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ジャフコ 藤井様・富永様×THIRD、投資家インタビュー❷

本記事は、株式会社THIRDの資金調達に伴い実施した投資家インタビュー第2弾です。

 第1弾はこちら:
Spiral Capital千葉様×THIRD、投資家対談❶前編 

ベンチャーキャピタル(以下、VC)の中でも長い歴史を持ち、Forbes Japanが発表した「日本のベンチャー投資家ランキング2021」で第一位を獲得した藤井さんが所属するジャフコ グループ株式会社(以下、ジャフコ)様。今回の調達より、藤井さんご本人がリード投資家として同じ目標を目指す仲間に加わってくださいました。

今回のインタビューでは、ジャフコでTHIRDをご担当いただいている藤井さん、富永さんの他、ジャフコ出身の弊社COO大桃を交え、CEO井上がお話を伺いました。

約50年の歴史が示す、第一線で業界を牽引してきたVC

THIRD井上(以下、井上):
今日はお越しいただきありがとうございました。早速ですが、最初に御社のご紹介からお願いできますか?

ジャフコ藤井さん(以下、藤井さん):
ジャフコは1973年に設立された、約50年の歴史を持つVCです。日本で最初に出来たわけではありませんが、1970年代当時、多数生まれた中で残っているのが当社のみであるため、業界内で一番歴史があるVCと言う位置付けです。 JAFCO(ジャフコ)はJapan Associated Finance Co.,Ltd.を略したもので、日本生命、旧三和銀行、野村證券の三社による合弁会社として設立された会社になります。
当時は、VCという業界もなく経験者もいないため、ジャフコ自体がベンチャーマインドを持ち、新卒採用でメンバーを増やしベンチャーファンドを立ち上げる等、業界内でも新しい取り組みを試行錯誤してきました。そういった歴史もあり、出来ることを模索するため投資先企業のあらゆる業務を手伝わせていただくスタンスであることも特徴です。そこから様々な知見を吸い上げ、社内で共有し、スタートアップの解像度を高めてきました。他VCと比較して、スタートアップと接点を持つ速さや、開拓力、そして人材開発力が強みだと自負しています。ネットワークを繋げる営業支援、人材採用支援等、ニーズの強いトピックについては専任のビジネスディベロップメントチームのメンバーと共に取り組んでいます。

THIRD大桃(以下、大桃):
ビジネスディベロップメントチームの中に営業支援、HR支援以外にも上場支援も含まれていましたよね。そういった専門チームを揃えている数少ないVCでした。

 藤井さん:
それらの機能を置いたのは2000年代前半でした。最近は他VCでも同様の動きが増えていますが、やはり最初に取り組んだのはジャフコだったと思います。

 井上:
名実ともにVC業界を作り上げてきた存在だったわけですね。情報収集力・接点創出力が強みとのことでしたが、接点数を多く持たれている一方で出資に至るまでは狭き門なのだろうなと感じています。

 藤井さん:
そうですね。全体で年2,000社程のスタートアップにお会いし、最終的に双方の方向性が一致して投資に至るのが年20~30社程度です。新しい会社に最初にお会いするのは若いメンバーが一番多く、私共パートナーがお会いさせていただくのは、年200社程度でしょうか。注目すべき経営者であったり、業界として伸びていたり、テーマとして面白そうであったり、マーケットポテンシャルに期待ができる等のポイントがある会社が多いです。

井上:
これまで出資してきた不動産領域の銘柄も、同じようにマーケットポテンシャルが大きいからという理由になるのでしょうか?


ジャフコ藤井さん

藤井さん:
2000年代のIT化の波により不動産Techという領域自体は以前からありましたが、賃貸物件の仲介サイト等、不動産業務そのものに切り込んだ事業は出てきていませんでしたね。業界全体が慣習を含めて非常に入り組んだ構造をしているため、その領域は新参者にとって難易度が高い印象を持っていました。他業種であれば10年前には解消していることが解消されていない状況がそれを示していると思います。同時に、それらが解消される可能性があるならその事業の広がりは相当なものになりますし、 THIRDからはそこを狙える可能性を感じました。
 
井上:
私たちも10年前では、ベンチャーのシステムを超大手の会社が基幹システムとして利用するなんて想像つかなかったです。今でも決して簡単な話ではないですしね。

圧倒的な熱量で、惹きつけてやまない「夢」を見せて欲しい

井上:
では、続けてお二人についても伺いたいと思います。2人ともジャフコにはプロパーでご入社されてるんですよね?

