。なんとか本番には間に合い、ゴージャスなおててに仕上がりました。家中に会った指輪もはめてもらい、夫人の格が上がりました。
10.ゲスト(日本を代表する巨匠映像監督)
今回男女3名ずつ計6名のゲストにご出演いただきました。映像監督ということで男性陣は革ジャンにハンチング、女性陣は肩掛けカーディガンにハンチングかベレー帽という形で基本私服をご持参いただくことに。
革ジャンは以前別の芝居で瑛紀さんに着せたものが保管してあったのでそれに。慎太郎さん入るかしら…と不安だったけど最近痩せたとのことでOKでした。よかった~
もう1役フィアンセという一瞬のキャラクターについては男性陣はワンピースに爆乳。女性陣は金髪のカツラ(やすこさんはカツラより地毛の方が明るかったから地毛)という格好に。
初対面でこの衣装を着せるのは忍びなかったけど中野さん、最高に似合ってました。
女性陣はさんなぎさんはピンポン少女のイメージが強いので赤のポロシャツ、ももかさんは清楚な大女優風のイメージで青のワンピース、やすこさんはへそが出るかわいい服で!とお願いしたら最高にかわいいトップスをご準備いただけました。みんな個性に合っててかわいいね。日本を代表する巨匠ということで老婆風にすることも考えましたがゲストめがけてお越しになったお客様のことを思うと究極の美魔女ということで年齢不詳の可憐な見た目の方がいいだろうと、皆様の素材を活かす形になりました。
ゲスト隊長松原さんは普通の役者張りに稽古にもお越しいただきゲストができそうなことについても沢山発案いただきまして超絶感謝だよ。フィアンセが爆乳なのはバラさんのせいです。
むすびに
といろいろ語りましたが総合的にとても楽しく衣装を準備させていただきました。お褒めいただくことも多く、頑張ってよかったなあと報われました。
協力してくれた皆様、特にナルミさんとわべさん本当にありがとうね。
可愛い衣装は配信でもう一回見られます!どうかお願い致しますm(_ _)m