断片的な記憶

君の父親が自殺したという話は君の周りの人間ならみんな知っている話なんだけれど、君はたった一度だけ、私の首を絞めながら見たことのない哀しい顔をして「本当は俺が殺した」と言った。

それからずっと君の側にいたけれど、君が人に話す父親の自殺の話は、部屋で首を括っていたとか、最寄りの電車に飛び込んだとか、なんだか一貫性がなくて、よく分からない。

ただ、ひとつの事実として君の父親は死んでいる。

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