【2008年06月】のドラフト記事を発掘した

お疲れ様です。しんくです。
ふと思い立って昔に書いた記事を探していたのですが、アップしたサイトはすでになくなっているのですよね。そんなわけで、下書きがどこかに無いか探したところ最近になってようやく見つけたので、供養のためにnoteにアップをすることにしました。
16年前の記事ということもあり今とは様々な違いがあります。現代ではそのエキスパンションのドラフトアーキタイプを公式側が説明しているというのもその一つです。当時は説明されていなかったため、そのアーキタイプ自体を推測するところからがドラフトだったのですが、今はもう用意されたアーキタイプを目指す戦いかもしれません。
それでも、Magicのドラフトは面白いという事実は変わらないのが素晴らしいところ。昔の記事を見て今との違いや今でも通用する技術の確認になれば幸いです。

【ドラフト】アーキタイプ論

ドラフトはMagicの中でも非常に奥深いレギュレーションです。一期一会のカードに最強を求めなければなりません。それには経験がものを言う世界があります。やった回数だけ強くなれるレギュレーションといっても過言ではないでしょう。しかし、すべての人が無尽蔵にドラフトが出来るわけではありません。いろいろな限界があります。それは時間だったり、お金だったり、ドラフトをやる機会だったり、人によって様々でしょう。

ではその少ない回数の中で強くなるためには?

そのひとつとして提案するのがこれから紹介するアーキタイプ論です。1回ごとのドラフト経験を濃いものにすれば、レベルアップは早まるのではないでしょうか。そんなドラフト自体を考えてみたレポートになります。ドラフトをするあなたのお力になれれば幸いです。

このレポートは次の項目に分かれております。


1、ゲームデザイナーの意図を読み取ろう

Magicは人間が作っているゲームです。したがってそこには必ずデザイナーの意図が出てしまいます。作り手がドラフトを意識して作ったカードが出ることも珍しくなく、むしろリミテッドでしか活躍できないカードが出ることも散見されます。最近のエキスパンションではその流れはより顕著で、カードだけではなく、こんなドラフトデッキを作って欲しいという意図まで見えてくる事もあります。

最近のエキスパンションを例に挙げますと、ローウィンでは種族がフィーチャーされておりました。したがって(少し…いや、かなり乱暴な言い方になりますが)ドラフトでも種族をそろえてカードを集めるとデッキが組めるようになっています。なぜなら、種族ごとに色が決まっているからです。たとえばエルフを集めると、緑と黒。巨人を集めると赤と白、など。エレメンタルを集めると5色になってしまいますが、赤を中心に多色マナのサポートが出来るようになっていました。

また、シャドウムーアの場合、色が重要なファクターとなっています。これまでも多色環境(複数の色を使ったほうがより強くなるようにデザインされているエキスパンション)はありましたが、今回の場合はいつもの様な単純な多色推奨とは少し違うようです。
今回の環境を少し乱暴な枠組みで解釈します。

普段の環境ではMagicは白、青、黒、赤、緑の5色がありますので、1色でデッキを作ろうとすると、全カードプールの5分の1、2色だと全カードプールの5分の2が使用可能になる計算が出来ます。
それに対して、この環境を白、青、黒、赤、緑の基本5色に加え、(白青)、(青黒)、(黒赤)、(赤緑)、(緑白)の混合マナを加えて10種類に分けて考えて見ます。
このように考えると、たとえば赤1色でデッキを組む場合、赤、(黒赤)、(赤緑)の3つが使用可能です。全体のカードプールの10分の3になります。これを白青の2色で考えると、白、青、(白青)、(青黒)、(緑白)の5つが使えることになり全カードプールの10分の5、なんと全体の半分が使用可能になります。普段よりもカードの選択の幅が広がったことがわかります。
このように見ると2色で組むことのメリットが光るように見えますが、

  • 単色:20%→30%(1.5倍の増加)

  • 二色:40%→50%(1.25倍の増加)

となっており、実は普段より単色で使用できるカードプールが、より広がっていることがわかります。いつもよりも1.5倍も単色デッキが組みやすくなっていると考えると、単純に多色ドラフトを推奨しているだけではないとも読み取れます。このようなデザイナーの意図は、全色に存在する基本地形を数えるアンコモンの存在からも伺えます。
もっともこの数値は実際のハイブリットマナの数や二色のシナジー、アーティファクトを計算に入れていない物なので厳密なものにはなりえませんが、実は単色デッキも推奨しているデザイナーの意図を読み取るサイン足り得るのではないでしょうか。

この様にデザイナーの意図を読み取ることができれば、ただ単にカードを集めるだけのドラフトから、一歩進んだドラフトデッキを作ることができる様になると思います。せっかく近道の階段を用意してもらっているのにそれを無視するのは勿体ありません。新しいエキスパンションが出たら、ぜひそのデザイナーの意図に注意してみてください。

2、アーキタイプって何?

