魚離れからの守り方(SDGs14.b その3~海の豊かさの守り方b-1)
魚離れはどんどん広がっています。でも「面倒くさい」とか「値段が高い」といった課題は結局、大量生産された肉と比べるからこそ生まれる評価なだけで、魚単体で見るとどうでしょう。魚は高たんぱく質、低カロリー。しかもDHAやEPA、うま味成分のグルタミン酸など魚は健康食材としても優秀な食材です。これだけの肩書きを見れば、魚が世界で人気の食材になってきているというのも納得です。しかも日本にとって魚は世界で生き残っていく最も可能性を秘めた資源でもあるのです。「面倒くさい」や「値段が高い」はリアルな問題かもしれませんが、メリットに比べればさほど大きな問題ではないように思えます。とはいえ止まらない魚離れ。どうすれば日本人は魚の価値に気づいてくれるのでしょうか。
魚離れが進む中、生まれたのが「魚の国のしあわせプロジェクト」。豊かな海を持つ日本で生活することの幸せを実感しようという国家プロジェクトで、漁業者や水産関係団体、流通業者、行政が手を取り合って魚文化を広めていこうという取り組みです。(※1)「お魚かたりべ」の任命や「海の宝!水産女子の元気プロジェクト」といったプロジェクトが立ち上がり、中でも新たな取り組みとして注目されたのが「ファストフィッシュ」(※2)です。食べるのも調理するのも面倒な魚をファーストフード(※3)のように魚も手軽で気軽においしく提供するためのアイデアを集めて発信していったのです。2012年から始まった「魚の国のしあわせプロジェクト」でしたが、2021年9月をもって10年の幕を閉じたのでした。大掛かりなプロジェクトではあったのですが、ボランティアベースの活動が中心で認知度も低く、思うように普及していかなかったのです。(※4)
そもそも寿司は江戸時代から続く日本由来のファーストフード。せっかちな江戸っこのために屋台でさっと握って立ち食いで済ませられるようにつくられた料理です。いまだに立ち食い寿司屋はありますし、問題は手軽かどうかではないのです。本当の原因は日本人にとって海が当たり前すぎたというところにあったのです。小さなころから海のありがたみを意識できるようにすることこそが最も重要だと気づき始めてきたのです。そこでテコ入れしたのが「学校教育」。2017年から改訂された小中学校の学習指導要領に海に関する教育を取り入れることとなり、海への関心を持つように働きかけるようになったのです。(※5)そして、2021年追い風が吹きます。それが海洋プラスチック問題などを取り上げたSDGs。海の豊かさを守ることの大切さが連日テレビでも取り上げられるようになり、日本でもようやく海に注目が集まるようになりました。地産地消の地魚を出す小料理屋や魚の捌き方教室、魚食のイベントといった魚と触れ合える場がどんどん増えています。そして2023年には日本で初めての魚を総合的に学ぶ専門学校「日本さかな専門学校」が開設されるほど日本でもようやく魚ブームの兆しがやってきたのです。今まで海という自然の力に頼りきっていた日本がようやく海の重要性に目覚め始めてきたのです。
今まさに日本の海が熱いのです。魚を捌けるのがかっこいい。魚をきれいに食べるのがスマート。魚の旬を知っているのが粋。そんな文化が今育とうとしています。旬の魚を食べて、おいしさをかみしめてみてください。そしてそういった些細な行動を声に出してみてください。その声が文化を育ててくれるのです。日本だから感じられる海の大切さを味わいましょう。
※1、魚を中心に「味わう」「感じる」「楽しむ」「暮らす・働く」「出会う」の5つのコンセプトを元に取り組んできた。
「魚の国のしあわせ」推進会議設置要綱
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/attach/pdf/shiawase_sskg-16.pdf
※2、2021年7月時点で3375商品が登録。
水産庁 Fast Fish(ファストフィッシュ)関係資料
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/fastfish/2018_ff_kobogaiyo.pdf
※3、1920年にアメリカで生まれたファーストフードはもともとガソリンスタンドに並列していたカフェから始まり、下処理を専用の製造工場で作り、店舗では仕上げの工程のみ。分担制による効率化と時間短縮を可能にした。DIG-IN 米国での誕生と発展。外食産業の夜明けとともに進み始めた、国内ファストフードの歴史
https://www.showcase-gig.com/dig-in/fastfood-2/
※4、第10回「魚の国のしあわせ」推進会議 資料1
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/attach/pdf/shiawase_sskg-21.pdf
※5、小学校における水産業や水産物に関する学習
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/h30_h/trend/1/t1_2_1_2.html
小中学校における海や船に関する教育(海事教育)について
https://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_tk1_000074.html
参考
海洋政策研究所 日本の魚食の将来 ~魚離れをめぐって~
https://www.spf.org/opri/newsletter/430_2.html
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