モグライダー表紙

「千鳥・大悟さんと感覚が近くて安心する」個性派芸人・モグライダーが信じる道

「どこからが台本でどこからがアドリブなんだ?」

モグライダーの漫才を見た人はきっとそういった感想を持つと思います。ボケ・ともしげのポンコツキャラを活かした独自の漫才スタイルが持ち味の彼ら。

かつて、メイプル超合金のカズレーザーは「俺らはモグライダーが売れるの待ちなんですよ」とコメントしています。

芸歴を重ね多くの同世代の芸人が活躍する中、今モグライダーが考えることはなにか?その胸中を『東京で考え中』で語っていただきました。


立川:ランジャタイさんをインタビューしたときに伝言を預かったので、まずはそれを伝えようと思います。国崎さんいわく、芝さんは結婚されてファンが毎秒減ってるそうですが…

芝:今のところ、出待ちみたいなのは減ってますね。大体ライブが終わったら(ランジャタイの)国崎と飯食いに行くんですけど、あいつの出待ちが終わるのを待ってからです。

立川:なるほど。伊藤さんからは舞台袖でともしげさんと一緒になった際に闇でキスされそうになって、「あれはどういう感情だったの?」と。

芝:したの?

ともしげ:いや。でも火のないところに煙は立たないですもんね。僕、男芸人の中でもかわいい感じのタイプの人が女装するとセクハラさせてもらうようにしてます。男が好きではないですよ。伊藤ちゃんはたしかにちょっと綾波レイっぽいからもしかしたら触ってエスカレートしちゃったのかもしれない。

芝:綾波レイではないけどね、コシノジュンコみたいな顔ですけど。

ともしげ:嫌がるとやりたくなっちゃうんですよ。興奮するというか、変な意味じゃなくてね。

芝:今の録っといてくださいね(笑)

モグライダー5

ともしげ:「大キライ、大キライ、大キライ、大スキ」ってモーニング娘の曲であるじゃないですか。嫌いと言われててもゴールしちゃうパターンがあると思うんですよ。日本エレキテル連合の中野さんと松尾アトム前派出所がご結婚されましたけど、まさにそれだなと思いました。

立川:R-1ぐらんぷりの時期ですが、芝さんは2019年の大会で準決勝まで進出されてましたよね。準決勝まで進んだのは昨年が始めてですか?

芝:そうです。こんなこと言うといつもピン芸人さんに怒られちゃうんですけど、ちょろい大会だなと思っちゃって…でも勝ち進んでいくと全然雰囲気が違うので、これは場違いなところに来ちゃったなと考えを改めました。

ともしげ:事務所の先輩のルシファー吉岡さんが4年連続で決勝進出してて、「ともしげさんは何もやらないの?」と言われて僕も出たんですよ。そしたら1回戦で落ちちゃったので、自分のことを過剰評価してるところがあったと認識しました。さすがに1回戦は突破するかなと思ってたから、ちょっと胡座をかいてたのかもしれないです。ルシファーさんを毎年観に行ってるので、今年もまた観に行こうと思います。

芝:そう、観に行くんですよ。去年の準々決勝で、僕は座り込んでやる漫談をやってたんですけど、2列目くらいにこいつがいて、めちゃくちゃやりづらかったですね。笑わないし。

ともしげ:そんなことないよ、笑ってる部分もあるよ。楽しいですもん。お笑いが好きですからね。なかなかお笑いに好かれませんけど…

立川:今のようなアドリブ性のある芸風はいつ頃からですか?

芝:結成して1、2年目くらいからですね。それまで僕は漫才でボケしかやったことなかったんですけど、ツッコミの方が自分の手に馴染みそうだなと思って、ボケの人を探してたときにちょうど出会ったんですよ。顔もはっきりしてるし、自分と違うタイプの人だったので、そこから2人でやろうと思ったら「ツッコミやりたい」と言われたんですよ。僕からすると全部外れのことを言ってるし、やってるから、それもボケだと思ってました。

ともしげ:僕は「ネタの人力舎」から来てるので、最初の1年くらいはコントをやってたかな。

芝:まずはお互いを知るために、1年間は文句を言わずにコントも漫才もいろいろやってたんですけど、ウケる箇所って大体決まってくるじゃないですか。結局どれをやっても、ネタにない変な間ができたときや単純に間違えたときとかに、自分がアドリブでなんとか処理したときが1番ウケると気付いたので、そっちがメインのネタになりました。2年くらい経ってからですね。それがもう今や行き過ぎて、ネタ0の状態で出たりするときもありますけど。

立川:ネタが0の状態というのは、芝さんからネタのつかみを振る感じですか?

芝:そういうときもあったんですけど、結構注文が多いんですよ。喋りだしは自分からじゃないとスイッチが入らないって言うから、全部喋りだしはこいつからです。一応舞台に出る直前にネタを確認して始めてもらうんですけど、新ネタは絶対に間違えるので、そこだけは信頼してるんですよ。なので1回目が1番ウケますね。

モグライダー4

立川:新ネタを作っても明確なネタ合わせはしないということですか?

