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魚離れ(SDGs14.b その2)

さて儲かる漁業にするためにはどうすればいいのでしょうか?儲かるとはつまり利益の合計を上げるということです。それを総利益と言います。総利益の計算式は「総利益=数量×1つ当たり利益」となります。つまり数量を上げるか単価を上げるか原価を下げるかすれば利益を上げられるということです。まずは数量について考えてみましょう。

儲かる漁業にするためには数量、つまり魚を買う人が増えればいいわけです。しかし日本では魚の人気が落ち込んでいると言われています。いわゆる『魚離れ』です。日本の食事は一汁三菜と言われます。つまり、主食のお米に味噌汁(一汁)とメインディッシュ(主菜)が1品とサイドメニュー(副菜)が2品という形です。このメインディッシュが昔は魚が多かったのです。昔と言っても2005年までは世界で最も魚を食べていて、世界平均の1人当たりの魚の年間消費量が20㎏の中、1988年の日本では72.5㎏も食べていたのです。たった数十年で世界平均程度にまで下がってきたのです。(※1)ではなぜ魚を食べる機会が減ってしまったのでしょうか?生臭さという回答もありますが、寿司人気を考えると味は問題ではないのです。味以外でよく出てくる原因は3つです。
・調理が面倒くさい
・食べるのが面倒くさい
・価格が高い
といったところです。(※2)

調理が面倒くさい

霜降りのような大トロ、ぷりぷりのマダイ、脂ののったブリ、肉厚のカツオそうそうたる面々が1つの船に乗り合わせて、まるで魚の宝船やぁ~といわんばかりの船盛を見るとついつい歓声を上げたくなるものです。でもそれを自宅でやるというとため息が出てしまうかもしれません。時短料理やファストフードなど忙しい現代社会いきる私たちにとって、料理は大きな負担です。肉であれば店で買ってきたかたまりを食べやすい大きさに切って焼けば終わりなのに魚は手間がかかりすぎます。例えば、アジの刺身が食べたかったら魚を3枚におろして、皮をはいで、腹の骨や中骨を毛抜きで抜いて、ようやくお店で出てくるような刺身として食べられます。でもこの作業、牛や豚や鳥も本当は同じことをやっているのです。ただその作業を屠畜場の業者の方がやるか自前でやるかの違いです。もちろん魚の世界でも同じような作業をやる業者がいます。そのような業者のことを「水産加工会社」と言います。とはいえ、相手は魚。牛や豚に比べれば小さい分、骨も細かいのです。実際作業効率的に水産加工から家畜の加工業者に代わる人もいるほどです。

食べるのがめんどくさい

下道に漂う脂ののったサンマの焼けるにおい、祭りに漂うイカ焼きの香ばしいにおい、海水浴に漂うツブやハマグリの磯の香り、そんなにおいをかぐとさっき朝飯を食べたのにまたおなかが減ってしまうものです。でもいざ食べてみるとサンマやニシンのあばら骨が歯の隙間に刺さったり、シャケのうろこがのどにへばりついたりして違和感がしばらく残ってしまうものです。特に子供にとっては魚離れしてしまう最大の原因がまさにこの食べにくさなのです。肉の中でも一番小さな鶏肉でも間違って骨を飲み込んでしまうほど小さな骨はないものです。それに比べ魚は小さくその分骨も小さく細いので刺さりやすいは取りにくいわといった感じで毛嫌いされているのです。

価格が高い

春のサワラ(鰆)、夏のアジ(鯵※3)、秋のサンマ(秋刀魚)、冬のタラ(鱈)庶民の味方と称される魚たち。サンマも旬になれば1尾120gだとしても100円かどうかは気になるところです。でもそれ以上に安いのが家畜の肉です。鶏肉の胸なんて言えば100gで70円切ってしまいます。それもそのはずニワトリに至っては発育が早く人の手で大量生産されて、機械的に食用の形になります。しかも本来120日で成長するところを40日で育つような品種にして食用に並びます。(※4)一方魚は自然の中でどこにいるのかわからないなかで勘と経験をたよりに獲ってきます。豊漁の時もあれば不漁の時もあります。まさに開けてみないとわからないわけです。計画的に季節に関係なく大量生産ができるニワトリと自然相手の魚とを比べれば、ニワトリの方が低価格になってしまうのも納得です。

たしか肉よりも魚の方が面倒なことが多いかもしれません。とはいえ処理としては同じような作業を行っています。単にその処理を他の人がするか自分でするかの違いですし、価格についても大量生産で作るのか自然の恵みを頂くのかの違いです。この些細な差が魚離れを引き起こしているのも事実です。

※1、平成30年度 水産白書 世界の水産物消費
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/h30_h/trend/1/t1_3_3_2.html
※2、子どもを通じて見える日本の食卓~子どもをはぐくむ魚食の未来~
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/h20/pdf/h_1_2_1.pdf
※3、雑学ネタ帳 「鯵」(あじ)の名前の由来
おいしくて参ってしまう魚なので味という意味がある。
https://zatsuneta.com/archives/001721.html
※4、鶏は産まれてからどのくらいで食用になるの?
https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/chikusan/chickenq3.html


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