富栄養化からの守り方(SDGs14.1その6~海の豊かさの守り方1-2)
1人あたり1日に使う水の量は250L。これが日本で1億2000万人使っているということであれば、300億Lの栄養豊富な生活排水が1日で生まれて、これが365日絶え間なく排出されていることになります。このまま海に流れてしまったらプランクトンが増えるどころかプランクトンだらけになってしまいます。それを食い止めているのが下水処理施設というわけです。
下水処理は5つの段階できれいにしています。まず第1段階は「沈砂池」と言います。トイレットペーパーや食べ物のカスなど水に溶けなかったゴミを取り除きます。そして第2段階の「沈殿池(最初沈殿池、第1沈殿池)」へと行きます。ここでは余分な汚れが分離できるように水をとどめておきます。分離したきれいな水の上澄みだけをとって次の第3段階「反応槽」に引き渡します。この「反応槽」こそが水を実際にきれいにする唯一の工程です。どんな反応かというと、「微生物に水の中の汚れ食べさせる」だけです。原始的ですがこれが一番効果があるようです。この微生物は、宇宙でも生きていけると言われているクマムシを筆頭に、ツリガネムシ、ボルティセラなどの様々な微生物がいます。このような微生物のかたまりを「活性汚泥」と言います。そして水の中の汚れが微生物によって食べられきれいな水が残った状況で第4段階「沈殿池(最終沈殿池、第2沈殿池)」へ運ばれます。ここでは先ほどの汚れを腹いっぱいに食べた微生物たちが沈んでいくのを待つ部屋になります。ここではほとんど匂いがしないほどきれいな水になっています。そしてまた上澄みだけを取って最終段階の「消毒設備」のところへ行きます。この消毒設備では塩素などを使って最終的に水を殺菌します。これは室内プールとかに行くと匂ってくるあれですね。こうやって水はきれいになります。
「公益社団法人 日本下水道協会 下水処理の仕組み」より
https://www.jswa.jp/sewage/operation-public/
簡単に言えば、沈めたり微生物に食べさせたりして水をきれいにしているのです。原始的ではあるのですが、これが今のところの最先端技術です。これが1日300億Lの水をきれいにすることを可能にしているのです。これ以上の効果的な生活排水からの守り方は今のところこれといったものが見つかっていません。
でもこの微生物で解決する方法もスペースや処理能力に限界があります。私たちが水を使えば使うほど生活排水は増えていきます。そしてプランクトンのえさになりやすい油やアルコールなどBOD(生物化学的酸素要求量)の高いものを出せば出すほど海を汚してしまうことになるのです。
私たちにできることは、人間が使う水を減らすこと、そして余分な栄養となるような汚れを無駄に洗い流さないことです。簡単に言うならば、「水は大切に使う」「食べ残しをしない」ということが一番即効性があるのかもしれません。
今まで見てきた通り、結局海の汚れとは「海のバランスを崩してしまう人間のエゴ」なのかもしれません。人間が楽をしようとしたり、ぜいたくに無駄使いをしたり、もとはと言えば人間が何か携わったもの、一度は人間の目の前にあったものが海に流れてしまって、海のバランスを崩している。これが海の汚れなのです。海に出てしまったゴミや汚れを回収するのはほとんど不可能かもしれません。でも、海に流れる前に止めることはできるはずです。
海を汚さないようにするためには、「ゴミはゴミ箱に捨てる」「水は大切に使う」「食べ残しをしない」といった当たり前なことをするだけで防げるようなことばかりです。ちょっと面倒かもしれませんが、これで1匹の海の生き物の命を救ってるかと思えば、ゴミ箱まで足を運んだり、食べ物を残さず食べたり、そんなに苦ではないじゃないですか?まずはできるところからやってみましょう。