【お悩み相談 裏回答… 002】「夫の気にくわない話 うまく相談するには」
相談
40代、会社員の女性。実家の家業を継ぎたいことを夫に切り出せず、悩んでいます。父が興した会社は跡取りがおらず、部下だった人に社長をやってもらっていました。ところがその方が近々辞めたいと考えていて、父はできれば誰かに継いでもらいたいと考えているようです。どうせ誰かのために働くのなら、何の情も湧かない今の会社や上司より、育ててくれた実の親の役に立ちたい。
しかし短気な夫にどう相談を切り出せばいいのか、迷っています。今の自宅と実家は遠く、継ぐなら今の家族とは別居になります。夫に言えば、きっと話を曲解して怒り、ろくに聞いてくれないことは目に見えています。必ず夫の逆鱗(げきりん)に触れる話題ですが、なるべく冷静、円満に話し合うにはどうすればいいでしょうか。
※本裏回答は、下記に記した方針で勝手に回答した記事となっています。リンク元のサイトとは関係ありません。リンク元サイトの回答に敬意を表した上での、裏回答です。ご了承ください。
短気な夫
このご時世、男と言っても、いろんなタイプが存在します。わがまま、単なるバカ、子供みたい、ナヨナヨしている、彫像のように微塵も動かない、「世の中には、2種類の男しかいない。俺か、俺以外か」と鏡に向かってつぶやいている、朝トイレに入ったら2時間出てこない、などなど、男を形容する言葉も、多様化を極める一方です。
その中で、「短気な夫」とシンプルに形容される、この絶大なる存在感。昭和という時代が、かび臭い「過去」に属し始めた昨今、相当に貴重な存在と思われます。
無論、毎日、そんな男性を相手にされるあなたの苦労は想像を絶します。が、考えてみれば、こう言えばああ言う、と、ほぼ反応が想像できる訳ですから、案外、対策も簡単に違いありません。
正面突破
まず持って、相談者自ら「必ず逆鱗に触れる」と自信を持っておられると言うことは、まあ、一度は、感情が爆発することはしょうがない、と覚悟しておられるということでしょう。こういうときは、その一度の爆発を、できるだけ有効に使うことです。
よくやりがちな失敗は、怒らせまい、と、及び腰で相談を始めてしまい、早速爆発、さらに、さっきは言葉を濁らせてしまった話題の詳細・核心を語ることで、新たな怒りの爆発、「いやいやそうじゃないのお父さん、聞いて」と弁解する言葉も耳に入らず、あとは、逆鱗の連鎖を誘発するばかりで、話を進めるどころではなくなります。
つまり、相手の顔色を見ながら、相手を怒らせそうなネタを小出しにするのではなく、逆に、まず最初に、超弩級の逆鱗を呼び起こす、爆弾のような話題を最初にぶつけ、徐々に、話題をマイルドに持っていく方が賢明です。
例えば、実家の家業をつぐ、と言う話題に持っていく前に、「実は、私、昔から、アザラシを獲る猟師になりたいと思ってたの。今の会社も疲れたし、家族も置いて、来月から、ひとりでカナダはラプラドル州に移住して、幼い頃からの夢を追わせて。ねえ、いいでしょう?」と、告白してみてはいかがでしょうか。
(もしあなたの実家の家業が、まさに、そのアザラシ猟であった場合は、夢は「クアラルンプール郊外を走る電車の車掌さん」でも構いません。)
「お前は気が狂ったのか?」から始まり、逆鱗が降ります。その後、多少の問答を繰り返しつつ、「そうね、今の会社人生が嫌になったからって、ちょっと極端だったかも…」と塩らしくしながら、「でもね、もう一つ幼い頃の夢があって」と続け、ホルムズ海峡を航行する遊覧船でお弁当を売る、ロシアでマトリョーシカの絵付け師になる、かぐや姫のお話をスワヒリ語に訳してアフリカの大地で紙芝居を興行したい、などなど、徐々に旦那さんが感じるハードルを下げていくのです。
「アザラシ猟は、世間的にも残酷だと批判もあるし、あり得ないけど、スワヒリ語版かぐや姫なら、なぁ… でも、一体なんでまたペルペル語じゃ無いんだい?」と旦那さんも徐々に聞く耳を持ってくるでしょう。
