「なぜ?」の圧力を与えずに相手からWHYを聞き出す方法
デザインリサーチでは、「ユーザーの行動理由(WHY)を重視せよ」とよく言われます。
かと言ってインタビューで正直に「なんでそうしたんですか?」と聞いてもうまくいかない場合が多いです。相手が返答に困ったり、もっともらしい優等生的な回答に逃げられてしまったりします。
うまくいかない理由の一つとして、「なぜ?」と聞く行為そのものに一種の圧力があるからです。
今回はユーザーインタビューや1on1などで、「なぜ?」と聞かないでWHYを引き出す方法を紹介します。
「なぜ?」と聞かれると、責められている気分になる
質問者にそのような意図がなくても、「なぜ?」と聞かれると、文脈や雰囲気によってはその行為を咎められたり、非難されたと受け取られることがあります。特に失敗談などのネガティブな話題だと起きがちです。
例えば、最近風邪を引いた人に「どうして風邪を引いたんですか?」聞いたらどうなるでしょうか。
質問者は風邪の原因を聞きたかっただけかもしれませんが、聞かれた方は自分が責められていると感じるかもしれません。
そうなると、「体調管理ができていない自分のせいなんです」といったふうに、聞きたい文脈とズレた回答が返ってきてしまいます。
人によっては「こっちだって風邪を引きたくて引いたわけじゃない!」と怒ってしまうこともあるでしょう。
あるいは、相手がこちらの期待している回答を推察して、それらしい「回答」を用意するかもしれません。
このように、「なぜ?」という質問は質問者の意図に反して不要な圧力を相手に与える恐れがあります。
「何があなたをそうさせたのか」を聞く
「なぜ?」への負荷が高そうなときは、理由を相手に直接聞かず、間になんらかのオブジェクトを挟み、そこに原因を求める聞き方が効果的です。
先ほどの例だと「何か、風邪を引き起こしそうなことはありましたか?」と聞きます。
ただ言い回しを変えただけに過ぎませんが、この聞き方をすることで、原因を相手以外の何か(オブジェクト)に求めているニュアンスが生まれます。
すると相手は責められていると感じず、「そういえば昼と夜の寒暖差が激しいのに、うっかり薄着で寝てしまった」といった、具体的なエピソードを思わず話したくなるはずです。
僕はこの技法を、「あなたの風邪はどこから?」と尋ねてくるCMになぞらえて「ベンザブロック法」と密かに呼んでいます(流行ってほしい)。
「なぜ?」と聞かなくても理由は話してもらえる
もちろん、相手がWHYを話せない理由は他にもたくさんあります。抽象的な考えを言語化できなかったり、行動がすでに無意識下に組み込まれていたり、根源的な欲望に結びついていて話しづらかったりなど、さまざまな理由があるでしょう。
しかし、今回紹介したベンザブロック法(流行ってほしい)を使えば、少なくとも相手の心のシャッターを閉じてしまう事態は避けられるはずです。
理由を聞くのではなく、理由を話したくなるような会話を作る。明日から使える技法なので、ぜひお試しください!