令和のヘポタイヤと360度のビューティフルと春の嵐の話
2022年に入ってそうそう、今年も真山りかさんの生誕ソロライブが厳かかつ賑やかそして華やかに執り行われました。会場はzeppダイバーシティ東京。ライブタイトルは『まやまにあ-Level.6-』です。なんて麗しい花のようなタイトルなのでしょう。畏れ多くも、今年も参加をさせて頂くことが出来ました。
といったわけで例によって感想などしたためさせて頂きます。
いろいろ意識がアレでしたのでライブリポなんて書けるほど記憶がしっかりしてはおりませんし、今回はライブ配信もありましたのでその必要はないと思います。だので、ぼくが感じた偏った色々なことがメインになります。昼の部と夜の部ごっちゃです。ごめんなさい。
あと、一身上の都合によりとても長くなる予定です。そのあたりのことを諦めていただくか覚悟していただいた方から、下の行に進んでください。
※追記・書き終わった世界からやってきたぼくですが、やっぱりとても長くなりました。諦めてください。
開場
通いなれたzeppダイバーシティ。よく晴れた青い空。平日であることをものともしないおっさんたち。軽く賑やかな昼下がり。
今回のまやまさんの生誕ソロライブは、初の全編バンド編成によるものだとのこと。アコースティック系のライブにしますという事前の告知で、参加者のワクワク感は右肩上がりの高利回りだったのです。
さあ開場時間だ。館内へGO。
ダークで落ち着いた照明の下、客入れBGMは静かでおしゃれなJ-POP系。aikoさんっぽい曲や、男性ボーカルものの曲などなど麗しい花の様な選曲。ライブ本編MCで明らかにされるのですが、客入れBGのプレイリストはまやまさんご本人がチョイスされたそう。気付いたら重いタイプの愛の曲ばかりになったとのことです。
ここで羊文学の曲を初めて聴いたけど、シューゲイザーぽいフィードバックのかかったギターの浮遊感が心地よかったな。まやまさんのお陰で良き曲に出逢えました。100点です。
ステージはムラサキにライティング。シルエットでバンドセットが配置されているのがわかります。ドラムセットにグランドピアノ、ウッドベース。やっぱりステージに楽器があると気持ちが高まってしまう。ギターアンプとベースアンプが置かれているのも発見。全編アンプラグドというわけではないのだな。
…明るくなってわかったのですが、舞台上にあったのはドラムセットではなくてパーカッションセットでした。おしゃれ。
さあそろそろ開演だ!
開演!
客電が落とされてバンドメンバーの面々が登場。コ気味良いリズムの演奏が始まると、きょうの主役もステージに現れます。昼の部はスウェット風味のルームウェア的な衣装。夜の部はワンピース。麗しい花のようだ。
彼女が歌いだすと、この曲がebitureのアレンジバージョンだったことがわかります。ピアノで奏でられるチャイムの音階が爽やかです。
「父兄の皆様、ご起立ください!」
きょうはアコースティックのライブ。歌詞中にこのセリフがあったおかげで、立ってよいのかどうすべきなのか迷っていたぼくら客席の父兄諸氏も、すんなりとご起立することができました。客席の逡巡についても計算に入れていらしたのかしら。はぁまやまさん凄い。
M.01 キラキラネスキラネス
この世界は、あなたのため…
本編は彼女のアカペラからスタート。タイトル通りキラキライメージの曲ですが、きょうはアコースティックなのでしっとりしたキラキラ感。パーカッション中北さんによるカホンやウインドチャイムの音が印象的に広がって、「イエーイ」の部分で客席のペンラが静かに振り上げられます。
