灰色の空でのキャラバンと全て包み込む白神山地とミッションサバイバーの話
連休は新幹線に乗って一路秋田へ。
能代市二ツ井中央公園で開催された高橋優主催の野外音楽フェス「秋田CARAVAN MUSIC FES 2024」の二日目に行ってきました。秋田でえびちゅうさんが出演されるということで、いても立ってもいられなかったのです。
■秋田CARAVAN MUSIC FESとは
このフェスは秋田キャラバンとタイトルに入っているとおり、一年ごとに開催地を変えて、高橋優の出身地である秋田県の全ての市を回るというプロジェクト。ことしは7年目で7市目・能代市での開催となりました。県内には現在13市ありますので、ちょうど折り返しですね。
いままでアイドルさんとして参加したのは、開催初年度のチームしゃちほこ(当時)のみ。しゃちと高橋優はレーベルメイトだったそうです。
秋田経済研究所による2019年のレポートですが、秋田県内の毎年の代表的な音楽イベントとして「男鹿ナマハゲロックフェスティバル」「アキタミュージックフェスティバル」に並んで、この「秋田CARAVAN MUSIC FES」と「私立恵比寿中学秋田分校」の4つが挙げられています。
加えて、高橋優は2015年に「あきた音楽大使」に、えびちゅうさんは2019年に「あきた美の国ガールズ」に任命されて、それぞれ活動を続けています。
だので、えびちゅうさんと高橋優は、音楽を通して秋田を盛り上げる仲間として一緒の舞台に出ることになったのではないかなと。長年にわたる秋田分校の開催を通じてこういった繋がりが出来たのであれば、それはとてもうれしいこと。分校で長らくみんなさんが取り組み訴えてきたものは、絶対に正しいものであると思うのです。
では、以下は参加リポです。
いろいろありましたのでちょっと情けない形になりますよー。
■前日に出発
だれにもバレないようにこっそり千葉を出発。
世の中は三連休で、東京駅はえらい混雑。超特急こまち号も8分遅れて出発。
北上するごとに強くなる雨。回復運転につとめていたこまち号も、盛岡駅以降は対抗電車との待ち合わせや徐行運転のため更に遅れてゆく。秋田駅に到着してみると113分の遅れ。─あと7分遅れれば運賃が払い戻しになったのに─とかそんなこと1ミリたりとも考えず、運行のため尽力してくれた新幹線クルーや各所駅員さん、指令センター?などに感謝の念を贈る。えい!
OPAのビルに「ファミリーの皆様おかえりなさい」の懸垂幕は無し。駅のよこチョのABS局舎の壁にもえびちゅうさんの巨大肖像はありませんでした。うん。2カ月早かった。
寂しいのでALSにて「タマリバ」の巨大ボードを見学。某メンバ様のつい最近に書かれた麗しきサインに出逢えてとても光栄。
いつもお世話になっているアパレルショップ店長さんにもご挨拶。こうして挨拶できる人がいるというのも、なんだか不思議で特別な感覚だ。
夜は飲み屋さん。
■当日!会場まで
朝8時に現地ファミリー仲間たちと合流、秋田空港で別の仲間を拾い、能代方面へ。なかなかの雨。なかなかの遠さ。
前日のフェス初日も雨がひどく、会場の二ツ井中央公園は足元がだいぶぬかるんでいるとの情報。途中でコメリに寄って1000円ほどで長靴購入。…ゴム長なんて履くのは何年ぶりだろう。雪かきボランティアに参加してZIPに取材されたとき以来かしら。
会場付近の道の駅でもうひとり合流。ついでに馬肉チャーシューラーメンで腹ごしらえ。雨は降ったりやんだり。
そして会場着。大盛況だ。すごい人の数。
レインコートとレインボトムス(?)に着替えて入口へ。交換所でムラサキのリストバンドをもらって少しごきげん。
そして…
ほんとうに足の裏の地面が沈み込むのがわかる。泥の粘度が次の一歩を重くする。これは険しい。
泥と戯れるのって何年ぶりだろう。本当に長靴を買ってきてよかった。
そしてぼくはチケットによって指定されたDブロックへ。うん。いちばんうしろ。ステージが遠い。これは厳しい。
足元は「晴れていれば草地だったのかもしれない」といった程度に芝草が見えるくらいで、泥だらけだ。泥しかない。泥の海だ。主催側からビニールシートが配られているのだが、その上に座るのもはばかられる。少しの時間立っていると、いつの間にか足元が地面に沈みこむ。これは辛いぞ。
ちなみに大多数のえびちゅうファミリーはDブロックに大集合。これはえびちゅうさんのフェス出演が発表されてからの申し込みになったため。前方ブロックはフェス開催当初に申し込んだ高橋優のファンの方々などで占められているのです。うらめしいぜ。
でもAブロックとBブロックの人たちは、はじめからこのフェスに賭けていた人たちなのだ。そんな人たちを恨んじゃいけない。フェスはみんなで楽しむものなのだ。そしてぼくらはステージとDブロックからの挟み撃ちで、初見の方々にえびちゅうさんの音楽を届けねばならないのだ。きょうはそれが使命なのだ!雨よ降れ風よ吹け!わたしたちは負けない!
