ルシファーさん

「オ◯禁期間があったおかげ」 R-1ぐらんぷり決勝常連のルシファー吉岡が語った苦悩と野望



ピン芸人No.1を決める大会R-1ぐらんぷり。先日、熾烈を極めた準決勝が終わり、今年も見事決勝進出を果たしたルシファー吉岡


下ネタを織り交ぜた我が道をいく芸風に、多くのお笑いファンや同業者が注目しています。テレビ番組のナレーターを務めるなど、様々な活動をしている彼が今考えていることは何なのか?2016年から5年連続のR-1ぐらんぷりファイナリストとなった彼に『東京で考え中』が聞いて参りました。
(この取材は1月29日に行いました)

伝わらなかったパンティ泥棒のネタ


立川:他の取材記事を拝見させてただいたところ、28歳から芸人生活をスタートしたと書かれてましたが、デビューは2008年辺りですか?

ルシファー:一応2009年1月末じゃないですかね。始めたのはあんまり覚えてないですけど、多分28歳くらい。

立川:三四郎の小宮さんが「ルシファーとは同期」とラジオ番組で語っていたんですが、マセキ芸能社に入ったタイミングが同じということですか?

ルシファー:そうです。芸歴は彼らが先輩なんですけど、マセキは入った順で先輩後輩ってなるので同期ですね。小宮くんと飲むことが多かったんですけど、最近はあまり行ってないですね。意外と年末年始もずっとネタ作ってたので。年明けに『デリバリーライブ』もあったし、そのあとはR-1ぐらんぷりだったり。他の事務所で言うと、吉本の相席スタートさんの山添さんが多分一緒ですね。


立川:なるほど、そうなんですね。元々バカリズムさんや劇団ひとりさんがお好きとのことですが、それ以前に影響を受けた人は誰ですか?よく見てた番組などはございますか?

ルシファー:やっぱりダウンタウンさんですね。「ダウンタウンのごっつええ感じ」を見てコンビでやりたいと思ったんですけど、相方になるって約束をしてた人に断られちゃったんで、ピン芸でやるという感じですかね。

立川:そういった背景があったんですね。では、ネタはどうやって作られてますか?

ルシファー:基本的に普段生活してて思いついたおもしろいことを箇条書きでメモして、いざネタ作るっていうときにそれを見ながらネタを作るんですけど、これいいなって思ったネタを作ってる途中でなんかあって、さっき見たメモを思い出したりとか、違うネタを作り出したりとかしてます。

立川:同時進行するっていうことですか?

ルシファー:単独の時は特にそうですね。

立川:考えた設定の中で自分はスゴい好きだったけどウケなかったネタはありますか?

ルシファー:ありますね。インサイダー取引ってわかりますか?例えば自分の会社が大量に人を解雇したりすると株価が動くじゃないですか。株価がこの先上がるとか落ちるという情報を事前に得た状態で株の売買が行われる、ざっくり言うとこれがインサイダー取引。

そんな風に事前にそこに干されることがわかってるパンツを取りに行くというはパンティ泥棒としてどうなんだと。それは違反だろって、スリルもないしっていうネタを考えたんですけど、やっぱマセキ的にはちょっと難しかったようで…

立川:それってパンティを張り込みするネタとは違うものですか?

ルシファー:違います。パンツが山程あるんです。

立川:設定面白そうなんですけどね、僕は好きです(笑)ウケなかった要因として、キャラクターに合ってないといいますか、お客さんの中でルシファーさんはそういうこと言う人じゃないよねっていう認識がある気がします。横文字とか難しい単語が出ると途端にわかんないなってイメージがあるなって。

ルシファー:その加減が難しいですね。

ルシファー2


突然の1年間下ネタ禁止令

立川:ピン芸人を始めてちょっと芽が出たなとか、芸人として自分がやってけるなって確信を持てた出来事とかありますか?

