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第12話 『また来てねぇ』

帰国2日前
僕は最終目的地カルカッタに着きました。

当時のカルカッタでは
カースト制度が色濃くのこっており
こっちは観光地。
あっちはスラム街。
と建物も人の服装もたった1本の道を
挟んであからさまに違いがわかる感じでした。

今までのインドの旅路では
「バクシーシ」
奴隷身分の人にお金をせがまれてきました
よく本には
『完全に無視してください』
と書いていあったりします

確かに一度やってしまうと
俺も、俺も…
とあたかも人気俳優にでもなったかと思うほど、
すごい人だかりになってしまいます。

とはいえ彼らは彼らで
「私は今世は奴隷の身分に生まれたので、
お金を乞いているのです」
と自分の生い立ちを受け入れているのです。

そして、貴族階級に生まれた人は
「僕は今世では貴族に生まれたので、
お金をもっています。だから僕の金を少しだけど分けているのです。」
と自分の立場を理解しているのです。

このように奴隷は奴隷としてうまれたプライド
貴族は貴族として生まれたプライド
が成立しているように感じました。

一日目は市内を回り、ホテルに戻ると仲良くなったインド人に
「このカルカッタには
かの愛の伝導士マザーテレサがいるんだよ」
と自慢されたので、
僕も、日本を代表する『愛の伝導士』

どうせなら、
偉大なる愛、『マザーテレサ』に会って、本物の愛をご教授いただこうと
彼女のところへいってみることにしました。

翌日、彼女がいるとされる教会に行ってみようとスラム街へ向かいました。
その道すがら、竹のささくれたようなもので
ご主人様らしき人に叩かれている少女や
おそらく自分で足をつぶして、両手で歩きながら
「バクシーシ」とよってくる少年などがスラム街にはいっぱいいました。

そんな彼らの間を通り抜けマザーテレサのいる修道院を
探し、僕はスラム街を彷徨いました。
1日中歩いた結果…
マザーテレサには会えませんでした。

あきらめかけてホテルへもどることにした僕の前に
「王冠いりませんかぁ」
と、敷物にずらりと瓶の王冠を並べた
少女に声をかけられました。


僕は
「お金持ってないんだ」
と言い、にこっと通りすぎました。

その子は朝方、竹で叩かれていたあの少女でした。
年の頃は小学校に上がるかどうかの子で
顔立ちがきれいな子でした。

(たぶん、奴隷身分に生まれなければ
ミスインドとかになるのかな?)

そんなことを思いながら通り過ぎました。

(いや~でもほんときれいな子だなぁ~)

と何気なく、彼女の方へ振り向いてみると
彼女は僕に気付き、

「また来てねぇ」

と、大きく手を振って
にこぉ~っと笑ってくれたです。

その笑顔をみて
僕は心臓を撃ち抜かれたみたいです。

四半世紀以上たった今でも忘れられない
あの笑顔

あんな素敵な笑顔は初めてでした

つづき…

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