きれいな海はすきですか?(SDGs14.1 その1)
きれいな海はすきですか?
白い砂浜、透き通る青い海。きれいな海って、見ているだけで心が癒されたりしますね。このきれいな海の代名詞である「白い砂浜、透き通る青い海」と東京湾のような「茶色の砂浜、どす黒い茶色の海」どちらが本当にきれいなのでしょうか?今回はこの「きれいな海」について考えてみましょう。
砂浜は基本的には川から流れてくる土で作られています。上流にある土が川によって流され、細かい土の粒が海へと運ばれてきます。そして海へと運ばれてきた細かい粒は、打ち寄せる波などによって陸地に追い返されて砂浜としてたまっていきます。だから、海の近くにある砂浜の砂はさらさらな粒が小さな砂なんですね。川がいっぱいあるような本州や大きな土地の海岸には川から運ばれてくる土が砂浜を作っているので、茶色い砂浜が多くなるのです。
一方、沖縄や南の島では、島自体が小さいためあまり川がありません。そのため海岸に打ち寄せてくる砂は、陸地にある土ではなく、海にある細かい粒が運ばれて砂浜を作っています。その海にある細かい粒とは砕けた貝殻やサンゴの死骸です。ホタテ貝もサザエも貝には硬い皮、つまり貝殻が付いています。この貝殻はほとんどみな「炭酸カルシウム」からできています。このカルシウムというのが白色を生んでいます。貝殻の外の色は色々ありますが、割ってみるとその割口が白くなっているのを見たことがあると思います。まさに貝殻が炭酸カルシウムでできているからなのです。貝は死んでしまっても貝殻はそのまま腐らずに残ってしまいます。この貝殻が長年、潮の流れや波によってぶつかって砕けてしまって、細かい粒となって海岸にたまります。そのほかにサンゴの骨格も炭酸カルシウムでできています。サンゴをがりがり食べてしまう魚のふんにこの砕け散った炭酸カルシウムがあったりもします。また、サンゴは死んでしまうと白化現象と言って、白くなってしまいます。このサンゴの死骸が砕けてしまって細かな粒となることもあります。こう見ると海の中の細かな粒は基本的に白いのです。だから大きな川などがなく温かい地方では白い砂浜になることが多いのです。
海中にはたくさんの生物がいます。大きな魚は小さな魚を食べて、小さな魚はさらに小さなエビなどを食べて、そのエビたちはもっと小さなプランクトンという顕微鏡でしか見えない生物を食べています。いわゆる食物連鎖が海の世界でも広がっています。この小さなプランクトンの中でも植物性プランクトンがもっとも多く海にいます。植物性というからには光合成をします。つまり、二酸化炭素と光を吸収して生命エネルギーを作り出す仕組みです。そして、私たち人間が流す生活排水は植物性プランクトンにとっては栄養のかたまりで、餌となってしまいます。そのため1千万人以上が住む関東の生活排水が流れる東京湾では栄養が豊富な状況となり、植物性プランクトンがたくさん発生して光を吸収するから黒く見えるのです。一方南の島などにはもともと人口が少なく、生活排水を流す川も少ないので、植物性プランクトンが自然のバランスのまま育っており、1ミリリットル中、1000個~1万個プランクトンがいる東京湾に比べて、沖縄の海では10個くらいしかいないのです。(※1)東京湾は海はどす黒く見えて、沖縄の海は透き通って見えるのです。
「茶色の砂浜、どす黒い茶色の海」というのは言い換えれば、「陸上の豊富な栄養を含んだ砂浜で、植物性プランクトンが豊富で、生命あふれる海」とも言い換えられるのです。
それに引き換え、「白い砂浜、透き通った青い海」というのは「貝殻やサンゴの死骸で埋め尽くされた砂浜で、植物性プランクトンが少なく、生命にあふれてはいない海」ととらえてしまうかもしれません。でも、これが本来の自然の姿なのです。
こう見ると、見た目だけではきれいな海かどうかをきめるのはなかなか難しいものだと思います。ただ言えるのは「バランスの取れた」海はきれいなんだろうなというのはわかってきました。あまりにも少なくてもよくないし、多すぎてもよくない。ちょうどいいアンバイにしていくことが「きれいな海」になるのではないかと思います。でも、確実に「きれいではない海」というのはわかります。例えばごみが散らばっている海は間違いなくきれいではないでしょう。そこでSDGs14「海の豊かさを守ろう」の第1ターゲットとして取り上げたのがこの海のきれいさを守ろう、海を汚さないようにするためにはどのような行動していけばいいのかという内容になりました。SDGsの中ではこのように言われています。
「2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。」
簡単に言うと「人間が入ることで海のバランスを崩してしまうことは海の豊かさにはつながらないよね、だから海のバランスを崩すほど海を汚さないようにしましょうよ」というわけです。それでは次回は、海を汚すことでどんなことが今海で起きているのか、それがどのように人間にしっぺ返しをしてくるのか、見ていきましょう。
※1、海の色はなぜいろいろ asahi.com http://www.asahi.com/edu/nie/tamate/kiji/TKY200607180360.html