銀河鉄道と私の町。
私の住む町には銀河鉄道があった。
子供の頃、辿っていくと、点々と駅がそこにはあって、
それを辿る道が山の中のウォーキングコースになっていた。
駅には 宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』に出てくる駅名がつけられていて。
そこは
銀河ステーションから天の川ステーションをつないでいた道だった。
云十年ぶりに巡ったその駅は、
駅名なんかもう読めないくらいに、ただの板みたくなっていて、
列車の車体には落書き。
色々なものが朽ちて、錆びて、変わり果てていて。
あの頃、わくわくして巡っていた銀河鉄道の道ではなくなっていた。
銀河ステーションの車体の中に
段ボールに入った捨て猫を見つけて、
みんなでどうしようか必死で考えたこともあったっけ。
これが時の流れなんだなぁ。
すっかり大人になって、
みんなが出て行ったこの町の
朽ち果てた姿がそこに残っていた。
寂しいような、
でもどことなく、
そんなことには とっくに気が付いていたような。
時の流れが戻ることはなくても、
意外としっかりその頃の
まだ夢と希望が詰まっていた
あの頃の町の記憶は
私の中に残っているのだなぁと
そんなことを思ったのでした。