でもなるべく降るな!吹くな!
■フェス開始
会場はサブの鳥海ステージとメインの白神ステージのふたつの構成。ステージ横には大型ビジョンも設置。Twinkle WinkのMVとかが流れてる。
定刻となり柳葉敏郎などのメッセージが流れたあと、司会者(名前失念)と高橋優登場!フェスのテーマソング「秋田の行事」に乗せ、会場の皆さんで手を挙げたりヒザを打ったり。ちょっとした準備運動だ。
このときの雨雲レーダーをスクショしておいたのですが、雨雲本体は東へ抜けてることがわかります。このあと雨は時々ポツポツとしてきたくらいで、強く降ることはありませんでした。よかった。
さあ始まる!
■キタニタツヤ
トップバッターは秋田県に初上陸のキタニタツヤ。バンド編成。
本人によると「キタニタツヤバンドの統括マネージャーであるキタニタツヤとボーカルのキタニタツヤ」というメンバー構成になっているとのこと。
ヘビーな音響かつノリの良いスピーディーな曲調で攻めてくる。ちくしょうかっこいいぜ。東大め!東大め!ギターも弾いちゃってかっこいい。細かいリフがかっこいい。ミドルテンポで都会的なおしゃれロックも披露しちゃってかっこいい。
ベースの兄ちゃんが左手に黒の手袋を付けてバリバリに弾いていたのでかっこいい。やってみるとわかるけれど、手袋をつけてベースなんて普通弾けないっすよ。ちくしょうみんなかっこいい。
ラストは前回の「まやまにあ」でまやまさんがカバーなさったことで全国的にお馴染み「青のすみか」で終了。もしかしたら呪術回線のオープニングテーマとして知っている方もいるかもしれないですね。
うん。かっこよかった。
■だしおさん
キタニタツヤが颯爽と去ったのち、サブステージには悪い冗談のようなルックスを靡かせた男が登場。モノマネ芸人のだしおさんだ。しゃべりもたどたどしくて、どうしようもない。
しかしミスチルのモノマネで歌い始めた途端、この世界の何かと何かが入れ替わった。きっと白神山地にはそれくらいの力があるのだろう。
だって、見た目の悪ふざけと反比例しているかのごとくの美声なんだもん。桜井和寿ヴォーカル版の若者のすべてやら贈る言葉やらお嫁サンバやら…。ピアノも弾きだしたらこれも上手くて。上手いからこそ笑うしかなくって。
エンタメの世界ってのは奥が深い。奥の深さを感じさせないくらいに突き抜けて洗練されているものはさらにすごい。この人のステージを見られてよかった。そんな気がしています。どこか悔しい気がしつつも楽しかった。
■えびちゅうさん
で、しばらく休憩時間&ステージは転換&音声チェックタイム。
誘惑したいやのベース音トラック、リズムトラック、演奏トラックと音声が重なってゆく。歌声も入ってきたのだけれど、普段の音源と比べて少し揺らぎのある声だ。どうやら舞台裏でご本人さまたちが実際に歌ってチェックしているっぽい。みれいちゃんらしき声が「ハ!ハ!」と声を出してノドの様子を確認。これやっぱり本人ですよ。ちょっとおトクでしたよ。
楽曲が終わるとDブロックのファミリーから拍手。さあ準備は整った。
定刻。
ebitureが流れDブロックから大きく響く手拍子。AブロックやBブロックにも手拍子をしている人がそれなりにいる。ほどなくメンバーみなさんがファミえんのマリン衣装で登場!ココナさんはこの衣装で初登場になるのかな。安本さんは新ヘアスタイル。耳が出ていてショートの姫カットのような感じ・・・ステキなので各自インスタとかで確認してください!