ジャフコ富永さん

富永さん:
はい。私は金融業界を志望して就活し、2015年に入社しました。アベノミクスの影響で株価が上昇しつつも日本企業はまだ業績が追いついていない状況だった一方で、新興市場では新規上場数が増加しており、活況だったので、ベンチャー支援を通じて日本経済を底上げすることへのチャレンジが面白そうだと思いました。いろんな会社を見ましたが、最終的にジャフコに入社を決めました。
 
井上:
現在はどんな業務をメインに行っていますか?
 
富永さん:
新規でお会いさせていただいた際には、ファイナンスの話はもちろん、もっと細かい様々なお悩み相談を受けることも多いです。新規で年間100社程度お会いさせていただいていますが、何度もミーティングを重ねている方もいらっしゃるので、未投資先スタートアップとの打ち合わせは年200件程度でしょうか。
出資の検討においては、細かい資料を拝見したり、取引先へのヒアリングをしたり、様々な手段を組み合わせながら、理解を深めています。
出資した後は、ジャフコ社内の事業開発やコーポレートのサポートチームと連携して出資先のサポートをしたり、私自身も投資先のオフィスに伺ってお手伝いすることもありますね。
 
井上:
富永さんのご担当先はシードが多いですか?どんなサポートをされてるのかも是非教えてください。
 
富永さん:
フェーズは様々です。初めてお会いする段階ではシードのタイミングが多いですが、その後も継続的にお話させていただくケースが多いです。初めてお会いしてから4~5年くらい経て、ご出資させていただくこともありますね。
支援ではやれることは幅広くやっています。お客さんのリストを作ったり、データをまとめたり、といった本当に作業ベースのことから、経営の意思決定にかかわるようなプロジェクトサポート等、幅広く対応しています。
 
井上:
先程藤井さんもおっしゃっていた、投資先の成長のためにやれることを探すマインドはいまも継承されてるんですね!素晴らしいです。ForbesでNo.1投資家を獲得された藤井さんだと出資先は著名な企業が多いと思いますが、以前と比較して最近の出資先企業の傾向に変化等はありますか?

当日はコロナ感染防止のためマスクを着用したインタビューを実施しました

藤井さん:
経営者の在り方やキャラクターが変わってきたかもしれません。
唐突ですが、私の持論の一つに、「経営者は幼い頃に描いていた“かっこいい人”に憧れて、そのモデルに近づくように努力する」という考えがあります。スポーツ選手やアニメから影響を受けた“ヒーロー像”とも言えるでしょうか。
その観点でいうと、私たちより上の年代では絶対正義の完全無欠の経営者像を目指す人が多いのですが、昨今はワンピース型というか、自分の弱い部分をさらけ出すことを厭わず、むしろそこを補完する機能を持った仲間を巻き込んでいける経営者像を目指す方が多いです。それはそのままチームの作り方にも影響しているように思います。私自身はそれを“夢を見せる力”と解釈しており、出資する時のポイントにもしています。私が出資を見送る時は、経営者の方々がイメージしている世界観を、私が至らず同じ解像度を持てなかった時だと解釈をしていますが、ある意味それも経営者に求めている”夢を見せる力”、つまり”人を巻き込む力”と言えるかもしれませんね。
 
