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「私的文芸年鑑」はじめに

「私的文芸年鑑」という硬いネーミングの雑誌にむけて書いた文学賞レビューと一本の批評(約2万字)を、noteのきがるなメディウムのちからを借りて公開するものです。

 「公に現代文学とされている系列を読んでいこう」いわば「小説の今風の行儀を学ぼう」というつもりはありません。わたしが「よむ」という運動を介して、この時代の小説がもつ「手ざわり」だけでも書き残すことはできないか、そしてそれを「かく」仲間たちのために共有できないかとトライするものです。だからこれは「私的」の域をでません。2018年の特異性を描き出すよりは、「かく」ことに通底する普遍的なものを書き残すことに注力しています。

芥川龍之介賞受賞作の「おらおらでひとりいぐも」を書いた若竹千佐子とわたしを結びつけるのは、北欧での「私的」な体験です。「天使」をめぐる批評「言語の自律性を利用した余白についての考察」は、フィンランドの作曲家が「光の天使」という副題の交響曲を書いていたことを想起させるかもしれない。一年という持続と、そこに産み落とされるテキストという断片とを結び付ける「余白」についての批評として読む向きもあるかもしれません。

文体を立ち上げながらジャーナリスティックな文章を「私的」に「かく」こと、それは第一に公的な時間に沿った時評であり、第二にテキストを「よむ」体験の生きた記録という意味で、二重に時間的なものとなるはずです。

あたみ りょう

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