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ビジネスケアラーの「ドリルと穴」
顧客が欲しいのはドリルではなく穴、という話
先日ハンズに行きまして、東急ではなくなっているし、手のロゴでもないことを思い出しました。さみしい気持ちになりましたね。
ついでに思い出したのが「顧客が欲しいのはドリルではなく"穴"」という話。
何かを売る人、売り物を作る人であれば一度は聞いたことがあるでしょう。
顧客が製品やサービスを購入する理由は、その製品自体ではなく、製品を通じて達成したい目的や得られる利益にあるという考え方です。
ドリルは手段であり、顧客が求めているのはその手段によって生まれる穴(目的)である。
目的に注目するべきだ、と。
もっとも、ガジェット好きの私のようにドリル自体が目的になる人もいますし、顧客が気づいていない体験を提示して新しい市場生み出したドリルもあります。
スマホとかはドリルかつ穴になりました。
多様な価値観を持った顧客の、目的に繋がる過程や感情も重視されるようになって…
と、現代のドリルと穴の関係はちょっと複雑に見えます。
複雑な世の中になりましたが、だからといってドリルと穴の話を「古い」とバカにしていいわけではありません。
時々思い出しています。
ビジネスケアラーの「ドリルと穴」のこれまで
さて、私は「仕事と介護の両立」をするビジネスケアラーと、その予備軍である多くの現役世代をサポートする仕事をしています。
この分野、人口動態からして今ちょうど変化が起こるタイミングで、少子高齢化に伴う2025年問題の一つとして盛り上がっております。
これまで私のような一部のマニア以外には見向きもされなかった市場です。
困っている人は多いので、全体が盛り上がって手に取れるサービスが増えるのは良いことだと思います。
ただ、市場として歴史が浅いのでまだドリルの話ばかりしていて、危ういところがあります。
ちょうど新しいドリルが出るのでその話題ばかりになり、それぞれの人が求める「穴」が何か忘れられそうな感じ。
Switch2が出るとプレステの話が減り、みんなスマホゲームやってるけどそれは話題にもならず、そもそもゲーム以外にも楽しいことあるけどな…みたいな?
この4月に出る新しいドリルは、育児介護休業法改正に伴う法定の支援制度です。
注釈まで読み込んで関係者全員が「正しく」利用できたとしたら、辞めないで済む可能性を高める、高性能ドリル、この春にバージョンアップしてリリース。
ギリギリで苦しむ人のセーフティネットとして大事な道具の一つです。
ただ、元々「労働者の休む権利を守る」目的の法律ですから、パッと見のメッセージは「休んでいい」が一番大きく目につきます。
それが、理屈の正しさとは無関係の、人の心の受け止め方。
制度「だけ」では効果が限定されてしまう理由は、いつもこれです。
「お上のお触れ」である制度は、そもそも個々の気持ちに寄り添うものではなく、最大多数の最大幸福を最優先にしなければならないのでしかたないです。制度自体の誤りではありません。
介護離職した人の方が法定制度の認知度は高かったという逆説的な話も…こわ…
これからのドリル達
仕事と介護の両立に関わる課題は幅広く、他にもいろんな制度、サービス、支援者が関わります。
いろんな形のドリルがたくさん。
ただ、それぞれ、ドリルとしての限界があります。
私の場合は、介護知識をベースにして、従業員が働くサポートをする仕事。
他の資格の範囲に触れられず、企業の利益を阻害してはいけない、という制限があります。
なので、保険とか相続の話は具体的にはできませんし、従業員の転職をすすめたりはできません。
個人単位ではどれも選択肢に入るはずですが、その提案はできません。
同じように、法定制度は管轄省庁ごとの権限の範囲に縛られたドリルですし、介護保険サービスは一義的には「親のため」のドリルです。
企業内の担当の方はあくまで社内の話に限られますし、その他に関わる各資格職には私と同じ制限があります。
専門知の盲目さについてはこちらの説明が分かりやすかったです。専門性だけでなく事業形態や職務範囲など含むドリル側の制限の話だと思いました。
自分の依拠している学術的概念・理論に「盲目的」になるがゆえに、それ以外が「みえなくなる」。あるいは、自分以外の世界に「非寛容」になる。
そして、全ての資格を持っていたとしても、そもそも他人の家の話ですから、契約無しに踏み込むモグリの医者みたいなことは誰にもできません。
神の視点で自由に発言できるのは、実は、どこにも責任を持っていない人だけなんですよね。
「私のこうした立場で、こういった面を見ると、こう言える」