井上:
なるほど。経営者の人物像も重視してるんですね。
 
藤井さん:
本当に人を惹き入れられるかどうかは、データに基づき理路整然と話される以上に、”夢を信じられるか”という直感的な部分に働きかけられるか、だと思います。その源泉にあるのは経営者の事業に対する熱量です。
それを持つ人からは、行動の積み重ね、その結果からもたらされた自信等、滲み出てくるものがありますよね。人を率いるスキルが若干弱かったり、何回もチームが崩壊しているような会社でも、経営者の持つ夢の美しさとあきらめない姿勢が褪せていかなければ、言葉や表情、所作を通して、私自身も同じように夢を共有していけると思います。
別の角度で言うと、私利私欲というか“私”が中心にあるとあまり良くないなと感じることはありますね。私腹を肥やしたい、有名になりたい、人気者になりたい等、人間であれば多かれ少なかれありますが、それ以上に事業を発展させたいという思いが中心にあり、かつその気持ちが強烈な強さを放っていることは、人を惹き付ける必要な要素のひとつだと思います。

現場理解と技術投資、絶妙なバランスで成立している稀有なチーム

井上:
ありがとうございます。おっしゃっているような熱量や本気度をTHIRDにも感じていただいてこその今回の出資だと認識しました。ここからはTHIRDへの評価について聞かせてください。早速ですが、お会いした時の第一印象はかがでしたか?
 
富永さん:
初めてお会いしたのは2020年3月頃で、管理ロイドをリリースされて間もないタイミングだったと思います。不動産周りで長くコンサルティングの経験してきた専門のメンバー、IT開発に強いメンバーを揃えた、チーム編成のバランスの良さが印象的でした。どちらか一方が不足すると難しい業界なのでその両輪が揃っているTHIRDには継続的にお会いしたいと思い、藤井にも会って貰いました。
 
藤井さん:
でもなかなか投資の機会なかったんですよね。
 
富永さん:
焦らされましたよね。

藤井さん:
何度かオファーを出したんですが、笑ってごまかされちゃいました(笑)

井上:
確かにそうでしたね。その当時はすみませんでした(笑)

藤井さん:
私は初めてお会いした時、実際に建設に携わっていた方がSaaSに取り組むパターンは珍しいなと感じていました。IT・SaaSのバックグラウンドを持つ方がレガシー産業に挑戦し、現場がわからず結果的に躓くことは多いのですが、この会社なら業界の知見不足で判断に迷うことはないだろう、という安心感がありました。その他だと、取り組んでいる事業領域が旧態依然としておりDXの余地が大きい点にも注目していました。

井上:
投資家の方の中には、SaaS事業とコンサルティング事業はそれぞれ相反する概念であり、並行して取り組んでいるとリソースが分散されると判断される方もいるのですが、そういった点は気になりませんでしたか?

藤井さん:
特に気になりませんでしたね。むしろ、コンサルティングで深く現場に関わっているからこそ、SaaSに活かせるノウハウを獲得出来たと考えています。どちらかに集中すべきであるという考え方は、リソースの分散やマネジメントの難易度を高めることに繋がるからだと思いますが、そういった考え方の違い等も関係なく包括して巻き込んでいくような”夢を語る力”を井上さんからは感じていました。

井上:
そのように受け取ってくださっていて嬉しいです。いまのビジネスモデルを考えていた時も、工事の内容を理解した設備の専門家、コンサルティング、SaaSの開発の3つのファンクションが1つの会社に共存していることが重要だと考えていました。

THIRD井上

藤井さん:
不動産業務に関連するマーケットにおいてSIerの牙城が崩れないのは、現場の実務がIT技術と乖離しており、現場業務ではなくITテクノロジーに合わせた業務フローが定着したこと大きな理由がだと捉えています。なので、ITテクノロジーで直接解決出来ない部分は、どうしても人力でカバーするようになってしまうんですよね。現在ではPCが苦手な方の五感に合わせた操作を実現するよう、IT技術が追いついてきたので、技術と現場の知見両方を持つことで適切に事業を伸ばせる素地が整ってきたのではないでしょうか。

井上:
おっしゃる通りです。当社ではR&D部門としてのAI開発部と不動産建築領域のコンストラクションマネジメント事業部が一緒になって、新プロダクトである工事ロイドの立ち上げに取り組んでいます。そこでは、今のITテクノロジーだけで出来る短期的な課題解決に終始しないように気をつけています。従来のITテクノロジーではその業界のペインの本質に切り込めないことが多いんですよね。
 
