【司馬遼太郎さんがゆく】~司馬遼太郎と吉川英治~
司馬遼太郎さんは、時代小説、『梟の城』で第四十二回直木賞を受賞します。
その授賞式で、つかつかと司馬さんに歩み寄ったのは、『宮本武蔵』、『新・平家物語』などで有名な、戦前から国民的大衆作家として活躍していた大作家の吉川英治氏。
吉川英治氏は、直木賞の選者のひとりでもありました。
吉川英治氏は司馬さんに、
『自分は若いころ、つまらぬものを書きすぎた。あなたもその轍を踏まないように』
というような助言をしたそうです。
それに対して、司馬さんがどう答えたかはわかりませんが、なにしろ相手は戦前からの大作家。
苦笑を浮かべたか、当たり障りのない言葉で応えたか、ではないでしょうか。
記録では残っていませんが、実は『梟の城』の直木賞に、選者の吉川英治氏は反対していたのでした。
『梟の城』こそ直木賞にふさわしいと思っていた海音寺潮五郎氏は、選考会で、吉川英治氏とのやりとりを以下のように書いています。
司馬さんの作風が若い頃の吉川英治先生を髣髴とさせるといわれ、 ”だから、いやなんだ” と吉川英治氏が認めるように言ったのが事実なら、吉川英治氏は、司馬氏にかっての若き日の自分を見ていたのかも知れないですね。
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