「アクティベーションのすすめ」パートナーシップで価値を最大化!
パートナーアクティベーションとは?
スタジアムやアリーナのネーミングライツ(命名権)、あるいはクラブチームが契約するパートナーシップ各社のユニークなアクティベーションをご紹介します。
スポンサーやパートナーシップ契約を結び、その権利を活用したプロモーション、社会貢献、認知拡大、ブランディングなどの「活性化策」が文字通りパートナーアクティベーションです。スタジアムやアリーナやクラブが持つ価値を認識した上でこの活性化策を企画するセンスが重要となります。近年では企業のCSV(Creating Shared Value=共有価値の創造)活動の推進も活発になっており、スポーツを活用した様々なプログラムが企画・実施されています。
チームはそもそも地域のファンが根付いていて集客力や参加者の意識が高いため、親和性のあるプログラムを実行できれば、本質的なスポーツの価値を届けることにもつながるわけです。
自社製品の広告掲出やプロモーションだけではなく、社会課題やクラブが持つ課題解決につなげる活動も大事なポイントです。そんなアクティベーションも欧米では先進事例がたくさん!面白い事例をご紹介します。
ブランドが持つ世界感を紐づける
Kiss cam! は日本でも有名ではないでしょうか?試合の合間に観客席のカップルにカメラが向けられてKissを促すしかけです。スタジアムの大型ビジョンにその光景が映し出されるわけですが、単純に盛り上げるだけでなく、最後に地元の歯医者さんやオーラルケアメーカーの企業ロゴが出てきます。「口元」を印象付ける紐づけが上手ですね。同じ時間帯に単純な企業CMを空き時間に流してもそれを見て共感する人は少ないでしょう。楽しい仕掛けとセットだから観ている人に刺さるのです。
日本でおなじみのハイチュウも実はアメリカで近年シェアを拡大しており、特にMLBでプロモーションを積極化しています。例えば、Kids Eat Freeという企画で、ハイチュウに加えてドリンクとホットドック、ポテトチップスを14歳以下の子どもたちに無料提供する企画を実施。また、カージナルスのホームスタジアムでは「HI-CHEW Family Pavilion」という、試合を観ずとも子どもたちが遊具で遊べるエリアが設置されていました。ハイチュウのメインターゲットであるファミリー層に向けたアクティベーションです。
アメリカ大手通信会社のベライゾンは、NFLのスーパーボウルのイベントスポンサーとなり「フォートナイト」の特設ステージとして、スーパーボウルの会場そっくりのものを提供しました。彼らはイベントに合わせた自社の5G通信サービスをPRしたわけですが、スーパーボールというビッグイベントの最大瞬間風速を活かしたアクティベーションも面白いものです。
ひねりを効かせた世界のアクティベーション事例
いたずら的プロモーション
Jeepとユベントスとのアクティベーションも最高です!「RENEGADE FOR A NIGHT」というJeepの企画。これはJeepのSUV車「Renegade」というブランドのプロモーションです。企画名の通り、夜中に街中の車にレネゲードがプリントされたカバーを覆うというもの。しかもそれを実行しているのがユベントスの選手たちなのです!
とてもファニーなプロモーションをユベントスのホームであるトリノ市内で行いました。これはYoutubeで配信されていて100万回再生されています。シンプルな行動で強烈な印象を植え付けていますし、ファンにとっては選手たちの関わりも見れて楽しい企画です。当時ユベントスはチャンピオンズリーグの決勝戦へ進出しており、この企画はその前に実行されました。チームへの注目度が高まっている最適なタイミングを狙うことも重要ですね。
プレミアムなポテトチップス
ポテトチップスブランドであるLaysの「Golden Grounds」というキャンペーンは壮大です。なんとNFLのスタジアムの土を使ってジャガイモを育ててオリジナルチップスを製造しました。29箇所のスタジアムから土を取り寄せて、それぞれのチームの畑に分けて育てています。つまり、29チームのオリジナルチップスなわけです。パッケージも各チームのロゴが入った仕様で、当時それぞれ200個限定で懸賞品として提供されました。厳密に言うと土を混ぜていますが、この「ストーリー」が重要であると語っています。
これはLaysのスーパーボウルへのスポンサーアクティベーションです。ファンにビールや他の飲食と共にチップスを楽しんでもらうことはもちろん、アメリカの「伝統と歴史ある農業」を想起してもらう意図もあるとか。
ペットフレンドリースタジアム
世界的なペットケアカンパニーのピュリナが目指すペットフレンドリーなスタジアム。ピュリナはセントルイス・シティSCというサッカーチームのメインスポンサーで、さらに新スタジアムのファウンディングパートナーでもあります。本社を置くセントルイスで、社会的な価値を提供すべくチームと共に、ペットの里親募集やペットをスタジアムに連れての試合観戦イベントなどのプログラムを推進しています。
具体的には人間4人と犬2匹が入れる「ピュリナクラブ」というボックスシートを観客席に設置しました。これはMLS(メジャーリーグサッカー)では初となる常設のペット専用セクションだそうです。ペットの行動と福祉に焦点を当てたピュリナの主任研究者が、建築設計事務所やチームと協力して安全性や快適性を考慮しながら構築しており、これはファウンディングパートナーとしてプロジェクトに参画し、初期段階からプログラムを創り上げることができている証拠でもあります。チケットにはペットフードクーポン、チームブランドのペット用おもちゃやおやつなどのアイテムが入ったピュリナギフトバッグが付属されているそうです。
実際にセントルイスに行った際にもチームのユニフォームを着たワンちゃんがたくさんいました!スタジアムの外にも芝生広場があり、ピュリナのドッグランコーナーで試合が始まるのをファンと待つ光景が。
「ペットは家族」というチームとピュリナの本質的な価値観が、一緒に過ごせる時間と空間をスタジアムに実装している好事例と言えます。
ひねりを効かせた様々な取り組みが世界中で実施されていますが、重要なことはパートナーシップを結ぶ企業の目的設定が明確であることです。ロゴの掲載や広告露出だけではなく、企業が持つ目的を本質的に達成していくための自由なアイデアとそのアクティベーションがこれからますます重要になるでしょう。それこそが、スポーツの価値を再認識できるスタート地点にもなるのです。
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