この曲は後半にかけ高い音程に転調するもので、しかも普段のオケと違い生バンド。のっけから難しい選曲だ。両部ともこの曲では緊張が少し声に現れてしまったかな、というのが僭越ながらぼくの正直な感想。
昼の部と夜の部では、後者の方が少し緊張が大きかったかも。配信がありましたし、座席も見える範囲ではほぼ満席でしたしね。とはいえ歌いながら調子が整ってゆくさすがのまやまさん。さあ、エンジンがかかってきた。
M.02 真夜中のドア (松原みき)
キラネス終わりの拍手の中、パーカッション中谷さんがオーシャンドラムを用いて、静かな夜の海辺をステージに描きだします。波の音に乗せて、まやまさんが「Yes, my love to you」というフレーズを数回繰り返します。
これは、ちゅうおんのCDを繰り返し聴きまくったぼくの耳にしっかり焼き付いたフレーズ。真夜中のドアだ。神聖マヤマバンドのセンターラインは、Sinさん&田口慎二さんというちゅうおんバンドのお二人で固められていますからね。この曲がご披露されないワケがないのです。
アレンジはボサノヴァ風味。原曲のシティポップの曲調との巡り合わせが素晴らしい。Sinさんがピアノで入れてくるジャズっぽいショートフレーズがおしゃれ。間奏では左手のピアノでカデンツを、右手でクールなオルガンソロを弾きこなす。技術もおしゃれ。そして大人の抑揚の込められた真山さんの歌声。とにかくおしゃれ。
深夜の暗いバーカウンターで濃度高めのカクテルが似合うような、そんな落ち着きを纏ったステージ。ちゅうおんでは聴けなかったフルサイズの真夜中のドアが、きょうはゆったりと開け放たれてゆくのでした。
■神聖マヤマバンド・メンバー紹介
2曲を終えて、ここで挨拶とバンドメンバーの紹介。
ギターは田口慎二さん。
ちゅうおんや数年前のまやまにあでご一緒された方。雰囲気ありますよね。人見知りなまやまさんですが、今回のリハになってやっと喋ることができたそう。そうか。去年やきそばパンを買い走らされたのは田口さんではなかったんでしたっけね。
ベースは真船勝博さん。
通称まふまふ。レキシバンドでもパーマネント奉行というレキシネームを持ってる方ですよね。
まやまさんよりだいぶ背の高いウッドベースを操られます。や、このウッドベースは真船さんよりも背が高いものなので、なんていうか大丈夫。ウッドベースだけでなく、曲によってはエレキベースも駆使されていらっしゃいました。
パーカッションは中北裕子さん。
ゆうこりんは様々な打楽器を使って柔らかいリズムを作られる方。打楽器が大好きな方なのだろうなという印象。そしてだれよりも男らしい方であるとのことでした。髪にラメが入っていることを紹介するものの、舞台下からはよく見えないな…。
そしてピアノ&バンドマスターは橋本しんさん。
エビ中ファミリーにとってはもう説明不要、信頼と安定の通称Sinさんです。ちゅうおんや大学芸会での編曲でいつもお世話になっていますありがとうございます。そろそろツイッターBioのお仕事欄に、エビ中編曲担当って大書きしてほっしーな。
雰囲気の良さが伝わってきます。
・・・どんどん長くなってきてますね。ちょっとペース上げます。
M.03 sweet memories (松田聖子)
ここであまり予想できなかった選曲。
その昔ペンギンがビールを飲むCMでよく聴いた、松田聖子によるバラードです。真夜中のドアよりもさらにゆったりした曲調。田口さんのムーディなギターソロを経て、2番ではまやまさんの英語歌唱も披露されました。シンガーとしての横顔がステキさん。
まやまにあLevel.6とは、バーカウンターのことだったのかもしれないな。
M.04 だいすき (岡村靖幸)