一曲目はFamily complex。YEAH!YEAH!の声に呼応しブヒブヒ騒ぐDブロックのファミリー。振り返ってチラチラ見てくるCブロックの一般のお客様。やっぱり全力でコールを入れる文化ってのは、別の界隈から見たら異形のなんらかに映るんでしょうね。もちろんこちらも見世物としてやっているわけですからね。見て行ってくださいね。
続いて仮契約のシンデレラ。これもまたわかりやすいコール曲。フリコピをしながらも、遠くのステージまで届かせるぞとばかりに大声をあげるDブロックの勇者たち。チラチラ見てくるCブロックのひとたち。こちらも見世物としてやっているわけですからね。見て行ってくださいね。
なお舞踏会のあたりでは、AブロックやBブロックでも手拍子している手がたくさん見えました。
そしてキタニタツヤ作曲の宇宙は砂時計を歌う旨を告げ三曲目へ。まっぴるまの野外ステージだったので「宇宙の黒色」は連想しづらかったものの、白神山地のふもとのロケーションはちょっと神秘的。メンバみんなさんの声もよく出ていて、とても良いパフォーマンスになったと思います。
立て続けにハッピーエンドとそれから。特に紹介はしていなかったのだけれど、このフェス初日に楽曲提供者のSaucy Dogが出演していたつながりからですかね。
ここでえびちゅうさんを知らない方むけに秋田美の国ガールズに任命されていること、ABSタマリバで月イチレギュラーを持っていること、秋田分校を毎年開催していることなどをお伝え。そして来年SSAでライブやりますよと大切な宣伝。みんな来てくれよな!
いろはにODORYANSEのスタート前には、りったんさんが講師となり会場に向けタオル芸の解説。「右パンチ、左パンチ、上パンチ、下パンチ!からの、タオルを投げる!」とハイテンション。Kyo-doのときも「バイク、バイク、バイク、バイク」と名言を残していましたが、こういうときのりったんさんはとてもたのしくたのもしい。解説を繰り返した際は、タオルが風で煽られ落としてしまう始末。このときの「ゔわああああああ!」の声が素晴らしいのでぜひ全人類にTiktokで確認していただきたいです。まやまさんからは「飛んでしまったタオルを拾うときに始まる恋があるかもしれない」という麗しくも二次元的なフォローアップ。
曲中ではみれいちゃんが舞台袖から高橋優を連れ出してきて、一緒にタオルパンチ&タオル投げ。高橋優困惑。会場ほっこり。
秋田分校でおなじみミッションサバイバーでは会場全体でタオルまわし。AブロックやBブロックの方々もたくさんタオルを回していらした様子。そして安本さんの煽りに応え「えびちゅうえびちゅう!」と大声でコールを入れるDブロック。チラチラ見てくるCブロック。見世物ですから見て行ってくださいね。
かなり久しぶりの新未来センセーションでハンドクラップを打ち鳴らし、ミニMCでは高橋優に急に連れてきてしまったことを謝るみれいちゃん。2サビで連れてこようと思ったらタイミングがあわずに3サビで連れてきたのだそうだ。
そしてそろそろ終了の挨拶かなと思いきや、秋田県のはずれで流れるトーキョーズウェイ。マッシュルの効果があったのかどうか軽く沸き立つ会場。だいぶ持ち時間があったのだな。新宿交差点や裏原や渋谷や青山に思いをはせる白神山地。
ちょっと不思議な気持ちになっているうちに始まるYELL。きょうのラストはこの曲でした。まっすぐ響いてくる安本さんの歌声。まやまさんの背中を押す追い風。ぼくらに吹き付ける雨風。それらすべてがジョイフル。
いつもとちょっと違う環境で、いつもどおりみれいちゃんの「Y!E!L・L!ラスト♪」の煽りを浴びてフィニッシュ。
大きな拍手のなか帰ってゆくえびちゅうさん、おつかれさまでした!いっしょに大声をあげたDブロックのファミリーみなさま、おつかれさまでした!
