
「1月アノマリー」で読む2025年米国株:最初の5日間ルールが示す可能性
米国株投資を愛するTTTである。
年が変わると同時に、私の目は相場に向く。 投資家としてそれなりの年月を重ねてきたが、年初の空気は独特だ。 不確実性と期待、両方の感情が入り混じるこの時期の相場動向は、やはり無視できない。
1月アノマリーと呼ばれる現象は、昔から投資家の注目を集めてきた。 特に「最初の5日間ルール」や「1月効果」は、統計的にも興味深い傾向を示している。
ここでは、1月アノマリーの概要と背景、そして2025年の最初の5日間の結果が示す意味を、過去のデータを交えて整理する。 私の経験も踏まえつつ、多くの人々にとっての投資判断の一助になれば幸いである。
1月アノマリーとは何か
まずは1月アノマリーの概要を押さえておきたい。 大きく分けると「最初の5日間ルール」と「1月効果」の2つに要約される。
1つ目の最初の5日間ルールは、S&P500が年明け最初の5営業日で上昇すると、その年全体のパフォーマンスも上向きになりやすいという経験則だ。 1950年から2024年までの75年間のデータでは、最初の5日間がプラスだったのは48回で64%、その年年間でも上昇したのは40回、つまり83.3%ほどの確率で年間のプラスに移行したことが確認されている。
2つ目の1月効果は、小型株が年初に強い動きを見せる傾向を指す。 年末に税金対策などで売りが出やすくなった銘柄が新年に再度買い戻され、新規資金が流れ込みやすいタイミングでもある。 それに加えて、投資家が新年に抱くポジティブな心理が小型株への買い意欲を後押しすることも多い。
こうしたアノマリーが比較的当たる確率を高めている要因として、アノマリーを期待してトレードを行う投資家が増えている点が挙げられる。 多くの人が同じタイミングで「最初の5日間が上がるなら買っておこう」「1月は小型株が伸びるだろう」と考えれば、その買い需要自体が相場の動きに影響し、結果としてアノマリーをさらに強めるというわけだ。
このように、1月は特殊な季節要因と投資家心理が組み合わさることで、市場が通常とは違う動きを見せると言われている。 相場の世界では偶然の要素も多いが、ここまで長い期間にわたり類似の傾向が観測されるのは興味深い事実である。
過去のデータが示すもの
私がここまで強調している最初の5日間ルールには、以下のデータがある。
1950年から2024年までの75年間のうち、最初の5日間でS&P500が上昇した回数:48回(64%)
その48回のうち年間でも上昇した年:40回(約83.3%)
代表的な例としては、2003年に1月最初の5日間で約3%の上昇を記録し、その後の年間リターンが26%に達したケースがある。これはITバブル崩壊後の回復期で、楽観的な投資家心理が強く作用した。
また、2019年も最初の5日間で1.3%上昇し、年間リターンは約29%を記録している。前年末の調整局面からの反発で投資家心理が改善し、結果として非常に好調な一年になった。
また、1月効果の具体的な事例として、1979年から2022年の44年間で、感謝祭直前の火曜日に小型株を購入し、年明けの立会2日目まで保有した場合、77%の確率で利益を上げたとの報告がある(media.rakuten-secnet)。
もっとも、別の分析では時価総額が小さいS&P400(中型株)指数では「1月効果」は2010年代のみ見られ、さらに時価総額が小さいS&P600(小型株)指数では「1月効果」は確認できず、現在では1月効果はほぼ消滅してしまったのではないか、という意見も見られる。(pictet.co.jp)
したがって、これらのアノマリーは絶対的なものではない。 何度か外れた例もあり、過度に期待して無防備に突っ込むのはリスクが大きい。
例えば、2008年のリーマンショックや2020年のCOVID-19パンデミックのような特殊なケースでは、最初の5日間ルールが当てはまらなかった。2008年は年初から下落トレンドであったし、2020年は年初こそパフォーマンスが良好だったものの、その後のコロナ・パンデミックで市場が急落してしまった。
