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こんなつもりじゃなかったのに 13//小説
話を少し戻して、あの詰められた日の翌日。
胃が痛くなりながらも、出社をした。
先に来ていた代表に挨拶をする。
「おはようございます。」
「おはよう。そこの机で昨日の続きを話そう。」
やっぱり終わらないよね。。と心の中でガッカリしつつ、机を見ると、なにやら紙とペンが置いてある。
不思議に思っていると。
「そこに反省文と、今後、忠誠を誓うと言う念書を書いて。そこに書き方と入れて欲しい文言のプリントあるから。」
絶句である。
忠誠って何???
え、中世の皇帝と騎士のやつ?笑
もう話が理解できなくて、脳内がふざけた感じになってしまう。
「えっと、どういう意味でしょうか?」
「そのままの意味だよ。昨日の件、まだ許してないからさ、書いた方がまとまるし、残るから」
「反省文はわかりますが、忠誠って所は承諾できません。」
「いやいや、今後仕事を続けていく上で、失った信用を取り戻すにはそれ相応な事をして、証明してもらわないと。」
いや、私の中ではもう続けて行かないと言うことになっているのですが、、。
と、脳内ツッコミを入れつつ、でも、退職を切り出すには準備もまだまだしていないし、密室での逆上の恐れもあるので、今は言えなかった。
「はぁ。ひとまず、反省文から書きます。」
ここで言い合いしていても埒が明かないと判断して、まず出来る事をする。
もうあまりこの事で話をしたくないのだ。
反省文なら会話しなくていいし、考えるフリをしながら時間も稼げる。
会話、と考えて、あ、と気がついた。
ボイスレコーダー回さないと。
スマホを見るふりをしつつ、見えないようにボイレコの録音を押す。これはアドバイスにもあった。やはり証拠はないよりあったほうが良い。
ゆっくり、時間をかけて反省文(最早、何の反省なのか考えるのを放棄した)を書いていく。
そこまで時間をかけられないので、30分ほどで終わってしまった。
「書けた?じゃ読むから、その間、このプリント通りに念書を書いて最後署名して。」
だけど、なかなか書かない私にイライラしたのか、昨日の件を繰り返し話して来た。
そして、段々ヒートアップして、声も大きくなって来た。
このままだとまずい気がすると、身の危険を感じ、とりあえずボイレコもあるので、渋々ペンを持って書き進めた。
ノロノロ書いて提出したが、完成した書面をみて満足したのか、ガラッと優しい雰囲気になった。
例の切り替えの早さである。
あのピリピリした雰囲気は、私の精神的にも良くないので、これはこれで助かる。
その後、適当に話を合わせて、営業へと出向いた。
最近の私の営業時間は、ほぼ関係各所に連絡をしたり相談したりして費やされている。
この時ほど事務仕事でなく、外を回れる仕事で良かったと心底思った。
今日は、以前から依頼していた企業への訪問だ。
事前に履歴書は渡していて、非公式な募集だから面接を2回くらいして判断となるらしい。
その他にも、自分でエージェントで応募した企業に2社面接が進んでいる。
依頼した彼と最寄駅で待ち合わせをして、一緒に会社訪問をした。
............
1時間後、私の胸はワクワクしていた。
この素敵な人たちと一緒に仕事がしたいと思ったのである。
彼もその会社の事をよく知っており、雰囲気も良く、社員の人も皆んなすごい経歴の持ち主だし、いい人ばかりと言ってた。
やはり、信頼のおける人からの情報は宝だ。
今、窮地に立たされている会社を選んだ時は、エージェントを通さず、ホームページの理想的な謳い文句の字面だけで、勢いで決めてしまったのだ。
その結果がこれ。
現場の生の声は大事だ。本当に。