「光る君へ」への長い道のり ~『第23回 「雪の舞うころ」振り返り』(その4)(ネタバレ)~[4139文字]
大河ドラマ「光る君へ」 第23回『雪の舞うころ』 の振り返り、その4です。
※以下より、第23回のストーリーを記述しています。未視聴の方は先に第23回をご視聴ください🙇。
■[第23回『雪の舞うころ』 振り返り]その4
長徳三年(997年)、越前・国守の館。
為時〔岸谷五朗〕は、まひろ〔吉高由里子〕相手に宣孝〔佐々木蔵之介〕がいっこうに姿を見せに越前にやって来ないと愚痴るのだった。
為時「宣孝殿は去年、『年が明けたら宋人を見に越前に行くか』と文をよこしたが、とうとう来なかったな」
まひろ「もう春でございますものね」
為時「相変わらず、いいかげんなやつだ」
まひろ「愉快でお気楽なところが、宣孝様のよいところでございます」
為時「まあ、最初から来るまいとは思っておったが」
まひろ「私も、決してお見えにはならないと思っておりました」
為時「ハハハ・・・。宋語の勉強は進んでいるのか?」
まひろ「まだまだ父上には追いつきませぬが」
為時「楽しそうだな」
まひろ「はい。宋語を学ぶのは、面白うございます。音を聞けばおのずから漢文が浮かんできて・・・」
為時「うむ。お前は覚えがよいから、周明も教えがいがあろう。幼い頃、漢詩も一度聞けば覚えてしまって驚いたものだ。長い間、わしが官職を得られず、そなたによい婿を取ってやれなかったこと、すまないと思うておる」
まひろ「どうなさったのですか?いきなり」
為時「周明は骨のありそうな男だ。彼の人にとっても、お前は救いであろう」
まひろ「私と周明はそのような間柄ではありませぬ」
為時「そうか。うん、それならそれでもよい。好きにせい」
まひろ「それはございませぬ」
為時「明日からわしは越前国内の巡察に出る」
まひろ「ならば、私もお供しとうございます」
為時「そなたは、ここにおれ。雪も解けたゆえ、心配するな」
春の日差しに光る砂浜の海岸ー。貝殻をひとつ拾い、まひろは波打ち際に立って海を見ていた周明〔松下洸平〕のもとに歩く。
まひろ「(宋語)海の向こうは宋の国」
周明「うん」
まひろ「つがいのカモメ・・・」
周明「フーフー ハイオウ。夫婦のカモメだ」
まひろ「フーフー・・・。周明には妻はいないの?」
周明「いない」
まひろ「ほかの人たちには身寄りがありでしょ?恋しくないのかしら。帰りたい人は帰るのがいいと思う。待ってる人もいると思うし」
周明「俺に帰ってほしいのか?国守様の仕事の手伝いか?」
まひろ「わたしがどうしたいかは関わりないわ。宋の人たちが、どういうふうにしたいかが大事だと思っただけ。父の力にも・・・なりたいけれど、それが全てではないわ」
周明「朱様が帰ると言わない限り、俺たちは帰らない。なぜ朝廷は宋とじきじきの商いを嫌がるのだ」
まひろ「分からない。なぜあの人は、そこまで頑ななのかしら・・・」
周明「あの人?あの人とは誰だ?」
まひろ「左大臣様」
周明「今、左大臣と言ったか?」
まひろ「ええ。帝の次に偉い人。「知り合い」は何と言うの?」
周明「シィァンシー。友はポンヨウ。知り合いは、シィァンシー」
まひろ「ポンヨウ、シィァンシー・・・、シィァンシー・・・」
高台に馬をとめ、ふたりを眺めている宣孝。側には乙丸がいる。
乙丸の声で、高台から降りて来る宣孝に気付く。
宣孝「宋人を見に参った!」
まひろ「本当にいらしたの?」
周明「(まひろの方を見て)誰?」
まひろ「遠い親戚で、父の長年の友、藤原宣孝様。都からお見えになったみたい」
周明「私は周明。宋の薬師だ」
まひろ「父の病もあっという間に治してくださった名医なの」
宣孝「そうか・・・。それは世話になったのう」
周明「(頭を軽く下げた後、まひろに宋語で)客館に戻る」
まひろ「え?どうして?」
周明「(宋語)また会おう」
まひろと宣孝に向い、拱手の礼をして去っていく周明。目で追うまひろ。
まひろ「ザイジィェン」
まひろを見る宣孝。
国守の館ー。
宣孝「越前はどうじゃ」
まひろ「国司の仕事ほど、楽で儲かる仕事はないと仰せになっておりましたけれど、とんでもない見込み違いでございました。私も必死で父の手伝いをしております」