このように、予測不能な要因が重なると、1月アノマリーが通用しない局面も現れることを忘れてはならない。相場は地政学リスクや金融政策、さらには企業の業績見通しなど、数多くの変動要因が絡み合って動くからだ。
ちなみに、私の長い米国株の経験からすると、最初の5日間ルールと一月効果では、やはり前者、最初の5日間ルールの方が現在も継続して有効なアノマリーではないかと感じている。
2025年の1月が示すもの
そして、いよいよ2025年の最初の5日間についてだ。 S&P500は+0.6%の上昇でスタートを切った。 大幅な伸びとは言いづらいが、エネルギーや金融など景気に敏感なセクターが堅調で、テクノロジーはやや様子見の横ばいといった印象だった。
また、2025年1月全体の米国株式市場は、主要3指数(ダウ平均、S&P500、ナスダック総合)が揃って上昇し、プラスで終えた。月初からクルーズなどのレジャー関連、ハイテク株、電力株が市場を牽引し、堅調な動きを見せてた。1月27日のDeep Seekショックがなければ、もっと良いパフォーマンスだっただろう。
総じて、今年1月はプラスで始まっている点から、過去の統計に照らし合わせれば「その年も上昇する可能性が高い」と言える。 一方で、市場を特に牽引しているのはビッグテックに限るという状況は昨年から相変わらずで、まだまだ控えている各企業の決算発表の行方や地政学リスクなど、不透明要因も多い。
2024年後半から続くインフレの減速が本当に持続するのか、FRBの金融政策がどう変化していくのか。 これらのポイントも市場のセンチメントを大きく左右するため、2025年の行方を単純に1月アノマリーだけで語るわけにはいかない。
現在のS&P500のPERは歴史的に見て高い水準にあり(22倍以上)、ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイが保有株を大量に手放し、キャッシュポジションを確保しているという報道が入るなど、市場にはやや警戒感も出始めているからだ。
投資家が注目すべきポイントとリスク管理
さらに、3月頃までは米企業の決算ラッシュが続く。 決算の数字次第では、たとえスタートがプラスでも失望売りが発生し、あっさりと相場環境が変わることがある。 短期的なアノマリーだけで一喜一憂しないというスタンスは、冷静な投資判断を下すうえで欠かせない。
もう一つ強調したいのは、投資対象のファンダメンタルをしっかり見極めることだ。 特に小型株の動きが強いときには、実力のある企業とそうでない企業との間で値動きがごちゃ混ぜになることがある。 安易に指数のアノマリーに従って個別株に手を出すと、思わぬリスクを増やす可能性がある。
私自身、長い投資生活の中で強気相場に踊らされて痛い目を見たことがある。「大勢が楽観的になったときほど冷静さを失いやすい」のが相場の世界だ。自分なりの損切りラインや利益確定ラインを決めておくこと、さらには資産配分を見直すことも大切だ。
まとめ
1月アノマリーは、投資家にとって年初の潮目を計る重要なサインである。 過去のデータによれば、最初の5日間や1月全体でプラスを示せばその年は上昇傾向になりやすいし、小型株が強い動きを見せることも多い。そして、今年2025年はそのパターンに当てはまった。
一方で、世の中には常に変動要因があり、アノマリーに反する動きも決して珍しくはない。 インフレ動向や金融政策、さらには世界の政治・経済情勢といった要素が、相場を激変させるケースもある。
私が考えるに、過去のデータを参考にするのは有益である。 しかし、それだけに固執せず、企業のファンダメンタルや自分のリスク許容度をしっかり把握したうえで投資判断を下す必要がある。 アノマリーを活用するならば、常に「例外」が起きる可能性を頭の片隅に置きつつ、想定する期待値を頭に入れながら慎重に資金を投下していこう。
投資は常に自己責任だ。 1月アノマリーに注目するのも、そこから得られるヒントを生かすのも自分次第である。 それでも、人生において資産をどう活用し、どのように運用していくかは重要なテーマだ。 データと経験を組み合わせ、2025年も賢く相場を乗りこなしていこう。