今度はゆっくりめだけれど明るくリズミカルな曲調。
アクセントに合わせ軽いクラップを欲するまやまさん。イントロラストのコード進行を聴いてわかった。岡村ちゃんだ。これも意外な選曲だ。この「何の曲がやってくるのだろう」というワクワクする瞬間がとても楽しい。
男性ボーカルもしっかり歌いこなす歌姫。夜の部ではあまり見られなかったのだけれど、昼の部では「君がだい・す・き!」の歌詞にあわせて軽く振られる紫のペンラの波。心地よい空間。
「君が大好き」の連呼でデレっとしてくるまやまにあ男性陣。しかし歌詞としては最終的に「女の子のために今日は歌うよ」と限定され、ちょっとしょんぼりのまやまにあ男性陣。心地よい空間。
へぽたいやー。へぽたいやー。
M.05(昼) ストロー (aiko)
M.05(夜) シアワセ (aiko)
今年もやっぱりaikoさん。昼の部と夜の部で選曲が異なっていました。
昨年の大学芸会の一週間前にも、まやまさんはaikoさんのステージからパワーを得ていらっしゃったとのことですが、これはそんな彼女のスキが詰まった2曲。普段からカラオケなどでよく歌っているのだろうなと感じさせられる安定感ある歌唱です。
勝手な想像なんですが、aikoさんの歌に対する佇まいや彼女の描く世界観というのが、まやまさんの理想とする自分のあり方の大きな部分を占めているのではないかと、ぼくは思うのです。
aikoさんはあまり詳しくないのですが、ストローで開口一番に飛び出し何度も繰り返される「君にいいことがあるように」というフレーズや、嫌味なく明るく流れてゆくメロディライン。揺れる紫のペンライトの中で歌っているまやまさんを見ていると、なんだかそんな気がしてくるのです。
■カバーブロックについて
sweet memoriesからストロー/シアワセまでのカバー3曲ブロック。これらの共通点は「愛」であったとのこと。それが伝わっておらず幻滅されるまやまにあ諸氏。
生誕祭とは1年に1度しか訪れない、まやまさんのデレ期であると明らかにされました。そのデレがしっかり堪能できるのが、聴きやすい明るい愛を歌ったこの3曲なのだそうです。
それに対して重くシリアスな愛は、前述の客入れBGMに活かされていると昼の部のMCで明かされています。インスタかどこかで客入れ楽曲リストを公開してくれるそうですので、皆さんもまやまさんの愛のカタチを聴覚の世界から確かめてみてはいかがでしょうか。
カバーブロックはあと少し続きます。
M.06 HELLO (Official髭男dism)
みんなを温める曲と前置きをして、ここできょう初めてのマイナー調のロックナンバー。
髭男さんもぼくはあまり聴いたことがないのですが、きょうのこの曲は歌詞の節々がとても聞き取りやすいもの。彼らの曲の特徴なんでしょうか。真山バンドのアレンジの賜物なんでしょうか。まやまさんの歌唱の力なのでしょうか。とにかく、まやまさんがハッキリと口にする歌詞がしっかり突き刺さってきます。
「hello!360度のBeautiful、思わず忘れたよ 無傷で生きるためのバリアを張っていることを」
とてもかっこいい歌詞です。彼女はどんな景色を思い浮かべて、この曲をセレクトしたのでしょう。歌を聴きながら考えているうちに、少し目元にじんわりとした何かが感じられてきます。
田口さんのギターもかっこよく耳に入ってくる。ストロークが結構大きいのに、細かいリフと合わさる所でも余計な弦の音など全く載りこんでこない。そんな彼のソロを見て嬉しそうなまやまさん。なんだろう。この空間最高だよ。最高にかっこいいよ。
M.07(昼) オレンジ(とらドラ!)
