水粒(落ちて割れる)

雨が降って、屋根に溜まる。
息をつく間も無く溜まり続ける。
屋根は、やがて水粒を地面に落とす。
地面に到達して破裂する水粒。
大きな音も鳴らない。
数が多くて、一つの水粒なんて気にしてられない。
一瞬、瞬きするだけで、目に入らない水粒が地面に落とされ、割れていっている。

飛び降り自殺。
時折目に入る、小学生が、中学生が、高校生が、大人が。
彼ら彼女らは水粒だ。
息をつく間も無く溜まり続ける生きづらさ、不安、憎しみ、ストレス、劣等感。
いつまでも溜め込めるはずはなく、やがて落ちてしまう。
地面に到達して破裂する水粒。
大きな影響もない。
誰も一つ一つの飛び降り自殺なんて気にしてない。
一日、過ごしている間にも、目の届かない人間が地面に落ち、割れていっている。

ただ、二つだけ水粒と飛び降り自殺の違いがある。
一つは、多くの人の目に入る所で行われた飛び降り自殺は写真や動画を撮られ、一時の話題作りに使われ、インターネットに投げ込まれるという所だ。
求めてもいない偽善や嫌悪感を浴びせられ、世間はそこにもう存在していない人間の痕跡に夢中になる。
そういう意味では誰も一人一人の人間には興味もなにも無い。

二つ目は、人間には責任があるということ。
繋がりがあるということ。
関心を持っている人がいるということ。

連鎖する地獄が続いている。
もう断ち切る術もない。
出来ることは、屋根に溜まった水を少しでも掬ってあげることだ。

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