■街裏ぴんく
えびちゅうさんが退場したのち、サブステージに現れたおっさん。去年のR1ぐらんぷりで優勝した街裏ぴんくだ。綾瀬はるかと同い年だと自己紹介して悲鳴が上がる。てめコラ、えびちゅうさんの後で下ネタとかやったらただじゃおかんぞ。
ぼくの失礼な心配などよそに、常識的なネタチョイスをしていた街裏ぴんく。きょうの会場は家族連れとかが多いですからね。大ウソにまみれたあんぱんマンのエピソードについて、リアルにしゃべり続ける怪しいおっさん。いわゆる「こんなあんぱんマンは嫌だ」の一種なんですが、話術がすぐれていてとても面白い。くやしい。
持ち時間をオーバーしそうになって終了。続きが聞きたい人は、このあと会場をふらふらするんで聞きに来てくれとのこと。新しい。
■ここでギブアップ
と、ここからが情けないお話です。
買ってきたゴム長のおかげで泥だらけのDブロックに立っていられたのですが、長靴で立ち続けるのってけっこうつらいのね。いったんフェスめしを食べにブロックを出たあたりで、仲間数人とともに心が折れてしまったのです。
もう少しステージを見ていたいという気持ちと数人の仲間を残し、何人かで駐車場のクルマでしばらく休むことにいたしました。
本来のこのフェスの後方ブロックは牧歌的なもので、晴れていればファミえんのリラックスエリアのごとく、お酒を飲んだりフェスめしを食べたり踊ったりしながら楽しむことが出来るものだったとのこと。
少し離れたオフィシャル駐車場までトボトボと歩いて帰りながら、響いてくる音漏れの斉藤和義をかみしめつつ、かねてよりの雨雲を恨むのでした。
といったわけで、リポっぽいやつはここまで。
高橋優のステージも音漏れで軽く楽しんで、混雑しないうちに離脱。帰路では近くの温泉に寄って少々リフレッシュ。秋田市内に戻って、きりたんぽ鍋で〆たのでした。
■まとめのようなもの
秋田県能代市。白神山地のふもと。
ここは千葉県住まいのぼくにとって、生涯訪れることがなくてもなにも不思議ではない土地でした。
だって、秋田県自体がそういう場所であったわけだし、能代市なんてその秋田県の北端にあるものだし、二ツ井なんて地域は市街地からもけっこう離れたところなんですよ。
そんな所に出かけていって、新しい音楽に触れて、音楽で楽しむたくさんの人を見て、ついでにお笑いにも触れて。黒色の宇宙の下で、これはちょっとした奇跡だと思うんですよね。よくある表現なんですけどね。
はじめの方にも書いたのですが、高橋優はあきた音楽大使として、えびちゅうさんはあきた美の国ガールズとして、それぞれ大きな時間と大きなコストをかけて、ここでのそういった繋がりを大事にし続けてきたものでした。
こういった音楽やエンタメを用いた地道な地方創生の取り組みに、弩ストライクでクリティカルヒットしてしまうのがぼくなのです。音楽からお笑いから料理から一連もろもろを楽しんでいる人たちの顔に至るまで、全てが楽しくって仕方がないのです。途中で離脱した奴の言う言葉じゃないかもしれないですが、マジでそう思ったのです。
えびちゅうさんの長年の分校開催を通じ、大きくなった感情。いろいろな動きのある2024年にも、こうした新たな横のつながりが生まれました。あの人やたくさんの人が地道に作ってきたものはなにひとつ間違っていなかったのだなあと、いろいろな表情を見せる秋田の空の下で勝手に考えていたのでした。
高橋優さん、この機会を作ってくれてありがとうございました。
そう。あと2カ月後には、最後の秋田分校を迎えることになるのです。
色々な人が大事にしてきた取り組みや繋がりが、どんなフィナーレを迎えることになるのだろう。
フェス翌日になってやっと晴れ渡った青空を眺め、2カ月後を楽しみにしつつ、そっと千葉まで帰ってきたのでした。
それではそろそろ寝ますです。
おやすみなさいグー。