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井上円了の妖怪分類

 今日は知っている方々もいらっしゃるかと思うが、先日はじめて知っておもしろかったことに関して記事にしていきたい。

 哲学館(現在の東洋大学)の創設者・妖怪研究の先駆者として知られている井上円了は、妖怪や怪異現象は迷信として克服すべきものとして認識していたことで知られている。先日、『井上円了と柳田国男の妖怪学』三浦節夫という本を読む中で、井上円了の妖怪の区分に関して興味深い記述を見つけたので以下のように表にしてみよう。

20204030_井上円了の妖怪分類

 上の表を少し補足してみよう。「偽怪」とは、人為的につくられる妖怪で、個人的と社会的の二種類がある。「誤怪」とは、偶然に起こったできごとが誤って妖怪と認められたもので、客観的妖怪と主観的妖怪の二種類がある。「仮怪」は自然に起こるものであり、物に現れる「物怪(物理的妖怪)」と心に現れる「心怪(心理的妖怪)」に区別される。これらは科学的に説明できる。最後の「真怪」は「いかに人知進歩すとも到底知るべからざるものにして、これ超理的妖怪なり」として、実在する真正の妖怪とした。

 上の分類に従うと、井上円了はすべての妖怪や怪異現象を迷信であるとみなしていたわけではなく、「真の妖怪」はいると考えていたようだ。『井上円了と柳田国男の妖怪学』三浦節夫によると、井上はすべての妖怪や怪異現象を迷信であると切り捨てたのではなく、その分析を加えて由来を明らかにする人材の育成を目指していたようだ。

 井上は妖怪や怪異現象を分類していたが、選別は柳田国男も行っていた。柳田の『幽冥談』という文章や『遠野物語』の序文に書かれているように、柳田は、「面白く読ませるために書いたもの」が増えたことを指摘して、「実際の事をそのままに書いたもの」を重視して取捨すべきであると『幽冥談』の中で述べている。この文章の中で、柳田は井上を批判しているが、「真の妖怪や怪談」を選別して、それらを研究の素材としようとしたという共通点があったと言えるだろう。

 『幽冥談』によると、柳田は妖怪や怪談から日本の国民の歴史を読み取ろうとしていた。井上は選別した「真怪」の先に何を読み取ろうとしていたのだろうか。

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Theopotamos (Kamikawa)
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