ここも昼夜で楽曲が入れ替わりました。
昼の部はオレンジ。
とらドラというアニメのエンディングテーマですね。
アニメに疎いので原曲は知りませんでしたが、オレンジの果実の生長になぞらえつつ女子のキモチを歌ったもの。ここで聴いているだけでも、劇中の大切なところで流れたものなのだろうなと思わせられるとってもセンチメンタルなものでした。
アニソンってのは基本的に劇伴曲ですので、原作を知らないぼくが語るのも烏滸がましいものですが…25歳を迎え、成長から成熟に変わりつつある時期の心情の一端が垣間見えたような気分でした。
ここでベースの真船さんはウッドベースに弓を当て、コントラバスとして弾いていたのだったかな。芸達者。
M.07(夜) 1/2(川本真琴)
夜の部は川本真琴さんの1/2。
なつかしい。まやまさんいくつなんだっけ。
この曲はピアノメインのジャズ風味の伴奏。
途中でテンポアップする部分もありましたが、モデラートでしっとりした雰囲気の印象が大きいもの。特にサビの「愛してる」のあとに大きくタメをつくるアレンジが心に残るものでした。
事前配信にてまやまさんは「Sinさんが私の希望に応えてくれて、とても良いアレンジをしてくれました!」と語っておられまして。この愛してるのタメの部分を聴いて、とても良いアレンジの最たるものがこの曲であると直感。こういう解釈もまた美しいものだなと思いました。
で、この曲は後年にアニメ・るろうに剣心のテーマ曲でカバーされていたんですね。まやまさんにとっては、中川翔子によるカバーverが出会いだったとのこと。朗報です。まやまさんは25歳で間違いありませんでした!
M.08 LIARMASK
ここからはまやまさん個人の持ち曲ブロック。
M.07のアニソンから話題を繋げる形で、自身の大切なソロ曲についての前フリ。発売は7年前になるんですね。
そんな話の最中、舞台上の演奏陣はいつのまにかSinさんおひとりに。そのままピアノとシンガー真山りかとの1on1でLIARMASKが奏でられました。
Sinさんはロックピアノとクラシックピアノをブレンドしたような演奏で、時にホットに、時にクールに彼女の歌を盛り立てます。真山さんはひとりのヴォーカリストとしてLIARMASKの世界を着実に描き上げていきます。
余計な音を削ぎ落した二人の共同作業によって、今までに聴いてきたこの曲の中でも一線を画すようなパフォーマンスになりました。7年ごしに、この曲のひとつの完成形に辿り着いたという想いがします。
事後配信によると、まやまさんは曲中のセリフ部分を省く予定だったそう。僭越ながらぼく自身もこの曲前半の歌とピアノの対峙っぷりがかっこよかったので、「このあとのセリフ部分は入れなくてもよいのではないかな」なんて思っておりまして。
それがエミコ先生の一声で、一転、セリフも生かすことになったとのこと。結果的にセリフ部分もカッコよくキまって大正解。Sinさんの演奏と真山さんの朗読の素晴らしさを見くびっていたぼくのことを、アカメのマヤマさんに叩き斬ってほしい。エミコ先生もすごい人だ。
そうそう。夜の部の現場ではワルツ部分でクラップを入れている方が多かったのですが、ぼくはピアノvs真山さんという真剣勝負の迫力に圧され、ここは敢えてクラップを入れずに見守るのが一番なのではないか。そんなことを考えておりました。こんなのはぼく個人の感想なので、正解でもなんでもないんですけどね。
M.09 春の嵐
ステージにベースとパーカッションのお二人がカムバック。そして静かなピアノとウインドチャイムのイントロから春の嵐へ。
ドラムでなくパーカッションセットで保たれたリズムはアタックがとても柔らかで、普段のどこか攻撃的な音像と違う世界観。薄く紫色にライティングされたステージでは、5年を経ての「何でも出来るような気持ち・変わりたいという憧憬」の変化を思わせる、大人の空気を纏った大人の嵐が吹いていたのでした。
静かな演奏の中にあっても、きちんと嵐が嵐として生きていたのは、真山さんのヴォーカルに芯が通っていて、強さが伝わってきたからではないか。カバー曲というのは、いわば借りものの曲ですので、丁寧に大事に歌う形になります。一方でこの曲は自分の持ち曲ですので、自然体で、かつ自覚と自信を持ってしっかりと歌っていたような印象。素晴らしい出来でした。ぜひまた生バンドで聴きたい一曲です。