そこで、自分の夢のバックグラウンドになっている、自分の生い立ちの話を始め、これまでの人生の棚卸しを旦那さんと一緒に行い、と突然、「ああ、そうだ、自分の夢ばかり追っていてはいけない。そうそうあなた、実は私の実家の家業が廃業になりそうなの… こんな大変な時期に、私ったら、あなたのことや実家のこともほったらかして、自分の夢ばかり追いかけちゃって…」とつぶやくのです。
多少、離れ離れになったところで、Googleでルート検索でも出てこないような海外にいるよりも、なんだ、お前の実家で思い留まっててくれるものなら、まあ良しとするか、と最後は円満にうなずいてくれることでしょう。
相談者さんの真意
とまあ、進めば良いのですが、人生には、どんなに緻密なプランを練ったとしても筋書き通りにいかないこともあるわけで、ここは真面目にPlan Bも考えておきましょう。そのためには、あなたの本当の気持ち、も深掘りする必要がありそうです。
察するに、あなたは、相談と言いながら、ほぼ「家業を継ぐ」ことをご自身の中で既定路線とされています。また、「継ぐなら今の家族とは別居」と、これもまた、相手の意向も家族の意向も聞かずに断定。「今の」と形容すると言うことは、心のどこかで「将来の家族」と言う違う家族構成すら夢想しているのでは、と下世話な詮索すらしたくなります…
つまり、「相談したい」、「冷静、円満に話し合う」、と言いながら、ほぼ自らの結論ありきで、あとは、どう黙って有無を言わせず「分かりました」と言わせるか、と策を練っていると思われます。
そのこと自体を悪く言っている訳ではありません。したたかな世の奥様方の生きていく上での知恵です。それよりも注目すべきなのは、もしかすると、あなたの自慢の旦那さんの方が、輪をかけて「実は、うちの嫁は、ほんと短気でね。僕に、物事相談する前から大体なんでも結論決めちゃってんだよね…」と日頃、周囲にこぼしている可能性があるということです(新聞の相談コーナーに、見覚えのあるペンネームで、そのような相談事がないか、検索して見た方が良いかもしれません)。
つまり、相手の短気は、実は自分の短気がうつったものだった、という訳です…
似たもの夫婦
なんという悲劇=喜劇でしょう。でも、これが世の大半の夫婦の間で起こっている事実なのです。ミイラ取りがミイラになるとも。
心配は入りません。ここまでわかったなら、あとは簡単。自分の性格・行いが、いずれ相手に投影されていくわけですから、将来あなたが旦那さんに行って欲しいことを、これからせっせと行っていけば良いのです。
つまり、何かにつけ「ねぇ、あなたはどうしたいの?」と聞き、その回答の内容如何に関わらず、「いいわ、あなたがそうしたいのならそうすればいいじゃない!」と全面的に賛成することを、続けるのです。今度の週末、家族でどこに出かけるか、夕食のデリバリー頼む時のメニュー選び、ズボンを履く際、右足から足を通すか左足からにするか、カレーライスとライスカレーのどちらを正当な呼称とするか、などなど。人生において、時として迫られる数々の重大な決断の局面で、必ず、旦那さんの意思を尋ね、なぜそうしたいのか理由を深掘りし、彼のこれまでの人生を振り返りつつ、「私はあなたの選択を全面的に支持します」と背中を押すのです。
数年それを繰り返すことで、ある日あなたが「ところで、私の実家の家業が…」と語り始めた瞬間、「それは君の考える通りにすべきだよ」と話が終わらないうちから賛成してくれること間違いありません。
短気決戦ではなく短期決戦を望むのなら
とはいえ、これも多少時間がかかることは事実です。相談者さんが、短気で、その手続きが待てないということであれば、文字通りの相談、つまり、実家の家業の後継がいなくて困っているが、どう思うか、と、家業の過去10年分の財務諸表と後継者候補に関する調査報告書、現地のマーケット状況分析を提示した上で、第三者としての意見を伺ってみるしか無いでしょう。
後継候補者に、今後の事業運営の提案をさせておき、さらに、あなた自身の考える、緻密に計算し尽くされた中長期経営計画を提示、それぞれ、1時間以内のプレゼンテーションをすることで、「ああ、やはり後継者は君しかいないようだね。」と、冷静に、円満に賛同してくれることでしょう。