ルシファー:それはちょっとスケールが大きい話ですね。今は生活できてますけどまだそこまで売れてるわけではないので。でも最初は全然ダメだったので、その当時よりはウケるようになったと感じたきっかけはあります。

マセキに入ってからずっとネタをやったりして、まあウケてはいたんですけど、今考えればそんなにきちんとウケてる感じではなかったんですよね。だから事務所に「1年くらい下ネタをやめてみろ」と言われたことがあったんです。それで1年くらいまったく下ネタをやらなかったんですけど、特に状況が変わってないうえに、事務所ライブのランクがどんどん下がっていって1番下のジャンピングイエローってとこまで落ちちゃって。それですごいストレスが溜まっちゃったから、勝手に解禁したんですよ。

そしたら1年分溜まってたせいか、思いが乗っかってたんでしょうね。ものすごくウケたんですよ。やっぱりやりたいことをやったほうがいいんだなってそこからすごい調子が上がってきましたね。その後しばらくしてお笑いハーベスト大賞(2014年)をとったので、多分1回オナ禁期間があったおかげだと思います。

立川:なるほど(笑) 1年分を出したということですね。

ルシファー:今思えばそれで何かを掴んだのかなって思いますね。なんでやらせてくれないんだよっていう怒りもありましたし。

立川:事務所サイドはそこまでの意図があって一旦やめろって言ったわけじゃないですよね?

ルシファー:単純にちょっと違うこともやってみればって感じですし、元々マセキってあまり下ネタやっちゃいけないってのもあったからかもしれないです。

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立川:なるほど。先月開催した、『ルシファー吉岡デリバリーライブ』はどういった意図で始めたんですか?ご自身のみが出演するライブのネタを半分以上You Tube生配信されてましたね。

ルシファー:まず誰もやってないなっていうのが一番です。採算をとれるとかまったくなかったんですけど、とりあえずやってみようと思いました。そのためにYouTubeチャンネルを開設したんですよ。これからこのチャンネルにアップする動画として使うという意味もあったので、僕としては単独への誘導というか、これを通して登録してくれる人も増えたら一石二鳥だなと思いました。

立川:地方の人とかはすごく嬉しいだろうなと思いました。個人的に気になったんですが、マセキのYouTubeチャンネルに各芸人さんのネタ動画がアップされてますけど、ここ1年ルシファーさんのがないですよね。YouTubeチャンネルを準備してたからですか?

ルシファー:それもありますし、現状やっているネタをネタバレしたくないっていうのを優先したっていうのもあります。

立川:それはR-1ぐらんぷりとか賞レースに向けてですか?

ルシファー:まあすべてですね。あれはあれでメリットありますし、見てくれる人もいるので、難しいところですけどね。

オードリー・ウッチャンにも認められる実力派

立川:オードリーのオールナイトニッポンにたびたび出演されてますが、オードリーさんと初めて顔を合わせたのはどこですか?

ルシファー:最初にR-1ぐらんぷりで決勝に行ったときに、オードリーさんラジオでR-1の話をしてたんですよ。一通り感想を述べた後「ルシファー吉岡おもしろかったよね」と2人が言ってくれて、そのあとにオードリーさんが出るライブに呼んでもらったんですよ。それが多分初めてですね。

立川:では褒められて特に嬉しかった人はいますか?

ルシファー:結構そういう嬉しい瞬間っていろいろありますね。最近で言うと、ナイツさんのラジオに内村さんがゲストで出てた回があって、話の流れでマセキ芸人の名前を挙げてる中で僕の名前が出たときに「ルシファー良いコントするよね」って言われたんですよ。それがめっちゃ嬉しかったです。

立川:内村さんは「そろそろにちようチャップリン」というネタ番組のMCを務めているのもあって、結構若手芸人のネタを見てるイメージあります。かが屋さんにおもしろい先輩を聞いたときに、加賀さんが真っ先にルシファーさんの名前を挙げてましたよ。

ルシファー:そう言ってくれるのは嬉しいですけど、彼らは売れちゃったからなあ(笑)

立川:JFN PARKで配信されているウエストランド井口さん、ジグザグジギー池田さんとのラジオの方でもお笑い第7世代って自分たちをくくってましたけど、自分たちよりもさらに芸歴が下の人達に対する恐れや焦りはありますか?

ルシファー:下の世代が売れたからじゃなくて、焦りはずっとありますよ。

立川:それは芸人始めたときにもう少し早く成果を出したかったということですか?

ルシファー:そうじゃなくて、そういうことよりも、そもそもタレントゼミナール入る前は全然ダメで、もう俺はダメなのかと思ってましたけど、ウケるようになって、その瞬間瞬間でわりと思ってることは違うんであれなんですけど、なんか難しいな…

ルシファー4

立川:焦ってる対象はあるんですか?

ルシファー:うーん、そう考えると焦ってないのかもしれないですね(笑)焦りたいんでしょうね。


ピュアラブなファンが多いルシファー吉岡のライブ

立川:『激レアさんを連れてきた。』という番組のナレーションをやられてますが、そもそもナレーターに起用されたきっかけは何ですか?

