猫
猫を飼い始めた。
7月初めの雨の日の夕方、職場の後輩が事務所の外で鳴いている子猫を見つけてきた。「どうしたらいいですか」と言うので、とりあえず見に行ってみた。
植え込みの陰から白い子猫が出てきた。
すごく小さいし、濡れているし、怪我をしているようで、必死に鳴いていた。
「うーん、どうしようか……」というやりとりの後、先輩に車を出してもらって動物病院に連れて行った。
動物病院の先生によると、おそらく大人の猫に首を噛まれたのではないか、とのことだった。よく生きてたねえ、と言われた。
怪我の治療とノミ取りをしてもらった猫は、私が引き取ることにした。(ちなみに当時私は現金を1000円しか持っておらず、1万円近い診察代を先輩に立て替えてもらうという失態を犯した。)
アパートの部屋で、段ボールに入った子猫と二人きりになって、急に猛烈な不安を感じ始めた。あまりに静かなので、朝起きたら息をしていないんじゃないかと思ったら怖くなった。一人暮らしを始めて寂しいと感じたことは一度もなかったが、この日の夜は初めて不安と孤独に押しつぶされそうだった。
翌朝段ボールをおそるおそる開けてみると、猫はじっとこちらを見て蚊の鳴くような声で鳴いた。生きてる。
その後紆余曲折を経て、猫は実家に連れて行ってしばらく世話をしてもらい、その間に私はペット可の物件を探して引っ越し、今に至る。
子猫とまるで漫画かドラマのような出会いをしてしまった。
しかし実際に飼い始めるまでは周囲の人にたくさん助けてもらった。自分はなんて無力なんだろうと思った。もっとしっかりしなければならない。本当にありがとうございます。
最近知った韓国の言葉に「花道だけを歩こう(꽃길만 걷자)」という表現がある。苦労した人に対して「これから先、いいことだけが起こりますように」という意味だそうだ。
どうかこの子が花道だけを歩いていけますように。