【短編脚本】Test Room
【著】大島恭平
教室へ行くと、男が一人座っていた。
広々とした教室にたった一人で。
自らの間違いに気づいた彼は、そこから立ち去ろうとするが“その男”に声をかけられる。
「何か言うことがあるんじゃないか?」
【登場人物】
・①
・②
・③
●大学の教室に②が先に座っている。しばらくして①が入り。①はとりあえず空いている席に座り、周りを見渡す。異変に気づき、携帯やら手帳を確認。友人に電話するも出ず。もう一度教室を確認。教室には②しか座っていない。②と目が合って①は教室を出ようとする。
② 待って待って!
① え?なんすか?
② いやさ、今目合ったよね?
① は…?
② 合ったよね?絶対!
① いや…分からないです
② 分からないじゃなくてさ、何か言うことは?
① は?
② 何か言うことがあるんじゃないか?
① いや、特に。
② あるだろ?言う事。え?
① だからねぇーって!
② なんで誰も聞いてくれないんだよ!
① ……は?
② 今まで何人かここへ来たよ。そしてみんな同じ反応して去って行ったよ。おかしいだろ!!普通だったら聞くでしょ?「あの~教室合ってますかね?」って。俺だったら聞くね。だって不安だもん!
① うるせぇーよ!じゃあ教務グループに行って聞けばいいだろ!?
② 怒られたくない!
① なんだそれ
② ちゃんと確認しなかったのはあなたでしょ?って冷たい対応されるのが怖い!
① どんだけビビってんだよ
② 一緒に教室さがそうぜ?
① やだよ気持ち悪い。
●③入り。少し周りを見渡して、教室から出る。
①② 待て待て待て!
③ なんですか?
① 今、なんでこの部屋から出ようとしたんですか?
② 教室間違えたんですよね?ほら、いつでも答える準備は出来てるよ~
① うるせーな。それよりも、ここに来たってことは教室間違えたんですよね?
② あなたも今不安ですよね。ほら、その不安な気持ちを僕にぶつけてください!
① 気持ち悪いよ。いや、僕も教室間違えちゃって、本当の会場ってどこだか分かります?
③ トイレです。
①② はい?
③ だから、トイレです。
① ん?
③ トイレに行こうと思ったから、教室から出たんです。
①② トイレ・・・?
③ テスト前にトイレに行って、ちゃんとベストなコンディションで臨めるようにってことで。何か間違ってます?
① 言ってる事は間違ってないですけど、来る場所を間違ってません?
③ いや、ここで合っています。
① ちょっと冷静に考えてみてくださいよ。見てくださいこの状況を!どう考えても
③ テストはここで行われます!僕は毎回ここの授業に出ていました。無遅刻無欠席。それも最前列で!そんな僕が会場を間違えるはずがない!
① はぁ…
③ だから間違いありません。
① いやでも、誰もいないんですよ?
③ それに、今更間違えたってなったら、凄く恥ずかしい
① それが本音だろ!やっぱ間違えているんだって!
② 俺もそう思う。
① やっぱそうだよな?
② テストはこの会場で行われる!
① お前もか!!
③ ほらー
① ほらじゃないでしょ!この人さっきまでこっちの見方で…
② 0と1は違う
① うるせーよ
② あたりが強い!
③ あ、もうそろそろ時間ですよ。早く席につかないと。
② 本当だ!いやぁ~昨日このテストの為に徹夜しちゃって
③ 僕も準備は完璧ですからね!
●しばらく二人でベラベラと傷の舐めあい。
① もう何仲良くなってんだよ…じゃあもう好きにすればいいじゃん…ん?
●①の携帯がなる。
① あ、もしもし、お前ら今どこいんの?うん。え?なんで15号館なんだよ!え?プリント?俺貰ってねーけど…うん、それに書いてあった?見てねぇーよ……うん、テストはまだ始まってないのね。分かった。あ、何号室?4階のデカイ部屋ね!教えてくれてありがとう!超特急で教室向かうわ!
●聞き耳を立てていた②、③。場所を確認して、こっそり教室から出ようとする。
① って、俺より先に出ようとすなあぁあああ!
①②③ダッシュで教室を走り去る。
※テスト会場は前日にちゃんと確認しておきましょう※
END