これが専門職のあり方だと思っています。
この分野にブラックジャックはいないので、何でもわかる感じに見えるとしたらよほど凄腕の占い師か、多分ほんとに神様。
どちらにしても会ってみたいので、いたら教えてください。
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ドリルの話でした。
ちなみにそれぞれの性能は、同じドリルの間でしか比較できません。鉄板用と木材用で比較してもあんまり意味がありませんね…
我々ドリル一同が穴を開けようとしているのは、複雑で分厚い壁です。
場所や進捗によってドリルを使い分けて、全ドリルの力を合わせるつもりじゃないと穴は開かないんじゃないかと。
100人100通りどころではない「人それぞれ」
では、ビジネスケアラー(予備軍)にとっての「穴」は何でしょうか。
人それぞれと言えばその通りです。
私が相談を受ける時は、「人それぞれ」の前提条件を確認するためにいくつか伺う項目があります。
年齢や家族構成、親との距離とか、そういった最低限の簡易分類を掛け算しただけで36,840通りになりました。
前提条件でそれだけあり、そこに困りごとのジャンルで130カテゴリぐらい、進行状況で6フェーズぐらいあります。私がなんとなく分けただけでそのぐらい。
さらに本人と親御さんと他の関係者の性格や情報の受け止め具合なんかを探りながら、無限の選択肢から本人が手に取れる解決策を探す、骨の折れる作業です。
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多分2000回はロジックツリーを書いて、現実の相談を元に毎日無数のシミュレーションをしてきました。
が、全体像は平面どころか人間の脳で知覚できるイメージはないな、といまだに泣きながらやっています。
セミナーでは高齢者介護に限って話しますが、相談には、大人になったきょうだい児とか、65歳未満の配偶者の病気とか、子供のケアとか、介護は関係ない高齢者の消費者トラブルとかもありますし。
愚痴になってしまいましたが…一生懸命やっているのでたまにはご容赦ください。
そんな、十人十色や100人100通りどころでは済まない個別性に、どれか「一つのドリル」で対応できるわけがありません。
いろんな当事者の立場といろんな専門性が必要だという気持ちから、「全国ビジネスケアラー会議」という集まりもやっており、毎回400名以参加されて24回まで続いています。
出てくださった方、見てくださった方、ありがとうございます。
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ビジネスケアラーにとって開けたい「穴」は?
人それぞれです。
ただ、相談を受ける専門職としては、それを前提としつつもある程度何を目指したらいいのかは持っていないといけません。
誰にでも合う解決策は無いけれど、「人それぞれ」で思考停止するのもダメ。
難しい匙加減ですね。
少なくとも、親の介護で離職するのはたいてい嫌だというのはわかっています。
はっきりしているのは、親の介護があろうがなかろうが、それぞれの方が自分の望む働き方・暮らし方ができるのがいいはず、ぐらいでしょうか。
あとは、休む「だけ」では離職が減らないこと、リモートワークは両立を楽にはしないこと、制度だけではどうやっても人間の暮らしをカバーできないこと、一番ネックになるのは「親の介護を家族がやるべき」という価値観やそれによる罪悪感だということ。あたりの各論も結果が出ています。
これまで苦しんだ方の事実からわかった結果は大事に、きちんと覚えていたいと思います。
ただ、やっぱりそれぞれの人がどうしたいのかは本人の側にしかありませんね。
高齢の親御さんにすごく思い入れや恩があってどうしても介護してあげたいという人も1割ぐらいいますし、逆に一切関わりたくない人も3割ぐらいいます。
あ、この割合は日本全体ではなく、会社で持っている現役世代ビジネスパーソン10万人のデータと、4000世帯ぐらいの私が直接関わった範囲に限った話です。
ビジネスケアラーやその予備軍の方自身がどう働き、どう暮らしていきたいか。
それに合わせて必要なサポートを届けようと思いますが、続きはまた。
介護のためにどうするかではなく「自分がどうしたいか」を思い出すための手順はこちらに。
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法改正の内容はこちら。
国産高性能ドリルの公式解説が15分(倍速7分)でOKとのこと。とても親切です。
大事な考え方はこちらにも
長かったですね。気をつけます。