ものづくりの企業の現場とは?
前回までは芸大生から帽子卸の会社に入社するまでの話でした。
会社の企画という仕事
大学を卒業して初めて正社員で働くものづくりの現場。
帽子という専門的な場所で服飾専門学校卒の人たちに交じって入社。
同期は19歳の服飾専門学校生と服飾専門上がりの23歳。
その時私は25歳。笑
私はとにかくミシンで帽子を縫製したかった。
どちらかというと職人希望。
ただ、私はPCを使ってデザインできるということで、illustratorというソフトでデザイン画を作るという役割を与えられました。
しかも自分しかPCを触れない。
営業全員の仕事は一気に自分に集中・・・・。
毎日120%の力を出して働いておりました。
帰る頃には吐き気がするほどクタクタ。
サービス残業。帰るのは22~23時。
朝は7時の電車。の毎日でした。
PCの仕事の合間にミシンをして、残業中は縫製の練習したり。
とにかく縫いたい。作りたい。
デジタルではなく、アナログな仕事をしたい。
そのためにPCを仕事を120%の速さで全力でした。w
入社して6ヶ月で企画の先輩が全員辞めた。
衝撃的でした。
新入社員が入ってくるのは待っていたかのように、
先輩全員と、同期1人が辞めました・・・。
そして残ったのは私と19歳の子の2人だけ。
お先真っ暗だと思ったし、どうやら人の出入りが激しい会社のようだ。
私は働いていた間に何人もの人の入れ替わりがあった。
この頃のクライアントは大手企業が多かった。
ゴルフブランドなどのスポーツ系もあれば、
大手スーパー系、
大手アパレル系、
帽子の老舗ブランド、
先輩がいなくなったことは大変だったけど、逆にそのおかげで
いろんな仕事をいきなりさせてもらえて、今の自分を作り上げているのは
その経験も大きい。今となっては感謝です!
仕事の内容はとてもやりがいがあったし、毎日残業しながらでも
しんどいな~って言える仲間と働けるのは楽しかった。
帽子を作るだけでなく、いろんな経験をさせてもらったのだけど、
中国の生産会社とのやりとり
これがかなり苦労しました。
プリント色の指示も、PANTONEを使って指定しているのに
原色の赤と、ワインレッドが同じ色だと言われた時は
お手上げでした。全然指示通りにサンプルを上げてくれない。
日本人は本当に真面目で繊細な仕事をしてくれるなぁとこの時に思い知りました。今はきっと中国生産も質が良くなっていると思いますが、
この頃は中国からのサンプルが届くと、開けるのが怖かったです・・・。笑
好きな仕事なんだから、残業もできるやろ。
勤務中ではなく、休みの日にリサーチして来い。
これ、営業さんによく言われました。。。
会社の社長にもよく言われました。
好きな仕事という楽しさは確かにある。
でも、残業も休みの日のリサーチも強制されるものではないはず。
これは逃げ恥風に言うなら、「好きの搾取」である。
この言葉にはいつも違和感を覚えた。
特に私はプライベートな時間でアイデアを思いつくことが多かった。
友達と遊んでいる間、旅行しているふとした風景、本屋でなんとなく
好きそうな本を漁っている時など。
なので、休みの日まで仕事のことを考えると逆に非効率なのです。
机に向かってなんとかアイデアを絞っている時ほど、良いものは生まれない。
思いつかない時はその場から離れて、全然違うことをするのが一番いい。
全然関係ない分野の仕事をしている人と話したりしている時にも
急に降ってくるアイデアはよくあるもの。
ものづくりの現場は想像以上に大変でしたが、
そんなこと入って間もない私がやってもいいんですか?
というような仕事もさせてもらい、常に第一線だったのはすごい経験だったと思う。
デザインしたものが次々と世の中に並んでいくのは楽しかったし、
なんだか不思議でした。
ただ、
もっと一つの帽子にこだわって時間をかけて作りたいという思いは常にありました。
この思いが後に修行させてもらう帽子デザイナーさんに繋がるんだと
思っています。