芝:ほとんどないですね。なんとなくやってる様子が浮かべば採用しようみたいな感じです。書きようもないですし、どうやって間違うかもわからないし、間違わないかもしれないし、間違えてもおもろくないときもありますから。

ともしげ:芝くんの頭の中でできあがっていくので、特殊と言うか、他のコンビとやってることは違いますね。

芝:感覚的にはネタというよりも企画を考えてる方が近いかもしれないです。ライブが増えると出番が多いのはありがたいんですけど、ネタの消費が激しいので、その日1回しかやらないネタも山程あります。やりすぎると慣れちゃうからね。

ともしげ:そうですね。同じように間違えるとあまりウケないし、ハプニングをわざと狙いにいくとウケなくなるという、これが難しいですよね。賞レースとか全然関係ないところで死ぬほどウケたりするから悔しかったりするんですよ。二度と同じことができないというか、自分でコントロールできない部分でもあるので。

芝:そこの儚いところはありますね。ウケると思って間違えるほど寒いことはないですし。

立川:「こういうセリフのやり取りしよう」みたいな話し合いをしたりするんですか?

ともしげ:トークのテーマを教えてくれる感じですね。

芝:ネタの構造でいうと、自分が知ってる話をするときもあるし、何かのものまねをやってそれを同じようにやってもらうとどうなるかというのが多いですね。こいつのフィルターを通すとねじ曲がって違うようになっていくか、できそうになったら負荷かけてみるかとか、そういう感じであんまり作品性はないですね。

立川:これまでの活動の中でコンビとしてターニングポイントは何ですか?

芝:「THE MANZAI 2014」で認定漫才師になったことが大きかったです。大阪の芸人さんからいまだに言われます。僕らは賞レースで決勝もいったことないし、成績では1番大きいと思いますね。

立川:ではネタ以外で頑張ってることはありますか?

芝:この仕事をやってて売れてない奴はみんな何かないととか、趣味を仕事にとか思う場面も結構あると思うんですけど、定期的に考えてもいつも答えが出ないんですよ。趣味を聞かれても全部削いでったらお笑いが趣味なのかな、これって今の時代売れないのかなと思ったんですけど、最近になって千鳥さんがすごいブレイクしてますよね。
大悟さんがちょこちょこご飯に連れてってくれるんですけど、余計なことが一切ないんですよ。好きなことはやるし、好きじゃなきゃやらないし。もちろん大人の判断もあるでしょうけど、それがすごくはっきりしてて、偉そうな話ですけど、とても居心地が良い人だったんです。あれだけ売れてる人と感覚が近くてちょっと安心する部分もあったので、これだけはできるということをやってればいいと思って最近はあんまり考えなくなってきました。

モグライダー3

ともしげ:僕はチャンス大城さんのことをおもしろいと思ってるので、チャンスさんの要素を取り入れるために同じバイトを始めました。工事現場のバイトを一緒にやって人となりを学ばせてもらってます。優しいし明るいしすごいんですよ。

立川:取り入れられそうなところはありますか?

ともしげ:言葉に出しづらい雰囲気ですね。あの人だからおもしろいみたいなところがあるじゃないですか。ハートの強さかもしれないですね。

芝:あの人こそストイックなところがあるよね。最後にウケればいいみたいな。考え方がシンプルな人たちがおもしろいし、自分らもそうでありたいです。自分の中での優先順位はウケることが1番というのははっきりしてます。もちろん笑いの幅は持ってなきゃいけないんですけど、毎日普通に生活してるだけでお笑いの脳みそは使ってるわけですからね。

立川:そうですね。結局継続してる人が報われるイメージがあります。ミルクボーイさんも12年あのスタイルだったと言ってますし。ではご自身たちが飛躍するために考えることや悩んでいることはありますか?

ともしげ:僕は衣装問題ですね。衣装を短パンとTシャツと裸足にしてるんですけど、ナイツの塙さんに靴を履けと言われているんです。ぺこぱが着物脱いで跳ねたとかあるので、スーツを着るのか、靴を履くのかいろいろ悩む部分ではありますけど、どれも似合わないんですよ。衣装を変えるだけで売れるんだったら、衣装なんか死ぬほど変えてもいいんですけど。

モグライダー2

芝:先輩たちが言ってる意味もわかるんですよ。普通の格好してるやつが普通かと思ったらわけわかんないからおもろくなるっていう理屈もわかるんですけど、似合わないことはやらなくていいという考えもあって、とりあえずそれで今のところはこれで落ち着かせてます。

