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「NASAゲーム」が教えてくれたこと

今日は、僕が以前体験して面白かった「NASAゲーム」について書きます。NASAゲームとは、いわゆるグループワークの一種で、こんな内容です。

ゲーム内容

<問題>
あなたは宇宙船に乗って月面に着陸しようとしている宇宙飛行士です。
月面には母船が待っていますが、機械の故障で母船から約300km離れた所に不時着してしまいました。不時着時の衝撃で、宇宙船はほとんど壊れて動きません。

しかし、次の15アイテムは壊れずに残っていました。母船に無事たどりつくために、これらのアイテム全てに重要度の高いものから順位をつけなさい。

・マッチ(箱付き)
・宇宙食
・ナイロン製ロープ(15m)
・パラシュート
・ソーラー発電式携帯用ヒーター
・45口径ピストル(2丁)
・粉ミルク(1箱)
・酸素ボンベ(2本)
・月面用の星座表
・自動で膨らむ救命ボート
・方位磁石
・水(20リットル)
・照明弾
・注射器入り救急箱
・ソーラー発電式FM送受信機

<ゲームの流れ>

1.個人で考えて優先順位をつける
2.チームで相談して優先順位をつける
3.1と2それぞれについて、NASAの解答との誤差を算出する
※誤差:アイテムごとの優先順位の差分の合計
※NASAの解答は最後に載せています。

個人の結果と、チームの結果の違い

読んでもらうとわかりますが、これ結構難しい問題です。酸素、水、食料あたりは重要そうですが、その他は使い方すら分からないものが多々あります。『宇宙兄弟』を全巻ちゃんと読んでいる僕でもわかりません。

とはいえ、ちゃんと考えれば、個人でも高得点を狙えるはず!誰もがそう思って真剣に取り組んだのですが、結果は意外なものでした。

数十人いたほとんどのメンバーが、個人で考えた結果よりも、各チームで相談して出した結果の方が、正解との誤差が小さかったのです。

このゲーム自体がその事実を学ばせるワーキングなのですが、実際に体験すると少し不思議な感覚になります。頭の切れる人がチームを底上げしたわけでもないのに、各個人よりもチームの方が良い結果が出ていることに。

この傾向を活かすには

つまり、一人ひとりの経験、知識、着眼点などの違いが集まると、各個人が出す結果よりも、良い結果が出る傾向がある。求められる成果の内容にもよりますが、これは自分に自信がある人ほど意外な結果だと思います。

これを活用している具体例として、システム開発における見積り手法の1つに、「プランニングポーカー」というものがあります。

この手法では、想定される開発ボリュームについて、まずチームメンバー各々が考えます。そして全員でその数値を見せ合い、個人間で差が大きい箇所について、互いの見積り根拠を会話しながら誤差を埋めていくのです。

その結果、見積りの精度が高まり、かつ全員が納得した状態になります。マネージャーなどが1人で決める見積りよりも正確な数値をチーム合意の上で出すことができて、メンバーの精神衛生的にも良い。

このような活用はシステム開発に限った話ではないため、色々な場面で応用が効くと思います。うまく運用するには人数や役割調整などの環境づくりは必要だと思いますが、細かく検証しつつ試していけば大きな効果が生まれるかもしれません。

個人とチームのバランスを

最近は、「個人の力」にやや注目が偏っているように感じます。個人のスキルを高めて、独り立ちできるぐらいの力を身に着けよう、といった流れが強く、フリーランスも増えています。

それ自体は間違いないのですが、一方で、個人に頼りすぎない「チームの力」も理解しておかないと、頭でっかちな人や、逆に自信が持てない人が増えかねません。

最近見たこのけんすうさんのnote「個人に目を向けないほうがいい」という言葉で語られている内容も(新卒向けの内容ではありますが)、近い話のように感じました。個人ではなく、組織で捉えるという考え方です。

もちろん今の時代、個人の力もつけていく必要はあります。でもそれと同時に、チームや組織で取り組むからこそ、価値が高まるものや、意味が出てくるものがあることも知っておくと、バランス良く生きていけるのかなと思います。

さっき無料公開中の宇宙兄弟を読んで、そんなことをぼんやり考えました。

 

(おまけ)NASAゲームの解答

1位 酸素ボンベ:生存に最も必要。重力が小さいため重さは考慮不要。
2位 水:生存に必要。特に陽があたる月面では大量の水分が失われる。
3位 月面用の星座表:進むべき道を確かめるのに必要。
4位 宇宙食:エネルギー補給に有効な手段。
5位 ソーラー発電式FM送受信機:母船との通信に使う(近距離でのみ可)
6位 ナイロン製ロープ:崖の高さの測定、けが人の運搬ができる。
7位 注射器入り救急箱:宇宙服の特殊孔からビタミン剤や薬を注入できる。
8位 パラシュート:太陽光を遮断するのに役立つ。
9位 自動で膨らむ救命ボート:炭酸ガスボンベが推進力として使えるかもしれない。
10位 照明弾:母船が見えたとき遭難信号を送れる。
11位 ピストル:発射の反動で少し前進できるかもしれない。
12位 粉ミルク:宇宙食と重複し、宇宙食よりかさばる。
13位 ソーラー発電式携帯用ヒーター:陽のあたる側なら必要ない。
14位 方位磁石:月面では磁気がないので役に立たない。
15位 マッチ(箱付き):酸素がないので燃焼を維持できない。

ネット上で見つけた解答を簡潔に加工したものです。(公式情報のようなものが見当たらず。。)
※誤差は46~55あたりが平均だそうです。

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