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日本のマンガがいま世界でどうなっているのか アニメイト@タイから見てみよう

日本には100店舗ほどある漫画専門店アニメイト。
海外は何ヶ国に展開してるかご存知でしょうか。

正解は4ヶ国

韓国、台湾、タイ、中国です。

その中で中国は表現規制がかなり厳しいので、漫画本そのものよりもグッズ中心に展開されています。表現規制に引っかかるような作品でもキャラのアクキーとかは問題なく販売できるので。またビジネス上の外資規制で直営にもできづらいということで今日は本題から除きます(中国はホント色々特殊すぎるのです)。

アニメイトが今積極的に店舗展開しているのは韓国、台湾、タイの3ヶ国。去年今年で3ヶ国ともに新店舗が出店されました。

ではなぜ韓国、台湾、タイなのか?

それは世界のマンガマーケットの激変が大きく影響しているのです。

というわけでタイにオープンした最新の
「アニメイト フューチャーパークランシット店」を訪ねてきました。

バンコク中心地より北に車で3−40分ほどにあるフューチャーパークランシットという大きなショッピングモールの中にあります。ご覧の通り見た目はほぼ日本のアニメイトって感じです。

中に入るとまずモニターを中心とした新刊台が。日本と変わりませんね。
日本語の本も最新作含め置かれてます
出版社別に並んでいるのも日本と一緒。日本語の本は日本の出版社ごとに並び
タイ語の本はタイの出版社ごとに並びます
BLだけはBLだけでゾーニング
グッズもあります

海外すべてそうなのですが「海外の出版社ごと」に並べるので、日本とは全く違う並びとなります。

翻訳本はその現地の出版社が日本の出版社に対して「この作品を出したいんですけど」とオファーして許諾されることによって発売されているので、日本の出版社ごとに発売されているわけではありません。例えば上の写真にある「FirstPagePro」さん。割と新しめのベンチャーぽい漫画専門出版社さんなのですが、

「月曜日のたわわ」「パラレルパラダイス」「なんでここに先生が!?」(講談社)
「僕のカノジョ先生」(KADOKAWA)
「魔王の始め方」(ヴァルキリーコミックス)
「戦×恋(ヴァルラブ)」(スクウェアエニックス)
などなど

………男の子が好きなちょい(だいぶ)えっちな漫画を各社から集めてきました!みたいなコンセプトがすごい明確。めっちゃ「わかってる」感じしますね。

このように現地の出版社が自分の会社にあったコンセプトの作品を日本の各社と契約して出してるのが一般的な世界での漫画の発売のされ方です。

面白い取り組みもありました。
やまねあやの先生の大人気BL「ファインダーシリーズ」はうっかりタイで出版契約がされておらずタイでは未発売。しかし今から発売するにはかなり古くからやっている作品なのでリスクがある…ということでタイの出版社が及び腰だったところ、アニメイトさんが直接版元になってタイでの出版を行う、ということになったそうです。需要が見えるので商品がなければ小売が直接作っちゃえというプライベートブランドのような仕組み。タイの読者さんたちも随分ありがたかったでしょう。

このようにただ日本のマンガを出版するだけじゃない事例が世界では増えていて

こちらはベトナムなのですが、ベトナムのキムドンという出版社がKADOKAWAさんと組んでチャンピオンで描いていた馬場民夫先生に日本関係なくベトナム舞台で、ベトナムの少年サッカーで活躍する主人公の漫画を作ってもらって出版したという取り組みです。
なんと初版2万部。日本でも多めの初版ですがそもそもベトナムの一般的な漫画の初版は2000部とかそんなもの。いかにすごい数字なんだと。

今、ヨーロッパとアメリカは日本のトラディショナルな漫画、キャプテン翼であったりドラゴンボールであったりが売れ筋だったのが最新の漫画、進撃の巨人、僕のヒーローアカデミア、呪術廻戦、チェンソーマン、怪獣8号、SPY×FAMILY……などなどが売れるようになってきたフェーズなのですが、このようにアジアはさらにその先のBLなどのニッチなジャンルが爆発したり、その国オリジナルの漫画を作り始めたりとさらに一歩先のフェーズにいるのです(フランスだけはだいぶ前からマンフラと言ってフランス独自の漫画を作り始めていて欧米の中でも一歩先にいたりはします)。

それらを代表する国が韓国、台湾、タイ。そしてベトナムやインドネシア、フィリピンがそこに続き、欧米ではイタリア、ドイツ、スペインなんかがさらに続いていくように思います。自分は行ったことないんですがメキシコ、ブラジルもだいぶアツくなってきているらしい。

そして漫画文化が発達するとそこにアニメイトがやってきて各国のオタクたちの受け皿となるんですね。

タイに至っては先に第1店舗としてバンコク店ができているのですが、その店はすでにオタクなヘビーユーザーたちがメイン顧客となっており「新刊」が売れるそうなんですね。チェンソーマンの7巻とか呪術廻戦の10巻とか。それに対して今回のランシットの新店舗はショッピングモールにあることもあり、アニメ化(いまタイではNetflixがめちゃくちゃ普及してます)されてブームになってる作品が1巻から全巻購入されるなどバンバン売れていくそうです。この構図は池袋のアニメイトと地方の駅ビルに入ってるアニメイトとの対比にそっくり。タイの漫画文化の成熟を感じさせます。

そういえば自分が初めてタイに行ったのが2015年。前職竹書房ではタイの出版実績がほとんどなくBLの出版実績もゼロでした。それでもタイできっとBLは売れるはず!と現地で1冊も出てないのにアニメイトでのサイン会を敢行し、なんと100人くらいの募集が秒殺の売り切れ。それを見たタイの出版社さんが及び腰(当時のタイではえっちなBLはまだちょっと…という空気だった)からのオファー殺到に切り替わったという思い出があります。

その時行ってもらった作家先生がQpaのおわる先生。今では普通に新作が早いタイミングで特典付きで売られたりしています。何か歴史を見ているようで感慨深いですね。懐かしかったです。その節はありがとうございましたおわるさん。

数年経てば大きく変わるのが世界情勢。それはマンガも同じです。
今はまさに日本のマンガがさらに大きく世界へ普及しようとしている状態。
きっとアニメイトもさらにどんどん世界に展開していくんでしょう。
次はどこにできるのか?
それが世界のマンガの盛り上がりを指し示しているのです。

それでは最後にベトナムで出会った野良犬の姿でお別れです。
ベトナムの犬、なんか妙に可愛い犬ばかりだった。
また次のnoteでお会いしましょう!

かわええ

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竹村響 Hibiki  Takemura
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