M.10 蜃気楼
ギターの田口さんもステージに帰還。
そして年イチで披露されるしんみりナンバーの登場。だいぶ音数を減らした伴奏に載せて、ファルセットを多用した歌唱。まやまさんの指先に拘ったゆらゆらとした振り付けの向こうに、蜃気楼が見えてくる気すらしてきます。しんみり。
田口さんの泣きのギターソロがかっこいい。真船さんのベースラインもかっこいい。
M.11 愛のレンタル
この曲はギター田口さんとの1on1での披露。
原曲はシンコペーションなどがちりばめられたリズミカルなナンバーですが、きょうは田口さんがアコースティックギターでクラシックメインの静かなアレンジにまとめています。対してまやまさんは、その演奏をヴォーカルで引っ張ってゆく感じで歌い上げていました。なんだかステージ上でのパワーバランスの比重が、まやまさんの側にあったように思えるのです。
こういうたぐいのステージでは、「演奏陣がヴォーカルを助けている」とか「ヴォーカルが演奏陣に頼っている」といった構図が見られることも多々あります。それもスリリングだったりハートウォーミングだったりで楽しいもの。ですが、きょうのバンドと主役のバランスは生誕祭として非常に座りの良いもので、ヴォーカルが前面に立って力を発揮して、演奏陣はしっかり自らの仕事を果たすという本来あるべきカタチのもの。
この日の愛のレンタルは、そのカタチの最たるものになっていたと思えるのです。
■持ち曲ブロックについて
初めてのバンドを率いてのソロ公演。この「持ち曲ブロック」を通して、去年までとはまた違った角度から、まやまさんのヴォーカリストとしての矜持と技量、そして歌への想いなどをしっかり感じとることが出来ました。
エビ中メンバーの生誕ソロライブというものは、基本的には演者それぞれの世界観を楽しんでそれぞれの個性を感じとって確かめるもの。これは主役本人にも観客側にも言えることだと思うのです。
今年のまやまにあは、彼女の世界の中には「真山りかの歌」が大きな比重を占めているのだなと気付かせてくれました。このブロックと向き合って、本人も観客も、その一端に触れられたのではないでしょうか。
M.12 さよならばいばいまた明日
そんな真山りかの音楽の世界。本編最後のMCとして、彼女は「また明日と言える日常が、一番希望だと思っている。」という言葉を持ってきます。
この二年間の間、世界には様々なことがありました。ぼくも色々なアーティストのステージを観に行きましたが、どのアーティストもエンタメの未来と可能性を信じつつも、様々なことと闘い続けていました。
当たり前のことですが、真山さんもその中のひとり。また明日、また次回、顔を合わせることが出来ることっていうのはどんなに幸せなことなのだろう。彼女の想いが胸にスーっと入ってきます。彼女の言葉の先には、ちゃんと会場に来られなかった人たちの顔もあったのだろうと思います。
っていう自分の隣で、「これはどっちのまた明日だ?」というありきたりな疑問に首をかしげちゃっている自分がいたりもします。
ラストナンバーはもちろんさよならばいばいまたあしたの側でした。
ゆったりとしたテンポの伴奏に、まやまさんが「わたしたちの未来は」と複数視点の言葉で歌いだしの声を優しく添える。会場のみんながハンドクラップでその声にそっと寄り添う。ここで歌詞に出てくる「さよなら」は、未来に繋がる明るいさよならだということが伝わってくる。ラストナンバーとして、MCからの流れが完璧すぎる。
間奏でのベース、パーカッション、ピアノ、ギターとリレーされ繋がってゆくソロが上品でとても楽しい。
ラストのフレーズを歌い終え、客席のカミシモすべてに手を振って、「ばいばい、また元気で会おうね!」と言い残して曲中にステージから去ってゆくまやまさん。いつもの一日、そして特別な一日の終わりがそこにやってきたようだ。けれどまたあしたと言える日常は至高なものなのだ。