ルシファー:R-1ぐらんぷり2017の決勝で、「大化の改新」というネタをやったんですよ。蘇我氏と物部氏にクラスの大半が感情移入しすぎちゃうというネタで、僕は先生役だったんですよ。それを見てちょうど先生みたいな声の人を探してたらしくて、それで起用してもらえたらしいですね。

立川:ナレーターをやり始めてからどんなことが難しいと思いましたか?

ルシファー:島根県出身なので、発音というかやっぱり意識しても標準語じゃないイントネーションだったんだなっていうのがいろいろあって難しいですね。

立川:ナレーター業が芸人活動に生きてると感じることはありますか?

ルシファー:あのナレーション聞かれたことあります?あれってそもそも僕のネタの口調を持っていったものなので、そういう意味で得られたものはないんですけど、ショッピングモールとか地方での会館ライブなどの営業のときにやると盛り上がるんですよね。だから逆輸入というか、そういった意味での恩恵は受けてます。

立川:逆に言うと普通の視聴者はルシファーさんがやってるという認識があまりないってことですよね。

ルシファー:そうですね。逆に先生のネタやるときに、ああなりすぎないように自分で気を付けなきゃいけないというか、変な笑いが起こらないように、「いいか〜?」と言えなくなったというデメリットはありますね(笑)

立川:ちなみにファン層は男性ファンがすごい多いイメージですけど、単独ライブではどうですか?

ルシファー:昔は7:3とか8:2とかで男性の方が多かったですが、最近は6:4くらいですかね。でもこないだのデリバリーライブは普段の単独と違って席が7、80くらいしかなくて、すぐ完売しちゃったんですけど、それは男性が多かったです。チケット販売開始してすぐに電話をかけるくらいの熱狂的なファンは男性の方が多いってことですね。
おじさんがおじさんを見に来るってピュアラブ過ぎますよね(笑)何の見返りもないじゃないですか。ただただおもしろいものを見たいっていうだけなので、嬉しいですね。

立川:男性ファンでも30〜40代が多いですか?

ルシファー:それは幅広いですね。さすがに高校生はいないですけど、大学生の男子から、たまに60代の方もいますよ。

立川:出待ちもされますか?

ルシファー:いないです。みんな見て帰るんです。熱狂的な気持ちはあるけど、接触とかはないんです(笑)


飛躍する為にネタを頑張り続ける


立川:今後、ご自身がより飛躍するために頑張ってることは何ですか?

ルシファー:趣味を出した方がいいとかYouTuberとして毎日動画をアップした方がいいとか、売れるためのきっかけをいろいろと考えたりはするんですけど、やっぱりネタをもっともっと頑張った方がいいんだろうなっていう結論に至りましたね。

立川:ではネタ以外で今後やってみたい仕事はありますか?

ルシファー:やっぱり小説ですね。

立川:どういった種類の小説ですか?

ルシファー:推理小説とかミステリーですね。米澤穂信さんとか好きです。

立川:インシテミルとかの作家さんですね。そういった小説からネタ作ったことあります?

ルシファー:そう考えてみたら全然ないですね。夢中で読んでます。

立川:では最後に今年のR-1ぐらんぷりへの秘策を教えてください。

ルシファー:いや、もういつも通りです。決勝にはなるべくピン芸人の人に上がってきてほしいですね。

立川:優勝したら特典として特番をやれますがどういった感じにしたいとか考えてますか?ちなみに粗品さんは『涼宮ハルヒの憂鬱』ってアニメが好きで、そのアニメの中でほぼ同じ話が8話繰り返されるという試みがあって、それをモチーフにした商店街ロケをやってました。ずっと同じやりとりがくり返されるループもので、粗品さん本人がこの世界を抜け出せないみたいな感じです。コントみたいな感じで、いわゆるバラエティ番組という感じではなかったのですが、構造自体がおもしろくて、Twitterで考察する人がめちゃくちゃいました。

ルシファー:そんなに趣味全開でいいんだったら、僕もそういうのやりたいな。すごいミステリー要素のあるをコントやるしかないですね。最後にすごい大どんでん返しがあって、みたいな感じを目指します。

【ルシファー吉岡 プロフィール】

マセキ芸能社所属。ピン芸人NO.1を決める大会『R-1ぐらんぷり』の決勝に5年連続で進出を果たす実力派のピン芸人。テレビ番組『激レアさんを連れてきた』ではナレーターを務める。
3月8日(日)19:00~21:00に関テレ・フジテレビ系の全国ネットで生放送される『R-1ぐらんぷり2020』に出演。ルシファー吉岡の出番はBブロック。


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