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コロナ蔓延状況下における個人意見の見方

はじめに

この記事は特定の立場の方を非難する意図ではありません
「一見正しそうな意見があり、それを何故政府や専門家は受け入れないのか」そういった疑問に対する科学的なものの見方についてお話しするものです

長尾和宏医師について

兵庫県にある長尾クリニック院長の方です
http://www.drnagao.com/
「日本一コロナ患者を診た」と言われています
2021年8月12日に放送された「ミヤネ屋」で新型コロナを指定感染症5類に変更することを提言すると共に、イベルメクチンの有効性についても発信されました
また、なぜ5類なのかについても上記ホームページ内のブログで詳しく説明されています

何故、政府に届かないのか?

「日本一コロナ患者を診た」が本当であれば、日本で一番コロナについて詳しい現場の意見のようにも感じられますが、何故政府は聞き入れず、専門家からも批判を受けるのでしょうか?

間違っていると思われているからではありません
信憑性客観性がないからです

大きな問題を二つ取り上げます
1. サンプル数が少ない
2. 客観性がない


サンプル数の問題

サンプル数が少ないについて
「日本で一番コロナ患者を診た」では足りないのであれば、日本国内で発言できる人がいないようにも見えます。そうでもありません。
長尾クリニックが今までに累計何人の患者を診たのか数値は出ていませんが1000人診たとしましょう。

2021年6月21日の時点で、世界中で178 118 597の確定症例があります。国内でも1,179,176(令和3年8月18日0:00現在)の陽性者が出ています。何百何千人の医師が診察したデータが存在するということです。そして各大学や病院、政府はこれらのデータを分析して方針を決定しています。
日本国内の0.1%にも満たない長尾医師個人のデータを優先する根拠がないのです。
大規模な統計分析を行っていないのであれば、医師の考えによる提言が採用される可能性はあります。しかし、大規模な分析が進む中、小規模なケースの分析のみではより信憑性の高い(大規模な)分析を行ったものが採用されます。

分かりやすく例えるなら
コインを10回投げたら表が7回、裏が3回出た
だからコインの表が出る確率は70%であるとAさんは主張しています

100人でコインを各10回計1000回投げたら表が520回、裏が480回でた
だからコインの表が出る確率は52%だとBさん達は主張しています

大数の法則で試行回数が多いほど正確性は増していくことはご存じだと思います
Aさんの実験しかない場合、Aさんの実験に基づく判断はおかしくありません。しかし、より正確であると考えられるBさん達の意見がある場合、Aさんの実験に基づく判断を行うには何らかの根拠が必要になります。そしてこの根拠になるものが次の章で扱う客観性です。

客観性の問題

現代科学において正しいとされるためにはいくつかの条件があります
論文などが分かりやすいと思います。
単純に言えば主張に根拠があり、それを第三者が確認することができることです。つまり確認はできるのか?再現性があるか?です。

論文では多くの人がデータを見て、論理的な主張であるかチェック(査読)を行います。そして、現在数多くの研究者や医療機関が各種薬や、治療方法について様々なデータを取り、論文としています。それらは、査読を受けることで最低限度の正確性や客観性が担保されています。

現在長尾医師の主張には客観性がほとんどない状況であると言えます。治療法や経過観察の各種データなど何を根拠に主張されているのかが分からない。そういったものを公開することなしに結論だけを伝えられても、「正しいかもしれない一つの意見」以上の評価は科学的には行えないとなります。検証が行えないからです。
正しいか判断されるために論文として提出を行うないしは、それに類似したものを出し判断材料を提供する必要があることは長尾医師も把握されているはずですので、続報に期待したいです。


二つの問題のまとめ

サンプル数が少なく、客観的に検証することが出来ない現状では信憑性が薄いと評価せざるを得ない。そして、サンプル数が多く、最低限度客観的に確認された研究機関等の論文に従うしかないのが現状である

長尾医師のイベルメクチンについての記述では「1回飲むだけでよく効いて副作用がない。感染判明時にその場で飲む。翌日にはかなり改善する。」となっている。これを見るといいように思うが、「何人に試したのか、統計的に有意であるのか?」が不明であると、他の治験結果と比べて評価することができない。
イベルメクチンの評価を行っている論文はいくつかあり、それをまとめたものが以下の論文である。この論文が現在のユニバーサルコンセンサスであり、結論としては効果があるのかは不明であるとなっている。
Ivermectin for preventing and treating COVID-19
Popp M, Stegemann M, Metzendorf MI, Gould S, Kranke P, Meybohm P, Skoetz N, Weibel S.Cochrane Database Syst Rev. 2021 Jul 28;7:CD015017. doi: 10.1002/14651858.CD015017.pub2. PMID: 34318930.

