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動物カフェと生物多様性の保全

ネコカフェに代表されるような動物とふれあうカフェ、日本ではとてもポピュラーです。

この点に焦点を当てて、香港大学のTimothy Bonebrake博士の研究者チームが、動物カフェと生物多様性保全の関連性を分析しました。この研究を推進したテイムさんは私たちの共同研究者でもあり、この論文については以前に聞いていたのですが、とても興味深く、考えさせられる内容です。

McMillan, Dingle C., Allcock J.A. & Bonebrake T.C. (2020) Exotic animal cafes are increasingly home to threatened biodiversity. Conservation Letters e12760. 

この論文の結果によると、日本はダントツでネコカフェの数が多い国です。また、ネコカフェの増加を追いかけるように、鳥や爬虫類や哺乳類とふれあえる動物カフェの数も急増しています。

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日本は世界最大の外来ペット所有国で、特に、爬虫類ペットの最大消費者です(Auliya et al. 2016)。

アンユージュアルな生物種に関する日本人の興味が、多様な動物カフェの急増に反映されていると、この論文は指摘しています。

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そして、動物カフェで扱われている動物には、希少な絶滅危惧種も数多く含まれていることが明らかになりました。

カフェで飼育されている252種のうち、247 種(97%)が国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストに記載されている種です。特に、絶滅寸前種(CR)や絶滅危惧種 (EN)や危急種種 (VU)や準絶滅危惧 (NT)としてリストされているのが41種もある、というのは驚くべき結果です。

さらに、ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)で国際取引が規制されている種(CITESにリストされている種)は、158種に上ります。動物カフェの60%以上の種が、国際的な取引が規制されている野生生物でした。

これらの分析結果から、動物カフェの増加と、絶滅が懸念されている希少な野生生物の国際取引問題との潜在的な関連性を、この論文は指摘しています。

論文の著者らは、動物カフェの存在価値についても考察しており、現状の分析からは、動物カフェの存在意義は、ネガテイブでも、中立でも、ポジテイブでもないとしています。なぜなら、カフェでの動物との触れ合いは、生物多様性に関する教育効果もあり、野生生物の保全に関する意識を高めることにつながる可能性もあるからです。しかし、動物カフェは他にもいくつもの考えるべき問題があることも指摘されています。例えば、カフェで飼育されている動物の福祉問題(最終的にどのようにケアされるのか)、カフェで飼育されている動物が逃げ出して外来種問題になるリスク、感染症のリスクなどです。

いずれにしても、カフェで扱われる生物については、特に希少種を扱うことについてはより詳細な分析に基づいた対策が必要で、生物多様性保全の観点から動物カフェを見つめ直すことが重要でしょう。

追記1)この論文では最初に、動物カフェを生物多様性の保全問題として一般化するため、動物カフェ問題の枠組みを示しています。動物カフェの存在が、野生生物をペットにするニーズを生んで、野生生物の国際取引を助長し、自然界の種個体群の衰退に波及するといったネガテイブプロセスがあり、その一方で、動物カフェの教育的な効果もありうるというものです。しかし、分析結果を見ると、動物カフェ問題は、日本独特の問題であることが明白で、ポジテイブな効果で動物カフェの存在が中立化される可能性は低いと思います。日本特有な動物カフェの増大と多様化の要因を、日本人のペットに関する意識やペット市場の観点からも分析する必要があるのでしょう。

追記2)以下の続編の記事もご覧ください。

参考文献

Auliya et al. 2016. Trade in live reptiles, its impact on wild populations, and the role of the European market. Biological Conservation 204: 103–119.





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