アーキタイプという言葉をグーグル先生やウィキペティア教授にお伺いを立てると、哲学用語が出てきてしまって困ってしまったのですが、この場所で説明したい意味は、ロールプレイングゲーム(RPG)などで出てくる、キャラクターの基本的特徴を表すものとしての言葉です。テーブルトークRPGやMMORPGなどではなじみの深い言葉かと思われます。
そのRPG的世界を例に出して説明しますが、戦士ってどんなの? と聞かれれば、だいたいの特徴を答えることが出来るでしょう。武器のエキスパート、前線で戦うイメージなど。同様に魔法使いとか盗賊なんてのも想像しやすい物です。
それは、戦士とは「これ」といったイメージが確立されているためです。そのため、戦士であれば杖をかざして魔法は使うと想像する人はいませんし、ハンマーを振り回す盗賊なんてのを想像する人もいないでしょう。かっこ悪いような気がしますし、何より弱そうです。

ドラフトのデッキも同じです。
小さいクリーチャーを並べて数で押すウィニーデッキを作っているときに、6マナの大型飛行クリーチャーは必要ありませんし、序盤が不安なデッキであれば、マナが軽いけどタフネスが高いだけのクリーチャーなんてのも十分な戦力になります。アーキタイプにあった装備(カード)を選択する必要があるわけです。そういった部分から、今から自分が目指そうとしているデッキアーキタイプがどういったものなのかを知っていれば、ドラフトのときに困ることが少なくなるでしょう。このアーキタイプに必要なカードというものを考えて取る事が出来るのですから。

シャドウムーアであれば、デザイナーは友好色2色、もしくは単色デッキを意図しているようですから、単純に考えて10のアーキタイプが存在することになります。無数に散らばるカードも、実は10のデッキを組むためのパーツだと思えば、少しは見えてくるのものが違うのではないのでしょうか。

3、属性をつかむ

デッキのアーキタイプを考える時に考えたいことがいくつかあります。前の章の話に習うとするのであれば、このデッキは戦士系なのか、魔法使い系なのか。というところです。Magicのプレーヤーは全員魔法使い(という設定)ですから、炎系の魔法使いなのか、光の呪文に長けているのか、なんて考えるのも楽しいかもしれませんね。そんな彼らもメリット/デメリットがあります。戦士であれば攻撃力はあるが、動きが遅い。盗賊なら…。魔法使いなら…。etc...そんなアーキタイプの特徴を「属性」という言葉で表しました。長所を伸ばす。短所を補う。そんな事も、自分の長所短所を知っていなければ行うことが出来ません。そんなデッキの特徴をこの章では考えてみたいと思います。

ドラフトデッキであれば、主に考えられるのはこの部分です。

  • デッキスピード

  • キーカード依存性

  • コンボの存在

それぞれについて解説をしていきます。

・デッキスピードについて。

早いデッキであればマナの重いカードが不要になるのは言うまでもありませんが、遅いデッキであれば、より"時間稼ぎ"のためのマナの軽いカードが不可欠になります。環境の早さにもよりますので一概には言えませんが、個人的には3マナを基準に重いか軽いかを考えています。そのように判断する理由は、「40枚デッキ、土地16枚」の場合の初手(7枚)での土地平均値が2.8枚であるためです。初手にある土地で行動できれば早いデッキ、それから数ターン後に引く土地まで計算するのが遅いデッキと言えるのではないでしょうか。

自分のデッキスピードがわかれば、自分が主導権を握る時間(ターン)が計算できます。Magicで重要なテンポとアドバンテージのせめぎあいを自分の土俵、つまり得意なターンで行うことが出来れば、勝利に近づきます。逆に考えると、どんなに強いカードでも、デッキスピードに合わなければドラフトではピックする価値がないのです。

・キーカード依存性について

このデッキにはこのカードがあると強くなる。あるいはこのカードがあるからこのアーキタイプが選択できる。なんていう強さを持ったカードがある場合、この部分が重要になります。

この属性が高いデッキの場合、一番大事なのはそのキーカードの出現率です。コモンか、アンコモンかというのはもちろんですが、アーティファクトのような全員が取れる可能性があるもの、色が薄いものなんかはドラフトで回ってくる確率が減るため、出現率が下がると言い換えることが出来ます。逆にアンコモンでも取られる率が低いようなカードは出現率が高いと言えます。
パックから出現するかどうかという0回戦が存在するのが辛いところです。

・コンボの存在について

キーカードとは違い、AというカードもBというカードも単体でそこそこ使えるけれども、両方を組み合わせると非常に効果的に動く場合、ドラフトであろうともコンボデッキといえます。たとえば、マッドネスカードと手札を捨てるカードの相性、コンボ性については考えやすい部類ではないでしょうか。種族関係の特殊効果もこの部類に入るかと思います。この効果が緩やかだとシナジー、劇的だとコンボという言葉に置き換わる印象があります。
この様なデッキの場合、普通に強いといわれるカードよりもコンボパーツの方に重きを置くドラフトになります。《火の力/Power of Fire》をピックした後の《ピリ=パラ/Pili-Pala》は、初手級カードに勝るとも劣らない魅力的なカードに変身するでしょう。

この属性はアーキタイプの中に潜在的に存在しており、コンボパーツの一方が取れた場合に浮かび上がってくる事がほとんどです。そのために知識が物を言います。そのコンボを知っているかどうか。それはどのくらいの価値のあるコンボなのか。その判断を自分が今まで取ったカードから考えてドラフトの短い時間の中での取捨選択。これはドラフトの醍醐味の一つではないでしょうか。

それぞれの属性が高いか低いか。それを見極めてカードを選択することが強いデッキを作成し、アーキタイプの理想に近づける行為だと思います。

4、終わりに

ドラフトは難しいゲームです。考えることが非常に多すぎて、覚えることが非常に多すぎて、そしてやるべきことが多すぎます。難しくて勝てないと嘆く方もいらっしゃるかもしれません。そんなあなたへの考える道しるべになればと思い、このレポートを作成しました。考える道筋に明かりがともれば、覚えるべきこと、やるべき事が見えてくるかと思います。そして、それが少しでも勝利の手助けになればと思います。

では、ドラフト好きが増えることを願って、筆をおきたいと思います。
最後に、このレポートを推敲するに当たり友人の力をお借りしました。この場を借りて感謝したいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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