最後の小節が終わり、パーカッション中北さんの合図で締められる楽曲。はあ、楽しかった。楽しかったよまやまさん。
EN.01 輝きだして走ってく (サンボマスター)
舞台が暗転。フロアで続く拍手。少々の間をあけて、主役が戻ってくる。
アンコールの拍手に対して感謝の言葉を述べ、周りから見られる自身の強さと弱さについて語るまやまさん。先日も書きましたが、鉄人だ鉄人だと彼女のことをイージーに評する風潮は、ぼくもやっぱり好きになれないもので。そんな彼女は「強くなくていいんです。自分に、負けないでください。」というメッセージを会場に送って、アンコール1曲目のロックナンバーをスタートさせます。
彼女が今年のテーマにしたいと選んだ楽曲は、サンボマスターの「輝きだして走ってく」でした。
この曲の歌詞を見るとなんとなくわかる気がするのですが、彼女がエビ中メンバーやファミリーのために強さを纏おうとしているのは、本来の自分が弱いところにあるものだと知っているからだと思えるのです。ここ二年間のライブや生誕祭が中止や延期を繰り返し、自分と向き合う時間が多くなったはず。今まで以上に色々なことを考えていたはず。だからただ強いだけの人にも、ただ弱いだけの人にも、出せないメッセージというものに辿り着いたのではないかと。ぼくはそう感じさせられてしまうのです。
歌詞を見るとなんとなくわかる気がするのですが、きっとサンボマスターもそんな人達なのだろうと思えるのです。ブサイクなまでにも「負けないで」というメッセージを正面から投げ続けてくる彼らの不器用さが、どこかで逆転してとてもかっこよく見えてくるのです。
ステージでの演奏は、ここまで作り上げてきた洗練された大人感を弱め、サンボマスターのイメージに寄せたのか粗削りな勢いを前に出したものになっています。やっぱりロックが好きなんだというまやまさん。彼女が出したかったメッセージにしっかり合致したアレンジになっていたように思えます。Sinさんのトータルコーディネートと神聖真山バンドが作り出したステージは、本当に素晴らしいものだ。
EN.02 Anytime, Anywhere
といった色々を経て、いよいよきょうの本当の最後の一曲。
まやまさんは「最後は、みんながいま一番歌いたい歌です」と前フリを入れます(昼の部)。最強のハンドクラップと共に一緒に歌いましょうと告げられて、演奏が始まります。
ぼくらの心構えはどうあれ、この曲やニューアルバムにまつわるメンバーみんなのスタンスは、「みんなと一緒に作りたい」というもので一貫しています。
どんな企画や仕掛けをもってそれを進めてゆくのかはわかりませんが、まやまさんのこの曲フリを見て、なんていうか、今回のアルバムは本気でファミリーと一緒に作ろうとしているのだろうなという意思を汲み取ることができました。
会場の大きなクラップの中、笑顔で歌い始めるまやまさん。「エニっタイ!エニっウェ!」のコーラスで、田口さんにプレッシャーをかけるまやまさん。ステージのフチにちょこんと腰かけてカメラとファミリーにアピールをするまやまさん。コロコロと回りながらステージの中央に戻って楽しそうにしているまやまさん。ブレイクのセリフにてまやまにあを言葉で刺しにくるまやまさん。ぴょんぴょんと跳ねながら大きくクラップを打つまやまさん。バンドメンバーと目を合わせ、最後に大きくジャンプをキメてきょうのステージを締めるまやまさん。
会場をひとつにして、100分強のライブは盛大に終演を迎えるのでした。
まとめ -思い至ったこと-
というわけで、今年のまやまにあもとても楽しかったです。
生バンドを引き連れてのステージ。そこには「真山りかの音楽」というものがしっかりと存在していました。昭和から令和にかけての楽曲群が、様々なアレンジメントに装飾された上で、まやまさんの歌声やステージングでひとつにまとまっていたのです。
ファンに向けた生誕ソロという枠でなくて、外向けのディナーショーとしてもしっかり成立するものであったように思えます。
楽曲のどれもこれもが聴きごたえのあるもので、音楽好きを公言する彼女とバンドメンバーが丁寧に作り上げたものであったことがよくわかります。きっと近いうちに何かの曲がYoutubeにUPされる気がしますので、配信で見られなかった方にも是非ご覧になって頂きたい。