富永さん:
最初から根本的な課題を解決しにいくって難しいですよね。THIRDのプロダクトで良いなと感じていたポイントの中には、分かりやすい検針から入り込み、そこで圧倒的な結果を出し、第二、第三のステップで、本来攻めたかったテーマまでシームレスにアプローチしている点です。理想を夢見て追いかける熱量と、現実的に地に足をついて進めるバランスが絶妙だと思います。
 
井上:
そこも注目いただいて嬉しいですね。とはいえ、そうやって分解したステップも実際に取り組んでみると本当に様々な壁がありました。それらを愚直に改善してきたことに私たちの執念が現れているかもしれませんね。

様々な期待を背負い、次世代のスタンダードを担う存在へ

井上:
先程夢を描ける・描けないという話をおっしゃっていましたが、THIRDにはどういった印象を受けていましたか?
 
藤井さん:
井上さんのリーダー気質には天性のものを感じていましたよ。求心力があるからこその今の経営チームであり、幅広いバックグラウンドの方を集められる所以であると思っていました。
大桃さんがTHIRDに入社したことからも、様々な人を魅了し率いていく能力は筋金入りだと感じていました。
 
井上:
大桃さんはジャフコでは何を担当していたんですか?
 
大桃:
2016年1月にジャフコに入社し、事業投資部でバイアウト投資に従事していました。投資のフェーズは大きく分けて四つに分けられると言われていますが、ソーシング・エグゼキューション・PMI・イグジットの全てを担当していました。私は小売、卸、ヘルスケア、AI開発等の企業に投資してきました。


THIRD大桃

藤井さん:
正直「なんでこの人バイアウトをやってるんだろうな」と思っていました(笑)というのも、スタートアップのことに当時から詳しかったんですよね。元々銀行に勤めていたという経歴によって判断された配属だと思いますが、本来はバイアウト関連よりも事業を作っていく過程が好きなタイプなんだろうなと。早くベンチャーを支援するチームに異動してきて欲しいと思っていましたね。
 
井上:
確かに、貪欲ですよね、昔から。
 
大桃:
ジャフコでは投資先に対して、スタートアップだからとか、バイアウトだからという考え方ではなく、会社を伸ばすためにどんなことが必要かという発想が強かったので、そこに共感して入社したという経緯はあります。
 
井上:
そこから5年間ほど口説き続けてようやくTHIRDに入社してもらいました。ちなみに、ジャフコ出身の方とこのように出資の話をする機会はありますか?
 
富永さん:
あんまりないですね。
 
藤井さん:
全部がそうだと困りますが、本人のやりたいことであればしょうがないですし、大桃さんに関して言えば、THIRDに移ると聞いて納得の方が大きかったですよ。俯瞰して言えば、スタートアップエコシステムが出来上がってきているということでもあるので、業界的には良いことだと思います。


大桃:
スタートアップへの転職は正直、興味が少なかったのですが、自分のキャリアを重ねた時に、タフな経営チーム、インダストリーの規模やペインの深さを鑑みて、この会社であれば、より大きなチャレンジが出来そうだという期待を持ち入社しました。
 
井上:
夢を見せている立場として、巻き込むだけでなく、巻き込んだ人から受けた期待を超えていくことの責任を改めて感じました。では最後に、投資家のお二人からTHIRDの今後への期待をお聞かせください!
 
藤井さん:
不動産管理業務は建物を保有する上で、必要不可欠な領域であり、たくさんの関係者が絡み合い、構造も課題も複雑化しています。そこがデジタル化されることは、過去に無い全く新しい価値を持つことだと思います。次世代を担うような、業界を牽引する存在になることを願っています。
 
富永さん:
今、THIRDの事業が伸びていつつも、実現したいことに対してはようやく1歩を踏み出した状況でもあると思います。どんな会社でも何かしらの課題を持っているものですが、困難なことに直面してもあきらめずに最後まで実現していって欲しいです。同じ船の仲間として、それをサポート出来るように尽力したいと思います。
 
井上:
心強い言葉をありがとうございます。今後ともどうぞよろしくお願いします!



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