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フロム アラカワ トゥー ウチュウ ノ カナタ

「今日から宇宙仲間ね!」

もう夕日が落ちかけている荒川の河川敷で撮影を終えた時、彼女たちはそう言った。
僕にとっては宇宙という僕たちのはるか空高くに存在しているそれを意識したのも初めてだったし、こうやって宣言されて何かの「仲間」に入れてもらったのも初めての経験だったかもしれない。

二人はダンスをやっていた。
片方はバレエで、もう片方はコンテンポラリーダンスだ。

共通の知人を介して知り合い、気づいた時には彼女たちの踊りを僕が写真に収めることになっていた。

場所は荒川の河川敷。
平日だったので、他に目に入る人といえばキャップを被り自転車に乗っているおじさんか、犬の散歩に来ている人たちくらいだった。

高架下にポイントを決めて、とりあえず自由に踊ってもらうことになった。
特に音楽はかけずに本当に自由に、だ。
二人のダンスは、踊りというよりかおしゃべりのような、ある種のコミュニケーションのようなものを感じた。


バラバラにくるくると回っているかと思えば、どちらかが片方の足を持って体を支えたり、二人合わせて手や足の動きを強調したり。

二人の人間が踊るところを見ているというよりかは、一定の感覚でくっついたり離れたりする電子の動きを見ているようだった。

特に決まり事はないけど、二人のコンビネーションがきちんと成立する。
夕暮れの荒川をバックに、僕は彼女たちの姿を追い続けた。

心地よい時間だった。
スポーツの枠でしか今まで体を動かしたことのなかった自分には、踊りみたいなものにはあまり馴染みがなかったけど、ファインダー越し彼らを追っていくうちに、自分もその波のようなものの一部になっていくような気がした。
僕は彼らの写真を撮る人、からいつの間にか彼らと一緒に踊っていたのだ。

そしてちょっぴり照れくさいけれど、
ちゃんと仲間に入れてもらって嬉しかったのである。

”二度と戻らない過去。 前へ進むだけの時間。
そこに、確かに、存在していた匂い。 
物質として、漂い続ける。 
息を吸う、ここに、在る。 
旅のつづきで待ち合わせをして、宇宙の彼方できみとおどる。 
何ものにも変えられない記憶と共に、漂い続ける。” 

By K

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The Naked Writer
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