っていうか、ちゅうおんCDのように音源にして発売して頂きたいくらいだ。運営さん、どうですか。ちょっと考えてみて頂けませんでしょうか。
さて。
「真山りかの音楽」は、間違いなくここにありました。それでは、「真山りかの世界」は、どのようにここに存在していたのでしょうか。そのあたりをぼくなりに読み解いて少し掘り下げてみようと思います。
まず、このライブの大切な一曲目に、伏兵的なキラキラネスキラネスがやってきたのは何故なのか。それは、彼女がまず「この世界は輝いている」と伝えたかったためなのではないか。ぼくはそう受け取りました。
同じように、数あるaikoさんの楽曲からストローとシアワセを選んだのは、「君にいいことがあるように」「あなたの一歩になるならば、幸せに思える日がくるのです。」といった言葉があったからではないかと思うのです。
そして、Official髭男dismのHelloをセレクトした理由。
それはステージから見えるであろう光景を思い浮かべ、「hello!360度のBeautiful、思わず忘れたよ無傷で生きるためのバリアを張っていることを」と歌いたかったのだと思うのです。
彼女を全方位から包むBeautifulとは、バックに控える頼れるバンドメンバーや仲間たちであり、舞台袖の裏方のスタッフさんであり、正面のフロアで笑顔を見せるたくさんのファミリーの皆さんのことに他なりません。
思うように活動が出来ない期間を経て。
人前で笑顔を見せる仕事であるからこそ、未来に対して、社会に対して、考えることが多かったものだと思います。勝手な想像ですが、きっとまやまさんご自身が、自分に負けてしまうような気持ちに触れたこともあったのではないかと思うのです。
だけれど、ヒトってものはもともと弱いものですから、それを恥じることはないのです。aikoさんは「いつから知ってたの、あたしの強いところ、弱いところ」とも歌っています。
そこまで辿り着くことができれば、ヒトは弱くても大丈夫なんです。
世の中はたくさんのキラキラで満ちている。だからバリアなんて張らなくても大丈夫。弱い自分を肯定することで、強い自分を同居させることができるはずなんです。
サンボマスターの曲中で、マイクを通さずに「負けないで!負けんなよ!」と叫んだ声には、決して強くない彼女からの、そんなメッセージが乗っかっているようにぼくは思うのです。
おおっぴらにデレることをしない・できない彼女にとって、ぼくらに本気でストレートに伝えることのできる大きな愛とは、こういった大きな応援歌なのです。ぼくらを励まし愛とエールを送ること。それがいまの彼女が自分自身に課した存在理由のメインたるものであるのではないか。ぼくはそう感じざるを得ないのです。
このメッセージこそが、まやまにあ-Level.6-にて25歳を迎えた今のまやまさんからぼくが受け取った、等身大の「真山りかの世界」です。
・・・とかここまで書いてみて、何かしらで万が一ご本人様に知られてしまった折りに「ぜんぜん違うよー考えすぎー」なんて言われたりしちゃう世界線もアリアリだなあ。まあそれはそれで、ここまでの勘違いをさせて頂けるくらい楽しい公演だったっていうことなので、トータルでプラス決算だ!なんにも問題ない。やっぱりこの公演は高利回りだったのだ。
といったあたりも含めまして。
まやまにあ-Level.6-は、素敵な音楽とステキな笑顔と、大きなメッセージと愛に溢れた、とても素晴らしい公演でした。今年も参加できたこと、とても光栄に思います。
誕生日からだいぶ遅れた生誕祭だったけれど、25歳のまやまさんの作る世界が、いま以上にキラキラした世界に包まれますように。また来年のまやまにあも、素敵なステージになりますように。
次のライブは、どんなタイミングで、どんな空気の中で行われるのだろう。
世界はどうなってゆくのだろう。
いろいろなことを考えちゃったりもするけれど、また世界にいつもの明日が訪れますように。ひとまずはそれだけあれば、きっと大丈夫。
それではそろそろ寝ますです。
おやすみなさいグー。