輸入魚の出どころ(SDGs14.4その8)
国内の密漁についての取り締まりは厳しくなってきていますが、それだけでは対処できない、たちの悪いの問題があります。輸入品です。輸入品の水産物はどんどんその割合を増やし、その額、2019年には421万トン金額にして1兆7404億円にもなります。これは日本全体の消費量が724万トンだと考えると58.1%も輸入品に頼っているのです。(※1)国際貿易として日本に正しいルートで入ってきた魚ではあるものの、どのようにとられた魚かは追いかけられなかったりします。そんな輸入品の魚のうち1/3が身元不明な魚になっています。金額にすると2700億円。その分の利益がIUU漁業をやっている悪徳漁師の手元にも届き、悪事を助長させていることにもなっているし、日本の漁業も苦しめてしまっているのです。
図:Anti IUU FORUM JAPAN 4つのステップでわかりやすく解説!!「IUU漁業」について知っていますか?
https://iuuwatch.jp/wp/wp-content/uploads/2020/09/IUU_factbook_web.pdf
海にも国境がありほかの国が入ってきて魚を獲ってはいけない範囲を排他的経済水域(通称、EEZ)といいます。3700種類もの様々な魚がいて、世界で最も豊かな漁場とも言える日本。そんな魚の宝庫の日本の魚を獲りたいとして、外国の漁船が入ってきたりします。中には日本の船ですよと偽装してやってくる船もいるほどです。そんなの捕まえればいいじゃないかという話なのですが、海ではそうはいきません。なにせ海は広すぎます。日本の海は囲は日本の国土の6倍にもなり、すべてに目が行き届くことはできません。そして海には国境となる策も線さえも引けません。ぎりぎりで漁をして遠くから取り締まりの船が来たと思ったら逃げればいいのです。最悪捕まったとしても、獲った魚をそのまま海に捨ててしまえば「あ、ここ日本の領土なんですね、知らなかったです。たまたま、近くを通っただけなので勘弁してください。」と言い逃れることもできるのです。
さらに問題は船の国籍を変えることができるということです。国によって船にかかる税金や法律が違っていたり、人件費もバラバラです。特に小さな国では外国の会社が自分の国に会社を作ってくれれば、ペーパー会社だろうが何だろうがお金を落としてくれるので問題ないわけで、国際法でも合法とされています。それを利用して悪知恵を働かせるとこんなこともできます。A国の人がある魚を獲りたいとします。その魚はA国ではこれ以上獲ってはいけないことになっているとします。するとその魚を好きなだけとってもいいというB国で船を作って、その獲ってはいけない魚をA国へ流します。このような船の持ち主と船自体の国籍が違う船を便宜置籍船と言います(※2)。問題は同じ船の持ち主が規制がかかっている魚を獲りまくっていて、それが国をまたいで行っているので、どこのどの船がどうやってとったのかわからなくなってしまい、結果、身元不明の魚が世の中に出回ってしまうということです。
※1、令和2年度 水産白書 我が国の水産物の需給・消費をめぐる動き
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/R2/attach/pdf/210604-11.pdf
※2、海洋政策研究所 違法な漁業活動の解決に向けた多国間協力と課題
https://www.spf.org/opri/newsletter/501_3.html?latest=1