私は、長尾医師の主張が間違っていると言っているわけではない。
現在科学的には正しいと言えないと主張しているだけである。特にイベルメクチンについて、長尾医師の研究結果に期待をしている。世界で研究が進んでいるにもかかわらず「効果があるのかは不明」となっているが、長尾医師の主張が正しいと示されたならば、世界中の治療方法が大きく変わり救える命も増える。是非、論文にしていただき、世界中の命を救って欲しい。

現在の世界の認識は、Ivermectin for preventing and treating COVID-19であり、効果があるか不明で、これを使用するのはリスクとなっています。政府としても大々的に使った薬が後から、やはり効果がなかったことが分かり批判されて選挙に悪影響を及ぼすといったことは避けたいはずです。打開策は、イベルメクチンの有効性を論文として出し検証を受けることです。効果が証明されれば、政府は使用しなかった責任を回避するために行動するでしょう。

まとめると
世界が今一番欲しい情報を持っているならば、「なぜそうであるといえるのか?」つまりデータを世界に公開して、多くの人から検証を受け、正確性を担保して世界中の医療を守っていただきたいとなります。

終わりに

新型コロナ対策で、様々な意見が出ることは良い事であると考えます。しかし、その元となる情報が正しいものであるのか今一度確認をお願いします。今回取り上げた長尾医師ですが、主張されている内容が事実であると検証された場合、とても大きな功績になります。信憑性が現在担保できていないから嘘だと決めつけず、検証可能な状態になるのを待つことが大切であると考えます。

そして一見、長尾医師の主張は全く相手にされていないように見えますが、北里大学などに代表される研究機関でイベルメクチンの研究は行われており、政府や各研究機関はその結果を注視しています。(長尾医師の声がなくても研究は行われたでしょうが)これが重要であると主張する機会を奪う形にはなって欲しくないと思います。そういった声によって着目される事もあるからです。そして聞き手も学ぶ事が必要です。無批判に受け入れる、完全に拒絶するどちらでもなく、根拠はなんなのか?を確認し、信用できるかを判断していく必要性があると考えます。

現在の政府のコロナ対策がすべて正しいものであるかと言われると私もこれは悪手なのではないかと思うものがいくつかあります。イベルメクチンに関する論文でも悪質な捏造が発覚して取り下げが行われたものもあります。(これは客観的な検証がきちんとなされている事も示しますが)
あくまで、進行中の危機であり100点満点の対応、研究は行えませんが、我々が行動を変化させることでベターな状況を作り出していくことは出来ます。誰誰が言っていたからではなく、自分で情報元にアクセスしたり、複数の人の発言を確認することでも混乱は回避できる可能性があります。苦しいご時世ですが、負けないで頑張りましょう。


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補足

イベルメクチンの個人輸入は大丈夫なの?

私はおすすめしません。「やらない後悔よりやって後悔」だと思われるかもしれませんが、効果があるか分からない以外にも危険性があります。

それは本当にそれはイベルメクチンですか?という問題です

現在、イベルメクチンに関する情報は錯綜しており、個人輸入代行業者などが宣伝を行なっていますが、メキシコではイベルメクチンとして偽物が売られていると報道されています。本当にイベルメクチンであるのか判断できる方は良いかもしれませんが、中身をすり替えられていた場合に区別はつきますか?合法的な薬が届く保証はなく、極めて危険であると言えます。

加えて、医薬品の個人輸入は申請が必要になります
個人輸入代行などを検討されるかもしれませんが、医薬品の個人輸入代行は認められていませんので、全て違法な業者となります。
詳しくは厚生労働省のサイトをご確認ください
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kojinyunyu/topics/tp010401-1.html

違法な業者から購入したイベルメクチンが正規のものであると信頼出来ますか?
ちなみにインターネットで購入したEDの薬は約40%が偽物だと鑑定されています
分かりやすいサイトがありましたので参考にしてください

https://www.yakubutsu.mhlw.go.jp/individualimport/risk/


客観的に意味があるイベルメクチンの有効性の論証とは?

現在イベルメクチンと無治療/標準治療/プラセボ/その他の実績のある治療を比較したランダム化比較試験が行われています。例えば北里大学では「COVID-19患者に対するイベルメクチンの有効性および安全性を検討するプラセボ対照ランダム化二重盲検(評価者、患者)多施設共同並行群間比較試験」を行っています。これは、(思い込みによる影響を排除するため)イベルメクチンを投与する医師、患者双方イベルメクチンが投与されたのか分からない試験になります。こういった試験を100人以上に参加してもらって実施するなどが一般的な「イベルメクチンが有効であるかどうか?」に対する主張の根拠となります。
それでも、サンプル数が少ない可能性がありますし、例えば海外のデータなどを使用した場合、それは日本人に適用できるのか?など検証しないと完全とは言えません。(緊急事態であるとして、一部検証を省く前例はあります)


イベルメクチンは効くの?

科学的に言うならば、効くか効かないかまだ誰にも分からないのが現状です。ですから、長尾医師の主張が正しい可能性も十分にあります。なので、専門家の多くは、イベルメクチンは効かないから長尾医師の主張がおかしいとは言っていないはずです。効くか効かないか分からないものを「効く」と言ってはいけないという論調のはずです。そして、効くというデータを持っているなら検証させてほしいという状況です。

盲検について詳しく

盲検は単盲検と二重盲検に分けられます
単盲検とは、患者(被験者)がどういった薬を摂取したかなどを被験者に伝えないことで思い込みによる影響(プラセボ効果)を排除した試験です。効くと言われた薬を飲んだと思い込むことで快方に向かったような気がするといったあいまいな感想を排除していくことができます。
二重盲検は、医師も投与したものが本物の薬か、偽薬かを知らずに行う試験です。医師も投与した薬が本物だと思っていた場合、無意識に患者が快方に向かったと評価(観察者バイアス)したり、誘導をかけてしまう可能性があるためそちらも分からなくすることにより更なる客観性を確保しています。


よく都合のいいように情報を集めている、都合の良い情報を作っているなどと言われていますが、データを取る人も自分がどちらの群を評価しているか分からない為、こういった実験による情報は簡単に作為を混ぜることは出来なくなります。





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