9人に1人?無知の知
今年に入り嬉しくないくじに当たった。世の中の出来事には関心を寄せていたが、自らの健康に関して特に問題はないと過信していた。がん家系でいずれは自分自身も60前後で何らかのがんを発症するのだろうとまだ先の事として捉えていた。
日本で乳がん患者は年々増加しており、今では女性の9人に1人がかかる病気となった。また女性特有の病気だが、まれに男性もわずらう可能性がある事は知識としてあったほうが良いだろう。(乳がん患者全体の1割)
私の身近で乳がんを患った者はおらず自分には関係ない事だろうと病気に対する知識がなかった。ピンクリボン=乳がん、その程度であった。胸の位置が左右非対称に変わったと気づいた時、特に痛みがなかった為、こんな事で病院に行くほどでもないと軽く考えて放置していた。片胸だけ張ってる感じがしたり胸が下を向いている事も違和感としてあった。去年のまだ暑い頃だった。早期発見が何より重要だったにも関わらずあまりにも無知であった。それから半年以上が経過した今年の冬、明らかに硬い異物に手が触れた。動揺して何度も触って確かめた。まさかが恐怖に変わりネットで検索するとそれらの症状は乳がんとピッタリだった。痛い検査は避けたかった為、無痛のMRI検診を受けようと思ったが症状があるのなら痛みを覚悟で直接医療機関に行くよう問い合わせ先から勧められた。気が動転していた。
問診&触診→マンモグラフィ→エコー→針生検(局部麻酔をして細胞を取り出す検査)を受けた。予想していた通りマンモグラフィは胸を押しつぶされ痛かった。生検を受ける覚悟はしていたが怖くて仕方なかった。優しいクリニックの方々に救われた。触診なんて屈辱的だと思っていたが、そんな事を考えるような状況ではなかった。一通りの検査を終えた後に私が置かれているステージは何か医師に尋ねたところ恐らくステージ2と返答された。そして手術だけではなく他の治療も必要なことを伝えられた。自ら望んで聞いて知りたかった事にも関わらず泣きながら自宅に戻った。1週間後に詳しい検査結果が伝えられ更に詳しい検査と治療を受ける為病院へ転移した。転移先の主治医より私のがんは進行性の速いタイプで完治するまでに10年を要する事を告げられた。そして私がAYA世代(15-39)であり専門スタッフによる生殖機能温存サポートを受けられる事を教わった。
まずは卵子凍結をするか否か考えなければならなかった。結論が出ない私に主治医は迷っているのであれば卵子凍結をしておきましょうか?と聞いてくれた。不自然な形で今後妊娠する可能性を失いたくなかったが、痛い思いをしたくなかった為答えが出ずにいた。するのなら1日でも早いほうが良いと改めて言われ自分のがんの増殖と進行スピードが思っているより早いのだろうと再認識した。サポートチームの医師より卵子凍結をするメリットとデメリットの説明を受けた際どうしても子供を欲しいという強い想いがない限り卵子凍結はおすすめしないというアドバイスをもらった。1人で抱え込んでいたが周囲に相談しよく考えた結果、私は卵子凍結をしない事を選択した。
その理由は…
①現在パートナーがいないため
②乳がんの治療と長年向き合わなければならないため
③私の場合術後5年以内に再発や転移する確率が高いため
④今後パートナーが出来る保証はなく抗がん剤治療後に止まった生理が戻ってこない確率が高いため。究極の選択は体外受精と代理出産だろうがそこまでして子供を欲しいと強く思わないため
⑤高齢出産による母体へのリスクと障害児が産まれてくるリスクが高いという事実と今後の自らの体力と精神的な不安があったため
現状の乳がん検診は痛みを伴うマンモグラフィを用いての受診のため思い当たる症状がない限りまだまだ検診を避けている人は多いのではないだろうか?乳がんを患ってしまったから言えることだが、もし症状がなく検診をして何もなかったらそれは運が良かったと思えばいいと思う。痛い思いをして損をしたと思うのではなく。治療の方がマンモグラフィと比較出来ないくらい大変だから。
昔に比べ若者の人口は減少しているが、若年層のがん患者は年々増加している事実がある。無痛のMRI検診なら若者も乳がん検診をしてみようと思えるのではないだろうか?もし国や自治体がこれを推奨するようになれば検診者数は増え少しでも乳がんを早い段階で見つける手助けになるのではないだろうか?