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プロダクトの企画書ってどう書くの?”売れる”プロダクトを発見するPMMのための “10の問い“とは
こんにちは!ThinkingsのPMM(プロダクトマーケティングマネージャー)の植村です。
ThinkingsのPMMは発足して2年目の若いチームですが、手探りながらも様々なミッションにトライしています!その中でも最たる役割の1つが、「MSP( Minimum Sellable Product )※を発見し、プロダクトの事業性を高めていくこと」です。
※MSP=販売可能な最小限の製品
ただ「売れる」プロダクトと一口にいっても「ユーザーから見たときの分かりやすさ・魅力度」、「セールスのしやすさ」、「競合と比較したときの優位性」など様々な側面から、多角的に判断することが求められます。
そこで、Thinkingsではユーザーとプロダクトをつなぐ“10の問い“を通して、顧客と市場、そしてビジネスに対する解像度を高める「Brief」と呼ばれるドキュメントを作成しています。
プロダクト企画の3つの落とし穴
Briefの目的を理解するためにも、プロダクト企画でよく陥りがちな悩み事や失敗について挙げてみました。
皆さんも、このような経験はありませんか?
・VOC(voice of customer)に踊らされ、手段が目的化する
・やる/やらないをジャッジしたあと、何から手を付けるか優先度が決まらない
・アイデアを形にするための自信が持てない/なぜ良い企画なのか説明できない
※VOC=顧客から寄せられる意見や要望、感想など
失敗その1:VOCに踊らされ、手段が目的化する
プロダクトをより良くするうえで、ユーザーの声を聴くことは非常に重要ですが、「こういう機能が欲しい」という、表面上の要望だけを捉えてしまって、本質的な課題やニーズが何なのか見失ってしまうことがあります。
このようなことの例えとして、
「もし顧客に望むものを聞いていたら、『もっと速い馬が欲しい』と言われただろう」という、ヘンリー・フォードの言葉は有名ですよね。
移動手段として馬車が一般的だった時代に、ユーザーは「自動車が欲しい」とは言わない。だから、「速い馬が欲しい」と言われたら、「目的地まで早く着きたい」だとか、「遠く離れた人に早く会いたい」とか、「情報やモノを早く届けたい」とか、そういった”真のニーズ”に着目しなくてはなりません。
そのためには、Why(目的・ゴール)とHow(実現方法)は切り離して考えることが重要だと思っています。
失敗その2:やる/やらないをジャッジしたあと、何から手を付けるか優先度が決まらない
これもあるあるなのではないでしょうか。
強力なプレイヤーの市場参入など、大きな競争環境の変化や、重要顧客からのVOC、経営陣からの鶴の一声など、「これは実現しなきゃ!」と合意がすんなり取れた企画でも、それらがたくさん積み重なっていくと何から手を付けるか路頭に迷うことになります…。
こういう時にはやはり原点に立ち返って、それぞれの企画が「誰の(※自社も含め)」、「何に」、「どう影響を及ぼすのか」、「そのインパクトはどの程度なのか」を統一された基準で可視化し、冷静に比較検討するしかないのかな、と思っています。
失敗その3:アイデアを形にするための自信が持てない/なぜ良い企画なのか説明できない
ユーザーリサーチを行ったり、顧客の商談へ同席する事で、ユーザーひとりひとりの解像度が上がるとともに、新たな事業アイデアが降ってくる時があります。
でも、ここから企画案と呼べる形まで仕立て上げるのにはなまだ何か足りない気がする…。「この企画で他のメンバーは納得してくれるだろうか?」「どうすれば、企画を筋のいいものにできるんだろか…」なんとなくもやもやと悩み続けることが私自身よくあります。
こういう時には、まずは粗削りでもいったん形にしてみるよう心掛けています。
そうしながら足りない視点を補ったり、それでも方向性が見えなければ、潔くお蔵入りにしたほうが検討スピードは速まると思っています。
プロダクト企画の解像度を高める10の問い
前置きが長くなってしまいましたが、
ThinkingsのPMMが実践している“10の問い“は、以下の通りです。
(※当社はBtoBのHRTech事業を展開しているため以下のような検討要素となりますが、事業内容やプロダクトによって適宜アレンジしてみてください)
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対象となるセグメントは?
顧客はどの程度いるのか?
事業インパクトはどの程度か?
本当に課題なのか?
今はどうしているのか?
何を提供するのか?
他のオプションはあるのか?
なぜそのソリューションがベストなのか?
購入のストーリーは描けているか?
共感し喜んでくれるか?
amazon社の思考法であるWorking Backwardsの5つ質問※をベースにし、発展させたものがThinkings流の10の問いです。
※) Amazonのイノベーションを支える「Working Backwards」とは? ──活用事例やアーキテクチャと合わせて解説
これらの問いを通して、以下のポイントをクリアにすることで、さきほど挙げた「プロダクト企画の3つの落とし穴」にハマるのを回避できます。
①ユーザーとその課題に対する深い共感・理解
→Who(誰の)・Why(どんな課題・ニーズを)・What(何を使って)・How(どのように解決するのか)
②企画が実現したときのユーザー/事業にとってのインパクト
→ユーザーにとってのペインの強さ≒解決時のインパクト
KPI(売り上げ・顧客数・継続率 等)への影響がどの程度見込めるのか
③ユーザーに提供するためのストーリーやメッセージ
→ユーザーがわくわくしたり、喜んでくれる製品か
どのようにすれば、購入や意思決定につながるか
Briefはプロダクトを考える全ての人に向けた、思考・議論のための補助線
当社で実践している、Briefを活用するためのポイントをご紹介します。
ーBriefはPMMだけが作成するものではない
これまでPMMの主な役割として紹介してきましたが、実はBriefは必ずしもPMMが作成する必要はなく、社内の誰でも起案していいことになっています。
異なる職域や視野から持ち込まれた様々な企画を、”売れる”という共通のゴールに結びつけていくことで、より良いプロダクトを目指しています。
ーBriefは設計書ではない
PdMが作成するPRD( Product Requirements Document ※)の前段階のドキュメントとしてPMMが作成することが多いですが、「設計書のように要求を書き上げるもの」ではないことに注意が必要です。
Briefの目的は、企画者が多角的な視点を持つための補助線であることと同時に、企画にかかわるメンバー同士の議論や、検討プロセスの土台になることです。そのため、項目を埋めることよりも、各問いに対して様々な角度から議論したり、検討したりすることそのものに意味があります。
実は、各項目は必ずしもMECE※というわけではなく互いに相関しています。そのためどこから書き始めても良く、また、書けないことや分からない事実は空白にしておいてOKです。ディスカッションや情報取集を繰り返しながら、最終的に各問いの答えを明らかにしています。
※PRD=プロダクト要求仕様書
※MECE=「モレなく、ダブりなく」を意味する造語
おわりに
市場環境や事業状況が常に変動する中で、”売れる”プロダクトを開発していくのはとても難しいことだと思います。その中でより良い企画を生み出すためには、ビジネス・ユーザー・プロダクトを行き来しながら、多角的な視点を持ち、そしてそれを常にアップデートしていくしかないのかな、と思っています。
PMMの役割は、顧客の代弁者であること、そして、セールスやカスタマーサクセスといったビジネスサイドとの議論を通じて、事業性を見出すことにあると思います。こうして発見されたMSPを、MVPの責任者であるPdMと連携して深めていくことで、プロダクトとビジネスの懸け橋の役割が果たせるよう、日々取り組んでいます!