宣孝「それで、宋の言葉も学んだのか。ご苦労なことだな」
まひろ「羊も食べました。おいしくはございませんでした」
宣孝「分からな過ぎる・・・。お前に何が起きておる」
まひろ「文を下されば、父も巡察の日取りを変えましたのに」
宣孝「昨年、年が明けたら宋人を見物に行くと、文は出したぞ」
まひろ「父も私も、決してお見えにはならないと思っておりました」
宣孝「来て悪かったか?」
まひろ「そのようなことはございませぬ。されど都でのお役目があるゆえ、そう気軽には越前においでになれまいと」
宣孝「物詣と偽って来た。越前のことが内裏でしきりに取り沙汰されておったので、為時殿が心配になってな」
まひろ「そのようなことが、内裏で明らかになれば、父までおとがめを受けます」
宣孝「案ずるな。明後日にはたつ。長居して露見したら、お前に叱られるゆえ」
まひろ「またそのような!」
宣孝「そのプンとした顔が見たかった。これは都で流行っておる肌油じゃ。お前のプンとした顔がますます生きるぞ。ハハハハハ・・・。これは為時殿に『玄怪録』」
まひろ「『玄怪録』?(巻物の匂いを嗅ぐ)都の香りがいたします。(巻物の匂いを嗅ぐ)ほら」
夜ー。まひろは越前のウニで宣孝をもてなす。
まひろ「ウニでございます。越前のウニはまことにおいしゅうございますよ」
宣孝「都の塩ウニとは違うが・・・」
まひろ「(ウニをひとつ取り、匙の柄で穴をあける)こうやって・・・。うわ~!今朝、採れたウニですの」
宣孝「すっかり越前の女のようになっておるな」
まひろ「(宣孝にウニを渡して)私も頂きます(新たにウニを取り、穴をあけて半分に割る)。こうやって(匙ですくう)頂きますの。ん~」
まひろを真似て宣孝も食べる。
宣孝「おお!磯の香りがすごいのう(笑い声)。このようなウニは帝もご存知あるまい。会うたびにお前はわしを驚かせる」
まひろ「この生ウニには、私も初め驚きました」
宣孝「そういうことを言ってるんではない」
まひろ「は・・・?」
宣孝「わしには3人の妻と4人の子がおる。子らはもう一人前だ。官位もほどほど上がり、これで人生もどうやら落ち着いたと思っておった。されど、お前と会うと、違う世界がかいま見える。新たな望みが見える。未来が見える。まだまだ生きていたいと思ってしまう」
まひろ「まだまだ生きて、私を笑わせてくださいませ」
宣孝「怒らせて・・・であろう?」
まひろ「どちらでもようございますけれど、父とて国守を力の限り務めております。宣孝様の人生が先に落ち着くことなどありえませぬ」
縁でまひろが弾く琵琶を聞きながら、酒を飲む宣孝。
宣孝は、そっとまひろの横顔を見つめる。
松原客館ー。
周明が宋語で朱仁聡に報告している。
周明「国守の娘は左大臣とつながりがあります。もしかしたら、左大臣の女かもしれません。うまく取り込んで左大臣に文を書かせます。朱様のお力になれるよう」
部下の宋人「こいつは日本人だということを隠しておりました。信用できません」
朱仁聡「私は周明を信じる。やってみよ。皆の信用を勝ち取れ」
周明「はっ。事が成就したなら、私を宰相様の侍医にご推挙ください」
部下の宋人「調子にのるな!」
部下を制し、朱仁聡は周明を見る。
朱仁聡「そなたの働きで、宋と日本との商いの道が開ければ、望みはかなえよう」
周明「全力を尽くします」
ひれ伏す周明。
国守の館ー。二日間を過ごし、都に戻る宣孝を見送るまひろ。
宣孝「あっという間の2日間であった」
まひろ「父がいたならば、どんなにか喜んだことでございましょう」
宣孝「為時殿によろしく伝えてくれ」
まひろ「道中の糧でございます」
宣孝「おお・・・ハハハ。ウニをもっともっと食べたかったのう」
まひろ「食べ過ぎはいけません。過ぎたるは及ばざるがごとしと申しますでしょ」
宣孝「まひろ」
まひろ「はい」
宣孝「あの宋人が好きなのか?あいつと宋の国などに行くなよ」
まひろ「何のことでございますか?」
宣孝「前に言うておったではないか。宋の国に行ってみたいと」
まひろ「ああ・・・。そんなこともございましたね」
宣孝「都に戻ってこい。わしの妻になれ」
次回、どうする定子(´-`)。
以上で『第23回「雪の舞うころ」』の振り返り』は終了です(´-`)。
最後までお読み頂き、ありがとうございました🙇。