ともしげ:僕が1番最近相談したのがエルシャラカーニのしろうさんで、「俺はスーツを着たのを後悔してる」と言ってました。それを信じて今の所変えないようにしようとなんとなく思ってます。
それこそ2014年に芝くんから靴を剥ぎ取られたんですよ。似合わないからやめろって。それで認定漫才師になったので、験を担いで履いてないってのもあるんですよ。本当は靴下をちゃんと履いて舞台に出なきゃいけないとかあるんですけど。

芝:内海桂子師匠が「膝小僧出してやってる漫才師はだめだよ」と言ってたよね。僕らが入った時はマナー教本みたいなのがあって、「アイロンを持ってなさい」とか、「演歌歌手の人のことは先生と呼びなさい」とか。僕らは最後の世代でしょうけど。

ともしげ:「髭は必ず剃ること」とかね。赤もみじの村田くんなんて髭生えまくってますからね。本当はダメなんですよ。令和になって変わったんでしょうけどね。

立川:今後もっとやっていきたい仕事は何ですか?

芝:僕は基本的にテレビだけ見て育っちゃったんで、ロケとかもそんなに行きたいって思うタイプじゃなくて、誰かが録ってきたVTRスタジオで見たいだけの人間です。

ともしげ:内村さんスタイル…

芝:だけのって言ったら怒られちゃうけど(笑)だからスタジオにずっといられる仕事がしたいです。単純に司会ですかね。MC業はずっと憧れでしたから。

立川:芝さんのライブMCはいろんな芸人さんが評価しているイメージがあります。

芝:結構呼んでもらいますね。最初はそんな意識してなかったんですけど、モダンタイムスのとしみつさんや錦鯉の隆さんがライブの司会をやってるところを見ていたら、周りの発言を全部拾っておもしろくしてたんですよ。この仕事はやりがいあるなと思って、自分らの月1のライブのときになんとなく自分が司会やるようになったんです。そうするとやっぱ楽しい瞬間は結構あったし、ネタの感じも相まってだと思うんですけど、その場で何か起きてそれをどうしようみたいな瞬発的にやるのが多分向いてるんだと思います。

立川:最後に今年特に頑張りたいことを教えてください。

芝:もうネタですね。ここ何年かで1番ネタをちゃんとがんばろうかなと思うようになりました。「おまえらM-1とかじゃないよな」と結構言われてきたし、どこかで僕らがネタを真剣にやってたら「ぽくないよな」って思う部分もあったんですよ。でもまじめに取り組んでM-1も優勝したいって気持ちもあったし、これだけ友達ばっかり売れてていつまで照れてるのって声が聞こえるようになってきたので、せめて自分らが納得いくくらいまでは詰めてみようかと思います。

ともしげ:僕はラーメンが好きで、ラーメンYouTuberのSUSURUくんのファンなんですよ。でもSUSURUくんは多分僕のファンじゃないので、この立場を逆転したいなと思います。SUSURUくんが見てもわかるように、もっと有名になって見返したいなと思いました。わけわらないことを言ってしまいました。

芝:わけはわかるけど、的を得てない(笑)ラーメンのCM出たしね。あとお芝居もちょっと興味出てきました。

ともしげ:こないだ映画デビューしましたね。でもまじめな芝居できないんですよ。

芝:短編映画のワンシーンでたいしたセリフじゃないのに入ってないし、笑っちゃうし、声もやたらでかく出しちゃうんですよ。「お芝居なのでもっとリアルなトーンで」と言われるのが新鮮でした。今までずっとお芝居なんて恥ずかしくてやれないと思ってたんですけど、ちゃんと本職の人たちの演技を間近で見るとおもしろかったですね。子どもに対する演出もおもしろくて、我々はこういうことを学ばなきゃ、いつまでも足を引っ掛けて転ばせるって演出をやってちゃだめだなと思いました。

立川:映画は公開前とのことで、公式発表を楽しみにしています。

ともしげ:僕はもっと知られてほしいと思うことがあるんですけど、2017年にやった「穴掘り天国」という単独ライブのDVDがあるんですよ。リクエストをもらってその場でネタをやるっていうネタ合わせまったくなしのストロングスタイルのライブなんですけど、結構盛り上がっていい映像が撮れたんです。パッケージの写真もかが屋の(加賀)翔くんに撮ってもらったりね。

芝:これも難儀しましたね。とにかくキラキラしたところで撮りたいと思って、六本木交差点の真ん中でヘルメット被ってつるはし持って撮ったんですよ。そしたら通報されて警官に囲まれちゃったんです。たまたま警官の1人が見たことあるって言い出して、それでなんとか怪しまれずに済みましたけど。

ともしげ:多分ほとんどの人が見てないはずなので、少しでもモグライダーをおもしろいなと思ったらぜひ見てもらいたいです。

モグライダー1

モグライダー プロフィール

ボケ・ともしげ、ツッコミ・芝大輔によるマセキ芸能社所属のコンビ。2009年結成。『THE MANZAI』認定漫才師(2014年)




サポートはすべて今後の運営費とさせていただきます。